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【気まぐれ読書日記】「発達障害になりたがる人たち」


香山リカ著「発達障害と言いたがる人たち」読了。精神科医でカウンセリングのスペシャリストである香山リカが発達障害、自閉症スペクトラム障害を取り巻く環境について深く考察し語り尽くした新書である。

「発達障害のインフレ」が起きていると、香山氏は言う。ちょっと片付けが苦手なだけで発達障害かもしれない、ちょっと空気が読めないだけでアスペルガー症候群かしら……日本人は今、発達障害という属性をほしがり、診断されるだけで安心していると香山氏は分析する。

そして、発達障害という概念が言葉以上に肥大化し、ひとり歩きしている状況を香山氏は精神医学の専門家として受け止めつつ、控えめに警鐘を鳴らしているのだ。

人は、名前を付けることで安堵し、名前を付けられることで安心する。突如として雲間からするどい光がのぞき、轟音とともに地表の一点に突き刺さる……「雷」という言葉が与えられ、気象現象というカテゴリにおさまることで、人々は突然の雷鳴にも怯えずにすむ。発達障害もまた、あるいはそれと同じなのかもしれない。

「発達障害」というステッカーはある人にとっては免罪符となるが、ある人にとっては一生を左右する呪いにもなり得る。幼い頃から両親に「発達障害ではないか」と言われつづけ、自信をまるで失った人も少なくない。発達障害に二次障害があるとすれば、このようなケースなのではないだろうか。

私自身、いわゆる空間認知に致命的な欠陥があるらしく、幼稚園生でもこたえられるような図形問題すら間違えるレベルなので、その分野においては発達障害かもしれないと思っている。しかし、だからと言って、今さらになってあらためてきちんとした検査を受け、発達障害を確定しようとは思わない。ライター家業を続けるかぎり、発達障害というステッカーは免罪符にも、呪いにもならないからだ。

発達障害について基本的な知識を学びたいなら必読の1冊である。

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