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第190話 富士と大山


 宇宙子さんが、シリウス世でのけーこの姉だったとわかったことにより、ようやく彼女たち二人も今世での再会を許された。
 アクセス制限が解除されたその晩、画面を挟んで話し込んだかつての姉と妹は、お互いおよそ初対面とは思えないほどの砕けようだったらしい。

 “大人”二人の内緒話を想像し、リトがニヤニヤ笑っていた。その日の昼間、ひと足早くセッションを受けた私は敢えて宇宙子さんの正体を伝えずに、「いってらっしゃい、楽しんで。」とだけけーこにLINEを送っていた。


 後日やり取りした宇宙子さんのメッセージにはこんな感想が書かれていた。

『けーこさんの物質世界へのエネルギーがあまりに強くて笑 ひみさんと真逆で爆笑でした。
 けーこさんは、爆裂エネルギーの方なので笑 ひみさんは時々大変かと思いますが、ひみさんの純粋なエネルギーと呼応して、うまくバランスを保っているのだと思いました。
 二人は本当、勾玉ですねー。』

 そんな再会はけーこにとっても楽しかったらしく、私の隣で助手席に収まっているその間、「宇宙子さんのせいでマジ寝不足。ずっと文句言ってやる。」とそんなことを言うわりには、どんな会話の内容だったかを事細かに喋り続け、なんだかんだ終始嬉しそうだった。
 慣れ親しんだ東名高速、空は青く晴れていて、富士が大きく見えていた。


 左折のウィンカーをチカチカ出し、伊勢原大山インターを降りる。去年、目的もなくドライブの途中で招かれた比比多(ひびた)神社を訪れると、前にけーこが拾っていたように、“再びここに来ることは織り込み済み”だったのだろうと思った。

 手を合わせると、おくるみに包まった(くるまった)女の子の赤ちゃんを授かった。

「あなたたちが育ててください。」

 そう言われつつ、けーこにではなく私に差し出された理由はお察しの通り。誕生を司るコノハナサクヤヒメノミコトから受け取った新しい命。満開の桜のビジョンと共に、腕(かいな)の中でスヤスヤと眠るmeetooという意識体。小さな寝息が漏れていた。


 再びエンジンをかけると、山の麓のパーキングへと移動した。一年前の私たちにはまだお詣りが許されていなかった、大山阿夫利(あふり)神社下社(しもしゃ)を目的に、そこまで出ているケーブルカーの往復切符を買い求める。
 “あめふり”の音の響きそのものであるこの神社は、オオヤマヅミと娘たち、それから雨と縁の深い龍神が坐す場所。本当は上まで行きたい気分だけど、本社へは山頂までの登山となるため、いつかちゃんと装備をして、スサナル先生に連れてきてもらおうとそんなことを考えた。

 拝殿へのご挨拶を済ませると、「大山名水入口」と書いてある建物内の洞窟へと進んでいく。お水取りをしてから奥の扉の前で手を合わせると、こちらにも御祭神と同じくオオヤマヅミがいらっしゃる。

 はっとする若竹色……白を含んだターコイズグリーンの、美しい反物をいただいた。

「この子にですか?」

 さっきの比比多神社でお預かりした幼き姫のためのものかと思って聞いたところ、そうではなくて、過去世の私に着せてほしいとのことだった。般若となった女の子への、神々からの贈り物。ターコイズは青と共に、私が子供の頃から密かに大事にしている色。嬉しくなってお礼を述べる。

 それから彼は私の言葉に、「おお、そうだこの子にも。」と手を打って、meetoo意識が成長するのに困らない、大量の身の回りの品々を持たせてくれた。
 本当は主に、乳幼児用の育児グッズだと思うのだけど、まるで嫁入り道具のようなとんでもない量だった。

……

 下山(げざん)前、けーこが空の写真を連写している。数年前から彼女と一緒にいる、富士の龍が飛んでいるのだと教えてくれた。
 そして今回の“大山詣り”、先程の洞窟を抜けた先の浅間社にて、彼女が新たなガイドとしてコノハナサクヤヒメをお迎えしていた。 
 富士の巨大な白龍は、そのことに対する寿ぎ(ことほぎ)のように見事な姿を現してくれた。

 師岡熊野神社の時は、冗談混じりに「次はかわいいお姫様のガイドがいい。」と言っていた彼女だけど、いざ実際にお出ましになると、高純度高次元の美しい姫のエネルギーに、あのけーこが“らしくなく”、飲まれてしまうほど萎縮していた。
 彼女たちが緩やかに統合していくのは、それから少し経ってから。

 あめふり神社の名の如く、浄化の雨を連れて帰る。その日は夕方から夜にかけて、関東一円を雨雲が通り過ぎていった。

……

 その翌朝、起きがけに夢の中で小説の続きを書いていた。たった一行、黙示録のように言葉がそこに浮かんでいた。

『大山から二週間後、私たちは火傷の中にいた……。』




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

ほんとにね笑
二人共“あの”おじいちゃんの娘だっていうのに、片方は父を助けに息子を置いて飛び出して、片方は地元を守って甥っ子の面倒見るというね。
この姉妹も真逆なようで、なのにやっぱりよく似てるんです。

そんな宇宙子さんは、けーこのことをしょっちゅう“人間戦車”と呼んでました。

以前けーこが、「私、地球でやること全部終わったら、その時は地球のこと両手でパーンて破壊すると思う」と言い、それに対して宇宙子さんも、
「けーこさんはそうだよねー。」と、何ひとつ動じることなく聞いていました。
けど!けーこの「金と男ください」のくだりには、最初「ここまでアセンションしてる人なのに!?」ってびっくりしてました笑

そして振り返って考えると、そもそも最初から私がトカゲのことを敵視せず、受容できてしまっていたら出会わなかった宇宙子さんとの今世の縁。

過去の失敗も、間違いも、本当は失敗でもなければ間違いでもなかったと、改めて思いました。
極まで行って折り返す時には、全部を回収してまわるように魂って出来ています。
本当この世は神の呼吸だ…。

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←今までのお話はこちら

→第191話 内より発光する『美』の美学


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