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メディカルイラストのチェックポイント(第1話)〜内容を把握しよう〜

こんにちは。メディカルイラストレーター(MI)のおにくです。

メディックメディアの『みえる系』とよばれる、イラストがメインのシリーズ書籍(『病気がみえる』『薬がみえる』など)では、基本的に1冊につき編集者・メディカルイラストレーター(MI)ともに複数人でチームを組んで制作を行っています。

MIはそれぞれ自分の担当の章を複数もっており、その章の担当編集者や、時には実際の読者となる学生さん達と相談しながらイラストや紙面を作り上げていきます。

制作の途中段階で、MI同士でお互いの原稿を確認し、書籍全体のクオリティを上げる工程があり、メディックメディアではそれを「イラストレーターチェック(イラレチェック)」とよんでいます。

編集者、監修者の目はもちろん通っていますが、MIが自分一人しか目を通していない状態だと、やはり気付きにくいことが出てきてしまうためです。そこで、まだお互いの原稿をあまり見ていないフレッシュなMIの視点で改めてチェックを行い「誤解なく伝わる、わかりやすいイラスト・紙面になっているか?」を指摘しあうのです。

今回から2回に分けて、チェックする際の考え方や実例などを紹介していきたいと思います。

【チェックのポイント】

  • イラストレーターといえども、内容を理解しなければどのようなイラストが適切なのかはわかりません。
    どのようなことを伝えるためのイラストなのか?

  • 強調すべきはなんなのか?

  • それをまず、「読者の目線」で紙面を読んで理解できるか?を確認します。

知識のあるMIももちろんいますが、医療・生物とはまったく異なる学部出身のMIもいます。そういう人でも、読んで理解できる紙面になっていることが「わかりやすい」ということにつながります。

一旦、勉強する初学者の目線で読んだ後、今度は「イラストレーターとしての目線」でイラストやレイアウトを確認します。

編集者や監修者は「イラストの引き出し」をそれほど多く持っているわけではありません。
その点、イラストレーターは普段から仕事や趣味でいろんなイラストや漫画的表現を見ていることが多いため、イラスト自体の違和感や、より良い表現方法などを思いつきやすいのです。

「読者目線」で理解した内容と、「イラストレーター目線」で見つけた改善点を組み合わせると「この内容をどうやって表現するべきか?」という「メディカルイラストレーターの目線」ができあがります。

さて、次は実際の紙面を例にして、どこを見て何を考えているのかを説明していきます。
(※例は社内教育用に使用している過去の制作途中の紙面であり、医学的に正確ではなかったり、様々な事情により商品版に指摘を反映していない場合があります。ご了承ください)

【チェックのながれ】

具体的なチェックのながれは、上記の①〜⑤のようになります。
前半は読者の目線、後半はイラストレーターの目線です。

さて、今回チェックするのは「突発性難聴」という疾患の「症状」の項目です。
『病気がみえる』(略して病みえ)の疾患のページは、概ねこのような構成になっています。

【初学者目線でのチェック】

では1つめ。章のテーマを把握します。
まずは疾患のまとめである「intro」と「MINIMUM ESSENCE」を見てみましょう。

タイトルから「突発性難聴」という病名であることがわかります。

その下にあるintroという囲みに疾患の概要が書いてあります。
「突発的」「片側性(=片方だけに発生する)」「難聴」「めまい」「1回で完結」というキーワードが読み取れます。

MINIMUM ESSENCE(ME)はメディックメディアの書籍で広く使用されている形式で、その名の通り、疾患の典型例の特徴的要素だけを抜き出したものです。
「50〜60歳代」「突然発症」「片側性」「難聴」「耳鳴(じめい)、耳閉塞感(じへいそくかん)、めまい「発作は1回」

introと同じキーワードが出てきましたね。これらはどうやら重要なようです。

次はBOXのテーマを把握します(みえる系書籍では一番小さなテーマごとに箱で囲っており、それぞれの箱をBOXと呼んでいます)。

基本的にはタイトルを見ればいいですね。
どうやら症状の話がしたいBOXのようです。
つまり、先ほど出てきたキーワードがしっかり紹介できれば、テーマに沿っていると言えるでしょう。

ではポイントを確認していきましょう。

上から文章をざっと読んでいきます。
「突発的な片側性難聴」「前駆症状(=前触れ)はなく」「突然の難聴」「片側性」「めまい」「1回で完結」
さっき出てきた重要そうなキーワードは全部入っていますね。重要なことは抜けてなさそうです。

ここまでで、この疾患において重要そうなキーワードがわかりました
つまり「初学者の目線」での概要の把握が完了した状態です。

次回は、「イラストレーターの目線」でレイアウト・イラストのチェックポイントを見ていきましょう。

▼(2024.2.2追記)第2話公開しました!


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