第111話 白を纏って黒へと潜る
シャボン玉色の淡い光の太陽の元、私とあの人とが踊っている。
今とは姿の違うスサナル先生が、こちらも姿の違う私を見つけると、“彼女”はくるくると回っている間に外見を少し変えた。
すると今度は“彼”も外見を少し変え、二人は交互にちょっとずつその姿を変えていくと、やがて真っ白い服を着た私とあの人になって手を取って踊った。
「最後には、参加者全員がウェディングドレスになっていました」と報告のあった、夏至の遠隔ワークに参加した朝の夢だった。
夢だけど、夢のような気分だった。虹色の太陽は直視しても眩しくなく、クリーム色のような、水色のような空の中に浮かんでいた。どれほど姿形が変わっても彼からの愛情は変わらず、私を見つけた時の喜びがこちらにまで伝わってきていた。
その日の始まりは、そんな嬉しい気分だったのに……。
……
光が当たると闇が出てくる。
当たった光に比例して、モゾモゾと闇の感情が浮上してきた。
お腹の痛みを感じながらも集中して内観して、ぐちゃぐちゃに泣きながら次々と湧いてくる闇を昇華できたり飲まれたりしている中で、ほんの一瞬“恐ろしい感覚”がよぎった。
そんなことはあってはならない、怖いから気づきたくない。
あっては欲しくないけど、多分これは、“気のせい”なんかではない。
『スサナル先生は私を恨んでいる』
何故だか理由はわからないけどきっと間違いではないと思う。私はあの人に恨まれている。理屈じゃない。だけど確実に恨まれている……。
そして今度はその翌日、まるでそのことへの対抗心のように、私の中に、彼への『嫌い』が噴き出してきた。銀行やらスーパーやらへと一回り歩いている間中、「ふんだ、嫌いよ。知らないから。」と、どういう訳だか私の内側がプリプリしていて止まらない。
嫌いよ嫌い。あなたなんか嫌い。こうなったら久しぶりに、顔写真でも見てやろうじゃないの!
外から帰宅した勢いでそのまま階段を登ると、あきらの部屋の棚の奥から卒業アルバムを引っ張り出す。
というのも、三年間で手に入れたスサナル先生の行事写真は、その全てにおいてことごとく、ヤマタ先生もしくはあきらのクラスメイトだったRが写り込んでいたため、親子でゲンナリしながら綺麗さっぱり処分済みだったのだ。
執着が発生するためなのか、私のハイヤーセルフはスサナル先生の写真を手元に残しておくことを、おそらく良しとしなかったのだろう。
そうして数か月振りに一目、唯一残されたアルバムの教職員一覧にその顔を見るや、
「大嫌い!!」
気づいた時には叫んでいた。あきらの机をバンバン叩いた。だけど不思議と奥の方で、「私はなんでこんなに怒っているのか」と、冷静な意識も感じられた。
そっちの部分にフォーカスするように無理矢理自分を奮い立たせると、頑張ってその「大嫌い」を辿っていく。すると。
淋しいのに埋めてくれない。待ってるのに来てくれない。私があなたを愛してるのに、私と同じように愛してくれない。だからあなたなんて大嫌い……。
そうだよね。だから私の中に、スサナル先生を嫌いと言っている人格があるんだ。
だけどまた、こんな風にも思った。
あの先生にとっては私こそが、“安定した世界の破壊者”。あの人が築いてきた家庭だったり教室だったり……そのささやかな安寧の地を、私こそが、横暴にもいきなり壊しにやってきた張本人なのだ。
せっかく人生を何年もかけて、彼が積み上げてきた安息の地。そこにいきなりズケズケと、割り込んできたのが私なのだ。
だからこそ彼の中で警鐘が鳴って、私を恨んで遠ざけた。
そこに気づくとしんどくなって申し訳なさでいっぱいになると、その感情につられるように、今度は旦那への後悔もたくさん出てきた。声なき声はうねりとなって、「旦那のことを見殺しにした」と囁いてくる。「そんなお前がツインレイなんかに愛される資格がある訳ない。」と言っては、打ちのめすように追い込んでくる。
気づきたくないものの下には、さらに別の気づきたくないものが何層にもなっている。『絡んでいる』と言い換えてもいい。
いつしか疲弊しきった私は飲まれたようにへたり込むと、弱々しく懺悔しながらアルバムを棚に戻して無意識的に呟いていた。
「大嫌い。私なんか、大嫌い。」
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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写真の処分はねー……。当たり前だけど、私もストイックなら私のハイヤーセルフもストイックだというね。
だから写真のみならず、私は全部の人間関係断ち切らされて進んできたタイプなんだよね。
(ツイン女子あるある。だから隣で見ていて、けーこの特異性がおもしろい。)
でね、これまた当たり前だけど、人はいきなりは、ハイヤーマインドなんかにならないよ。これもまた、螺旋を一周二周、ちょっとずつ統合していくの。
だから小説には書いてなくても、ほんの少しハイヤーセルフと統合すればその分彼とも統合していて、69話で起こったほどではなくても(『ふたご星の統合』)、彼の名前のエネルギーが飛び込んできたりとか、ちょいちょいミニ統合ってあったんだよ。
闇を出した分だけ光が入って、光が当たった分だけ闇が出るの。そうやって、完全浄化に近くなった頃には信じられないほど自分が軽いから!
渦中にいるとつらいけど、必ず終わりは来るからね。
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←今までのお話はこちら
→第112話 「性の大きさは命の大きさ」
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