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Mediiが届けるEコンサルの有用性vol.2~事例集より~

地域医療における専門医不足問題の解決を目指し、専門医の知見を最大化することで医療へ貢献する株式会社Mediiが提供する「E-コンサル」について実際の症例をご紹介させていただいているこの企画!

前回の事例はこちらから▲

今回は繰り返す感染症に対する薬剤調整についての実例をご紹介いたします。

【リウマチ膠原病内科】
繰り返す感染症に対する薬剤調整について

①質問主治医が相談したい症例などをE-コンサルへ入力

60 代 女性 全身性エリテマトーデス
[病歴]                                        SLEに対し、PSL 4mg/日、MMF(ミコフェノール酸モフェチル)内服中。網膜症ありHCQ(ヒドロキシクロロキン)は導入を見送られている。X年の春より、感染源が不明の敗血症性ショックで入退院を繰り返している。血液培養、尿培養は毎回陰性だが、メロぺネム投与とノルアドレナリン投与で2−3日ですぐに改善し、1週間弱の入院治療で退院する、ということを3回(3月、7月、9月)繰り返している。造影CTなどの画像検査による精査を行ったが、感染源となる病変は見られなかった。悪性腫瘍の可能性を考え、現在内視鏡検査を検討中。

②回答専門医に相談事項が送信され、自動的に専門医を選定します
③最初に回答した専門医が質問主治医の担当となり回答します。


主治医(相談者)
“今後の細菌感染再発予防のために、ST合剤導入はどうか、という意見があり検討しております。PSL 4mg/日であり、PCP予防は必須ではなく現在導入されていないのですが、他の細菌感染の予防効果も期待できるのでは?という考えから出た意見です。

PCP以外の感染の予防効果を期待してST合剤を導入することなど、ありますでしょうか?

耐性菌の懸念もあり、調べた範囲内では推奨する文献などは見つけられていないのですが、実臨床ではどうか、と考え質問させていただきます。”


Medii登録専門医 
ST合剤の適応については、①PSL 1mg/kg使用時、②PSL 0.5-0.8mg/kg以上+免疫抑制薬併用時、③リンパ球500以下[1]、④IgG 700mg/dL以下のいずれかを満たすときを目安としています(これについてはいくつか論文報告があり、多少の変動はありますが、おおむねこのような内容です)。ST合剤は効果と副作用を考慮して0.5錠/連日内服としています。

 一般細菌に対する効果は、エビデンスに乏しく、PCP予防をメインとした付加的な効果に期待しての使用となります。一般細菌予防としては造血幹細胞移植ガイドラインを参考としたキノロン系使用を検討しますが一般的には使用しません。

また、IgG 600mg/dL以下であれば積極的に免疫グロブリン補充を行っています。

今回の繰り返す重症細菌感染症について、上記感染症対策に加えて、MMFの減量やPSL中止とするための方法を検討することも必要に思われます。”

④質問主治医の悩みが解決されたらコンサル完了

主治医 
PCP以外の予防投薬に関してはエビデンスが無いのが現状なのですね。今回の症例でもIgGは900mg/dL程度で、ST合剤適応は満たさないため悩んでいた状況でした。

PSL、MMFの減量を目指すことが極めて何より重要で、そこをまず目指したいと考えます。本当にありがとうございました。”

【まとめとコメント】

さて、今回の症例は背景に膠原病があり、治療による免疫抑制状態の患者に繰り返す発症する重症細菌感染症に対するアプローチについてのE-コンサルでした。

ST合剤によるPCPの予防は呼吸器内科でも頻繁に行います。経験上はPSL 7.5-10mg/日が2-3週間以上持続する場合には予防投与を行っています。間質性肺炎に対するステロイド投与がその適応になりますが、mPSL 1000mg/日×3日間によるステロイドパルスやPSL 0.5mg-1.0mg/kg/日から開始し、漸減していくことが多いため数か月以上あるいは病状により年単位になることが多いのが現状ですから積極的にST合剤による予防投与を行っています。このあたりのエビデンスに関しては決まったものはなく施設や医師によっても差があるのではないでしょうか。

日本呼吸器学会誌に掲載された論文には、PSL 20mg/日以上、4週間以上投与する場合にはST合剤によるPCP予防を推奨する[2]と記載されていますので一つ参考にしてもよさそうですね。

このように専門医不在時にも専門性の高い疾患の診断や治療、今後の進め方についてEコンサルを活用することで適切な方針へと診療において導くことが可能となりました。ぜひみなさんもE-コンサルを利用してみて、その有用性を実感してみてください。

執筆者:Dr.心拍@呼吸器内科医

参考

[1]Jun Ogawa, et al. Prediction of and prophylaxis against Pneumocystis pneumonia in patients with connective tissue diseases undergoing medium- or high-dose corticosteroid therapy, Modern Rheumatology, Volume 15, Issue 2, 1 April 2005, Pages 91–96

[2]Sepkowitz KA, et al. Pneumocystis carinii pneumonia without acquired immunodeficiency syndrome. More patients, same risk. Arch Intern Med 1995; 155: 1125-8.