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メディカルイラストのチェックポイント(第2話)〜レイアウト・イラストは適切か?〜

こんにちは。メディカルイラストレーター(MI)のおにくです。

メディックメディアの『みえる系』とよばれるイラストがメインのシリーズ書籍(『病気がみえる』『薬がみえる』など)では、基本的に1冊につき編集者・メディカルイラストレーター(MI)ともに複数人でチームを組んで制作を行っています。

MIはそれぞれ自分の担当の章を複数もっており、その章の担当編集者や、時には実際の読者となる学生さん達と相談しながらイラストや紙面を作り上げていきます。

制作の途中段階で、MI同士でお互いの原稿を確認し、書籍全体のクオリティを上げる工程があり、メディックメディアではそれを「イラストレーターチェック(イラレチェック)」とよんでいます。

編集者、監修者の目はもちろん通っていますが、MIが自分一人しか目を通していない状態だと、やはり気付きにくいことが出てきてしまうためです。そこで、まだお互いの原稿をあまり見ていないフレッシュなMIの視点で改めてチェックを行い「誤解なく伝わる、わかりやすいイラスト・紙面になっているか?」を指摘しあうのです。

さて、前回は「突発性難聴」という疾患を例に、まずざっくりと文章を読んで「疾患の概要・重要ポイントをつかむ」ことをしてきました。

今回は、その重要ポイントがしっかりと「伝わる」ようになっているか?をチェックしていきます。
(※例は社内教育用に使用している過去の制作途中の紙面であり、医学的に正確ではなかったり、様々な事情により商品版に指摘を反映していない場合があります。ご了承ください)


【イラストレーター目線でのチェック】

ここからビジュアライズの確認に入っていきます。
レイアウトを確認する時は、BOX内を塊で見ます

最初にくるべきは「メインの内容」を説明する文章。
それを説明する「イラスト」がきて、下の方に「補足的な内容」がきます。
横組みの場合、上から順(または左上から右下)に読んでいけば、自然に理解できるようになっているのが理想です。

なのでこのBOXのレイアウトは大丈夫そうですね。


では次にイラストがちゃんと重要ポイントを押さえているのか伝わるようになっているのかを確認しましょう。

大きく2つ、「発症してない」状態のイラストと「発症している」状態のイラストがありますね。

発症しているイラストに文字で書いてある症状は、重要ポイントを押さえているでしょうか?
「突然の」「片方だけ」「めまい」大丈夫ですね。
あれ?
「発作は1回」というキーワードが入っていませんね?
これは図に入れなくていいのでしょうか? 編集者に確認しましょう。
できれば、どうやったら図に入れられるのかも考えておくといいです。

さらに、何度も出てきているわけではないのに図に書いてある「悪心(おしん=気持ち悪さ)・嘔吐」についての説明文があるのかを確認します。
図の下に書いてありましたが、「悪心・嘔吐」はここで初めて出てきた要素です。
イラストに入っているということは重要なのでは? まとめ(ME)に入れなくていいのか?
編集者に確認してあげてください(MEについては前回の記事を参照)。

どこにも説明がないのに、唐突にイラストにだけ盛り込まれている要素は、本当に必要なのかを編集者に確認しましょう。

イラストに盛り込まれるのは「重要な要素だけ」だと思ってください。情報を詰め込みすぎると、目立って欲しい部分が埋もれてしまいます。


さて、イラストの詳細を見ていきます。

これは発症前のイラストですね。女性が料理をしている後ろでテレビから音が出ているようです。

この疾患は50〜60歳代に好発すると書いてありました。このキャラクターは、ぱっと見で60歳代に見えるでしょうか?
もう少し老けさせてもいいかもしれません。

テレビの音を表す音符と女性がルンルンしている音符は同じ表現でいいのか? 見る人は、同じ表現=同一の事象を表すと捉えてしまわないでしょうか?
テレビの音が重要(発症後には聞こえなくなる)なら、ルンルン音符は無い方がいいのでは?

これは料理をしている状況ですが、この要素は必要でしょうか?
料理に集中していたらテレビの音が聞こえないことにも気付かないかもしれません。


次は発症しているイラストの詳細です。

まず、レイアウトとして、フキダシがたくさん散らばっていますね。
「耳が変に」というセリフは耳の症状(難聴・耳鳴・耳閉塞感)を説明しているのであれば、右側のフキダシの近くに置いてあげた方が関連性がわかりやすいかもしれません。

それから、症状のフキダシや耳鳴を表す表現が、背景と重なっていてゴチャついてますね。重要なイラストが文字や背景などにかぶらないようにする(余白をとる)ことで、情報として目に入りやすくなります。

この症状には料理という状況設定は関係なかったので、音に注目させるために「ただテレビを見ている」もしくは「音楽を聴いている」という状況の方が「音が聞こえづらい」ということにもっと気づきやすいのではないでしょうか?
料理しながらよりも、音に集中してそうですよね。

【イラスト変更案】

これはあくまでアイデアであり、この後に編集者・監修者と相談し、より適切な表現を検討していきます。
例えば、MIが文章を読んで「この方がいいのでは?」と考えた状況設定ではなく、実際の患者さんに多いエピソードに沿った状況のイラストにすることもあります。

こんな感じで、内容とイラストが「言いたいこと・大事なことと合っているか」「よく伝わるようになっているか」を確認して、どうしたらより良いイラストになるのか?というのを考えていきます。

【チェックリスト】

メディックメディアでは、このようなチェックリストを作っています。今回の内容は右側のC、Dあたりの話です。

チェックする時もですが、自分が編集者から渡された原案(ラフ原稿)をイラスト化したりレイアウトしたりする時にもこれらのことを意識できていると、より良いものを作れるようになると考えています。

メディックメディアのMIG(+若手のみえる系編集者)では、イラレチェックのスピード、的確さ、他の人の視点を学ぶ機会として、みんなで同じ課題をチェックし発表するという勉強会を毎月1回行って、スキルアップを図っています。

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