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歴史を学べば、世界の今がより分かる【銃・病原菌・鉄(上、下)】

こんばんは。
5月もあっという間に終わり、自粛期間も、はや2ヶ月といったところでしょうか。

5月30日には新型コロナウイルスの感染者が世界で600万人を超えたと発表され、感染者はブラジルやインドなど人口の多い地域で特に増加傾向が続いています。
https://this.kiji.is/639594861008372833?c=113147194022725109


社会制度や文化、もちろん人口も異なる世界の国々それぞれが異なる問題を抱え、目まぐるしく状況は変化しています。

私自身も専門家ではないので多くを語ることはできませんが、数年後には現場で働くようになる身として最低限把握するべきだと考えています。

そのなかで、今回、地域によって異なる状況が生じている原因を考える上でひとつヒントを与えてくれるであろう”歴史”について考えるべく、「銃・病原菌・鉄」手にとってみました。


・この本を読むに至った経緯

そもそもなぜ“歴史”なのか。

これは先月、現在東京大学や慶應義塾大学で教授を務められている鈴木寛先生のお話を聴く機会があり、そこで歴史から学べることの多さについて知ったことにあります。

さらに、鈴木寛先生は、理系人が時間があまりない中でもできる歴史の学び方について、

「理系人は、何か大きな出来事が起こった時にそれに関連する歴史を網羅していくように勉強すると良い」

と教えてくださいました。

そこで、今回のCOVID-19について考える際に歴史から学べることも多いと思い、感染症や人類の歴史などに関して何か学べるものはないかと探していたところ、好きなYouTuberさん数名がお勧めしていたこの本が目にとまり、手にとってみました。


・本の内容と感想

この本は上下巻800ページにわたって1万3000年にわたる人類史の謎について考察されているので、この記事のなかで紹介できるとは到底思えないので概要だけ紹介します。

先程も述べたように国や地域によって社会制度や文化、歴史はそれぞれ違いますが、もとを辿れば人類は同じ場所から生じてきたと言われています。

それがどうしてそれぞれに異なる歴史の経路を辿ってきたのか。

この人類史上最大の謎を解決する目的で著者のジャレド・ダイアモンド氏が書いたのが「銃・病原菌・鉄」になります。

この謎に対する答えを一文で要約してしまえば、

「歴史は、異なる人々によって異なる経路を辿ったが、それは、人々の置かれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない。」

と言えます。

本書では人類が異なる歴史を辿る要因となった様々な環境要因について具体例を挙げながら解明していきます。

その中でジャレド・ダイアモンド先生がタイトルにもなっているように、

銃・病原菌・鉄

が人類史を大きく変えるような、重要な役割を果たしています。

全体像を把握しながら追っていくと理解しやすいと思うので以下の図を参考に進めていくことにしましょう。

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図からも分かるようにユーラシア大陸が東西方向に伸びる大陸であったことは、緯度の差が比較的小さく、他の大陸よりも植物の伝播が容易な環境にあり、その中で栽培化可能な野生種が増えたことは狩猟採集民が農耕を始め、人類の定住を可能にしました。

定住は出産の間隔を短くすることにも繋がり、結果として人口は稠密化し、そこで余剰な食料生産が可能になったことで、食糧生産に携わらずに特別な仕事を担う人を養うことができた他、家畜が飼育可能な状況を作ったのです。


話は今回の話の根源であるCOVID-19に関連して疫病に着目すると、この家畜の存在が疫病を世界中に広げることになりました。

世界史はいくつかのポイントにおいて、疫病に免疫のある人たちが免疫のない人たちに病気をうつしたことが、その後の歴史の流れを決定的に変えてしまっています。天然痘をはじめとしてインフルエンザ、チフス、ペスト、その他の伝染病によって、ヨーロッパ人が侵略した大陸の先住民の多くが死んだ事実が残っています。

このように、ヨーロッパ人が家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、進出地域の先住民に感染させたことが人類の現在の構図に大きく寄与していることを考えると、人類が異なる歴史を辿ってきた事実にも納得の気持ちが多少なりとも芽生えたのではないでしょうか。
(少数のヨーロッパ人が南北アメリカ大陸を侵略できた事実があることは、先程の図のような流れがあったことで生じた、銃や鉄も大きな要素としてあり、これは是非本書を読んで感じてもらいたいです。)


そして、世界で2000万人の命を奪い、人類史上最も猛威をふるったスペイン風邪の大流行から100年が経ち、今世界は新型コロナウイルス感染症の猛威にさらされています。

これらは、人類の歴史が病原菌とともにあることを再認識させ、
我々はwith コロナの時代とどう向きあうべきか問われているような気がします。

又、本書を通じて歴史から学ぶことの多さを実感するきっかけを与えてもらったような気がしています。


本書はかなりの具体例を通して人類史の考察がなされているので、全てを追っていくのはかなりの時間がかかるので、私のような歴史の教養が不十分な人間にとってはハードな部分もありましたが、物事のつながりを横断的に考えることのできる本書は、学校で学んだ歴史の知識を色んな方法で繋げてくれるとても興味深い本でした。

実際には銃・病原菌・鉄が歴史に大きな影響を与えた事実だけでなく、政治や文字の発生、特殊な民族の事例など今を作った人類史が多方面から描かれているのでまたいつかもう一度手にとってみたいです。
(個人的にはインドからアイルランドにかけて広く分布しているインド=ヨーロッパ語族に属する言語は、単語の語形が近ければ、祖語が広く使われていた時代からあったものを反映していると分かる、など言葉が歴史を映し出す魅力も感じ、印象に残っています。)


・次の一冊に。(本の処方箋)

今回はまだkindleで概要しか読んでいない本なのですが、この「銃・病原菌・鉄」を読むかで最後まで迷っていた

サピエンス全史

を違う観点から人類史を知りたいと思った方にはオススメしたいと思います。
「銃・病原菌・鉄」に重なる部分もありながら、認知革命、農業革命、科学革命などにふれてホモサピエンスが繁栄してきた歴史を知ることができます!

サピエンス全史の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の作品も気になっているので、我々が向かう未来について書かれた「ホモ・デウス」を読んでみようかと考えているのでこちらも是非。


・最後に

同じ起源を持つ人間が、しかも同じような地域で生きているのにも関わらず、人種差別によってアフリカ系アメリカ人が殺害されるニュースをみたときはとても悲しくなりました。

私たち日本人にはあまり馴染みがないことですが、周りの友人が海外で経験したことを聞くと、他人事ではないと感じます。

“Black Out Tuesday”

この運動で日本にも世の中で実際に起こっていることが伝わってくるようになり、人種差別の問題についても考えさせられることになりました。

感染症によって危機的な状況にある今、人種に関わらず助け合える心だけでも持っていたい、そして、今を皆で乗り越えていきましょう。

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