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【読書】『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』〜大人の歴史小説

私がこれまで読んできた歴史小説の多くは、ある人物の生涯にスポットを当て、凡そ50年間くらいの出来事を物語にしたものでした。

この小説は、立花宗茂の視点で、1631年の10月から1632年の5月までという、僅か7ヶ月間の出来事を描いています。
そいう意味では、これまで読んできた歴史小説とは、全く違うものでした。

7ヶ月間の出来事が、ゆっくりと濃密に、そして臨場感たっぷりに描かれています。
まさにその場面に自分が存在していて、目撃者になっている感覚になります。



小説というのは、文字(文章)以上の情報はありません。
小説を読むというのは、その文字(文章)で書かれていることの何倍もの情報を、頭の中で想像をすることになります。
この想像するということが、映画などの動画では味わうことのできない、小説の醍醐味だといえます。
動画を見ることは、基本的に受け身ですが、小説を読むということは、能動的に脳を働かせなければならないのです。

江戸城内の描写(情報)が何度か出てきますが、文字で書かれている情報はほんの一部です。
はっきりと明確なものではありませんが、私の頭の中では江戸城内の様子が映像化されているのです。

緊張する場面では、もしかしたら脈拍数が少し上がってたかもしれません。
自分自身が、立花宗茂に同化してしまうような感覚です。


この物語は、戦国時代の最後の戦となった大坂夏の陣から16年後の出来事です。
漸く平和な時代になった頃ともいえますが、考えてみると関ヶ原の戦いから15年後に大坂冬の陣が起こっていることを考えると、まだまだ油断できない時代でした。
一歩間違えれば、戦国時代に逆戻りするということも、十分あり得たのです。


戦乱の世を生きてきた立花宗茂も、既に65歳になっており、この時代としてはかなりの長寿だったいえます。
そんな古兵の、切なくて、そして叶うはずのない恋心が巧妙に描かれています。
年齢を重ねた人ほど、複雑な恋心が芽生えるのかもしれません。
何歳になっても男子というのは、何処かに中学生2年生の心を持ったままなのです。


元々遅読の私ですが、この小説は特にゆっくりと読ませていただきました。
読み終わった今、少々宗茂ロスに陥っています。
いや、千姫ロスなのかもしれません。


歴史好きの方、特に戦国時代が好きな方には、絶対にお勧めしたい一冊です。

この小説を読むことになったきっかけは、Yuriii@歴史好きSEさんの記事です。
この度は、素晴らしい本をご紹介していただき、本当にありがとうございました。



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