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第21話 楽園の蝶と悲しみの泉

 ↓辛さの渦中にいる方に届け。↓


楽園の蝶と悲しみの泉

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 翌朝、旅館の朝食の席で、私は昨夜の“不動さん”との不思議な出来事を話した。
 だって電流ながれたんでしょう、そこまで行けばそれはもうツインレイ確定でしょうと、みんなは盛り上がって断定する。
「ひみちゃんそれ、気が急いちゃって他の人飛ばしてでも早く抱き合いたかったんでしょう。」

 そうなのかなぁと考える。
納得がいかないとか違う気がするとか、そういうことではないのだけどいまいち確信がもてない。…なんというか、それなりに得てきた内面的スピリチュアルの経験則に対して、この人はまるで無反応すぎるのだ。


 食堂を出て売店でお土産を買い、チェックアウトの支度をする。まおちゃん運転の後部座席に再び乗り込むと、車は駐車場を出てからいきなり始まる山道を軽快に走り出す。
 こんな場所まで、この先また旅行に来れる機会もそうはないだろう。見えなくなってしまう少し手前で、私は旅館に向かって「バイバーイ」と大きく手を振り、Tさんに盛大に笑われた。


 今日の移動は少しばかり難航した。玉置神社へは天川村方面からほとんどまっすぐといっても過言ではないのに、レンタカーのナビも、助手席のSさんのナビアプリも途中で二度ほど脇道へと誘う。ちょっとした枝がゴロゴロ散乱した細道や、行ってから行き止まりだと気づいた登り道に入り込んでしまい、慎重にバックで脱出する。「呼ばれた人しか辿り着けない」は本当かもしれない。

 だけど思わぬいいこともあった。途中で素晴らしい滝に出会い、満場一致で寄り道が決定したのだ。
 改めて車を降りると、その迫力に再びの歓声があがる。すごく高さがあるわけではないけど、その割に水量もあって自然の気が満ちている。たくさんの蝶々たちが優雅に飛び回っていて、ちょっとした楽園にいる気分になってくる。

「ここはあれだね、女性の子宮とつながるね。」

 まおちゃんはそう言うと、みんなに目を閉じるように促した。滝の浄化エネルギーを私たちの子宮に繋いで流してくれるという。
 しばし黙して受け取ると、私の子宮の奥底のほうに重たい塊のような何かを感じて、モヤッと後ろ向きな想いがよぎる。

 やっぱり、私の子宮はなんだか流れが悪いんだよなぁ。


 自覚は、とてもある。
もう二十年以上も前の話だが、学生の頃、オーラとチャクラを解説した海外からの翻訳本に出会った。

 チャクラというのは端的に言うと、人体の主要な部分から気を出し入れする目には見えない渦のような器官で、基底の第一チャクラ、ルートチャクラから、頭頂の第七チャクラ、クラウンチャクラまでの七つがメインである。
その他にも大小さまざま、身体中はもちろん空中に及ぶオーラフィールドにまで点在する、健全な精神と肉体に密接に関係してくるものなのだ。

 そしてその本を読んだ時に好奇心からひとつひとつ、下から上まで七つのチャクラそれぞれに手をかざして意識を向けて、どう感じるかとセルフチェックしてみたのだ。
 その時体の六つのチャクラはぼんやり柔らかい感覚があったが、下腹部にある第二チャクラ、つまりセイクラルチャクラだけが、ウンともスンとも言わなかった。それからも度々子宮に働きかけるが、頑なに閉ざしたこの扉は、決して私に心を開こうとはしなかった。


 とはいえその潤いの滝は、心身に充分すぎるほどの活力を与えてくれた。一度車を降りて伸びをしたこともいい気分転換となった。昨日の天ノ川に続いてもう一度、自己の女性性を思い出した四人は、そのたおやかな衣を纏い、山の頂の男性神に逢いにいく。
 約二時間のドライブの終盤、ベルベットのような美しい苔で覆われた擁壁がくねくねとつづら折りになって、その山頂へと私たちをいざなう。

 すでにまおちゃんは、どっしりと重厚な声を持つ玉木神社の主から歓迎を受けているのを感じていると教えてくれた。
 そして私は再び、濃厚な山の密度にやられてまたも頭がぼんやりとしてきた。



written by ひみ


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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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チャクラはそれぞれ対応する色があるんだけど、
第一チャクラの赤から第七チャクラの紫まで、虹色のグラデーションになっているの。
巣鴨のおばあちゃんたちが真っ赤なおパンツを購入するのも、とっても理にかなっているんです。

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