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「Instagramの写真に添えるキャプション1つとっても、センスが滲み出るもの」──『文章コツ100』ブックデザイン担当の井上友里さんに聞きました

今回も、いつものメディアパルのなかの人とは違う人が書いてくれた、インタビュー記事を掲載します!このシリーズ、もっとやりたいな…。
というわけで、わたしはここまでで、隅からそっと見守ります。みなさまお楽しみくださーい!

出版史上最速をめざし、「1ネタ約7秒で読める」(※個人差による)をテーマとした書籍「文章コツ100」。このインタビュー記事では、本書制作の裏側や中身の魅力についてご紹介していきます。 
     取材 文章コツ100広報チーム 船橋一徳

第二弾は、本書のブックデザインを手がけた井上友里さんが登場。

デザイナーから見た『文章コツ100』の魅力や、活用方法とは──?!


■担当デザイナーが教える「文章コツ100」の魅力はコレ!

──今回、「文章コツ100」のデザインを担当された率直な感想を教えていただけますか?
 
井上友里さん(以下、井上):豊富に図解を作成したので、わかりやすい内容になったと思います。ただ、100個近くの図解を作成したので、1000本ノックのような大変さはありましたね(笑)。独立してから担当した仕事の中で、おそらく、今回の本がいちばん手間暇が掛かっているんじゃないでしょうか。
 
──1000本ノック……!(笑)。特に、図解化するのが難しかった「コツ」はありましたか?
 
井上:表現が難しかった図解で言うと、正直全部なんですが……。吹き出しに落とし込むようにしたり、アイコン化したり……と一目で読者に伝わるよう、極力ビジュアルに特化した表現を模索しました。手前味噌ですが、デザイナーとして今回一番役に立てた部分が図解の部分だと思ってます!
 
──絶対そうだと思います(笑)。ビジュアル面でいうと、イラストを担当したHONGAMAさんの印象が強いですよね。井上さんが推薦されたそうですが、その理由は何でしょう?
 
井上:HONGAMAさんのイラストって、人間の最も正直な部分や瞬間を捉えていると思うんです。そんなユーモア溢れる表情のバリエーションといったら……他に類を見ないのではないかと。なので、今回の困ったシーン100選を彩ってくれるのは「HONGAMAさんのイラストしかない……!」と最初から思っていました。登場人物の2人に息を吹き込んでいただき、結果、とても親近感のある紙面になったと思っています。2人の名前を「サオリ」と「マキ」と命名した人も……。

書店で映えるカラーを決めるのも一苦労……


いよいよ校了間近、入念な色校チェック
海外で入手した本といっしょに置いて、自分のデザインを客観的に評価するようにしている


 ──ちなみに、井上さんが「これ、使えそう!」と思ったコツはありましたか?
 
井上: 第2章15の「『、』を工夫してつかう」ですかね。これは本当に昔から「どこに、どんな頻度で?」と、まさにサオリと同じ悩みを抱えていたので……。なんというか、一度クロールの息継ぎのタイミングを間違えると、そのあとのパフォーマンスが崩れる、そんな感じで頭を悩ませていました。あとは、第5章45の「『て・に・を・は』をマスターしよう」も、基本的なことでありながら、いまだに判別できてない部分だったので注目しましたね。
 

■文章を整理(編集)するコツ


 ──井上さんは、「旅と編集」をテーマにしたビジュアル新聞『Parallel Post』の発行・制作も手がけておられます。編集をテーマにされているということは、情報の整理や文章を整える作業も発生すると思うのですが、どのような部分を意識して、制作をされていますか?
 
井上:ここでの「編集」というのは、現地で撮った写真をはじめ、お土産で買った缶詰や本、現地で拾い集めてきたビール瓶の蓋、チケットの切れ端など、入手したあらゆる素材を使って、旅で体験したことをどう人に見せるか整理し、ビジュアルに落とし込むという作業でした。以前のコロナ渦の影響もあり、旅行気分が下がっていたその当時に、私たちが感じたヨーロッパの風を少しでも感じてもらうために、また、見る人にとって良い刺激となるように思いを込めて制作しました。
 
ビジュアル新聞ということもあり、もちろんビジュアルがメインなのですが、主にそれに添えるタイトルとキャプションと、説得力としてのデータ(※日付や時間、都市などの事実・詳細)は必要なものとして認識し、同時に記載しました。キャプションに関しては、長くなり過ぎないことを意識した上で、補足以外のビジュアルから伝わる情報はなるべく書かないようにしました。見てわかること文章化してもあまり意味がないと思うのと、何より文字で説明してしまうと説明的になりすぎてしまうので。どちらかと言うと、その時に感じた自分の心の中を書き出す感じでしょうか。

2人組で制作したビジュアル新聞『Parallel Post #001』 (発行:Ikenoue Parallel)
https://www.instagram.com/ikenoue_parallel/
https://ikenoueparallel.square.site/
ビジュアルに添えたタイトル/データ。カメラに記録された時間も入れ、リアリティを出した
新聞に添えた別紙キャプション
旅行先では必ずカメラ小僧になるという井上さん

 ──そうした心掛けは、いつ頃から意識されるようになりましたか? 例えば、以前に所属されていたデザイン事務所で先輩から教わったとか。 

井上: 事務所時代、ボスが自分やスタッフのレイアウトを見て、「これ、ここにキャプション必要だよね?ね?○○○○○○○○ってね」と鉛筆でレイアウト上の写真の下にごにょごにょとキャプションらしき線を書くのをよく身近に見ていたんですね。「あ?見出しもあったほうがいいよね?ね?」とさらに写真の上にぐりぐりと見出しらしき線も書いて。そんな感じで、読む人にとって“わからないもの”がないように、デザイナーとして先に不足に気付けるかどうかの特訓を現場で受けてきたので、あくまでビジュアルがメインの場合でも、「果たして本当にキャプションもデータも何もなくていいのか?」とすぐに疑う癖がついていますね。

 ──「読みやすさ」を追求する中で、文章のスキルも磨かれていったのですね。やはり、色々な文章に触れてデザインしていくお仕事なので、自然と「文章のこだわり」というものが育まれるのでしょうか?

 井上:デザイナー、とくにエディトリアルデザイナーで言うと、日々いただいた原稿や情報を機能ごとに整理・分類して「タイトルはどの書体で、大きさはどうしよう……」「本文の行間、狭いかな……」と見せ方を工夫することが主な仕事になります。もしかしたら、その総合的なスキルが、自ずと文章を順序立てて整理し、読みやすくする……といったことなんかはあるかも知れませんね。

 ──ちなみに、デザイナーさんの立場から見て、「これは上手!」と感じる文章には、どのような共通点がありますか?

 井上:一文が長ずぎない、口語のようなやわらかい文章が読みやすいと思っています。デザイン事務所時代は、ボスに「原稿よめよ〜」と常に言われていたので、デザインに取り掛かる前には、とにかく色々な原稿は読んでいました。本文組などのデザインをする際、「本文中の一行アキ」なんかも、途中のいい休憩になって文章をより読みやすくしているんだな……と、いつも実感します。あとは、「本文小見出し」も大事ですよね。長い本文を読んでもらうための”きっかけ”ですから。小見出しが全くない本文は、結果的に”読みにくい”文章になってしまうように思います。  

■「フリーランスの人にも、読んでほしい」


 ──井上さんご自身は、文章を書く上で難しさを感じることはありますか?
 
井上:やりとりする際に、ちゃんと伝えきれていない、逆に相手から伝わってこないな、と思うこともありますね。先日も、ロケハンで関西に出張へ行ったのですが、編集者からの工程表の内容を十分に把握できていなかったことが理由で、新幹線を降りて現場に到着してから数十分後には、とある銭湯の電気風呂に入らなければいけないという出来事がありました。メールで内容を理解していたつもりでも、何となく詰めが甘く、詳細がふわふわのまま……蓋を開けてみるといろいろ段取り不足だった……という出来事でした。これも、文章だけで伝えることの“難しさ”だと思います。……水着を持っていくべきだった……!!!!
 
──現場に到着して、いきなり電気風呂は、なかなかハードですね(笑)。
 
井上:初の電気風呂は体が勝手に動くほどの電流の強さで、本当にしんどかったです。とくにこういった段取りを必要とする件は、事前に相手としっかりすり合わせる必要性を感じましたね。当たり前なんですけどね、なぜかお互いふわっとしちゃうときってありますよね?
 
──最後に、どのような方々に、この一冊を読んでほしいと思っていますか?
 
井上:キャリアを問わず、私のようにフリーランスで活動している人たちに読んでほしいと思っています。対クライアントやSNSなどのあらゆる場面で、自分自身のことを自分自身の言葉で表現し、プロデュースしていく必要がある人たちです。もちろん既に独自のスタイルや知識はお持ちだと思うんですが、ちょっとした文章の新しい表現を模索中だったり、改めて基本を確認してみたいという方に、この本はピッタリだと思います。Instagramの写真に添えるキャプション1つとっても、センスが滲み出るものですからね。あとは、本を読むのが苦手……という人でも読みやすい体裁になっているので、これを機に是非読書の壁を超えていただきたいですね!

井上友里/Inoue Yuri
グラフィックデザイナー/エディトリアルデザイナー
東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。卒業後は岡本一宣デザイン事務所に在籍し、約11年、グラフィックデザイン・エディトリアルデザインの現場を学ぶ。2019年よりデザイナーとして独立。雑誌、カタログ、書籍などの紙媒体を中心に活動している。撮影ディレクションやイラストレーター提案など、媒体のアートディレクターとしても積極的に活動する。
https://www.instagram.com/inoyuridesign/


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