見出し画像

【読書】門井慶喜(著)『家康、江戸を建てる』第五話:天守を起こす

日本各地には、たくさんのお城や城跡が残されています。
お城に行けば、先ず目につくのが天守閣です。しかし今現在建っている天守閣の殆どは、近年に建築されたもので、江戸時代前期よりも前に建てられた天守閣は、僅か12城しかありません。

江戸城にも天守閣はありましたが、1657年の火災で消失してしまいました。完成から約50年間、存在していたことになります。
その後、江戸城に天守閣が再建されることはありませんでした。
天守閣の大きな役割は、権力の象徴であって、既に徳川幕府の権力の大きさは、実質的に揺るぎないものとなっており、象徴としての天守閣は必要無くなっていました。

天守閣には、壁が黒いお城と白いお城があります。
私が観たことのある中で、壁の黒い天守閣で印象に残っているのは、松本城です。

松本城

松本城は、天守閣もかっこいいのですが、周りの風景も綺麗なので、とても絵になります。
壁が黒く見えるのは、壁板に黒漆を塗っているからです。
この漆はメンテナンスが大変で、今でも毎年塗り替えられています。

そして、壁が白い天守閣といえば、姫路城です。

姫路城

天守閣も含めて、城郭全体が大きくて迫力のあるお城です。
壁が白く見えるのは、漆喰の色です。そして姫路城が白く見えるのは壁だけではありません。屋根も含めて全体が白く見えます。それは屋根の目地にも白い漆喰を使っているからです。
漆喰の壁も、メンテナンスは簡単ではありません。平成の大修理では工期は約5年もかかったのですが、その主な原因は壁の塗り替えでした。

江戸城の天守閣も、漆喰塗りの白い壁でした。
漆喰の主な原材料は、石灰石です。
当時、石灰石は現在の青梅市から運ばれ、その石灰石を運んた道が現在の青梅街道となっています。

1576年に織田信長が安土城を完成させてから、江戸城の天守閣が完成する1607年までの約30年間で、全国各地で巨大なお城が造られました。戦国時代は正に築城ラッシュだったのです

近年になって再建された天守閣は、建築基準法の問題もあって、鉄筋コンクリート造りです。天守閣の形をした謂わばビルディングで、役割は殆ど展示場となっています。
それでもお城に行けば、天守閣が建っている方が様になります。見ていて気分が高揚します。

私はこれまで色んなお城に行きましたが、歴史にはあまり興味が無かったので、単なる観光地としてしかお城を見ていませんでした。歴史小説を読み出して、もっと真剣に観ておくべきだったと後悔しています。

歴史を学ぶということは、観光ひとつとっても意味の違ったものになります。
日本の何処かに行って、天守閣を見たときに何を感じるかは、歴史の知識によって変わってきます。そのようなことの積み重ねが、人生の充実度も変えていくことになる気がします。

お城を観て、物語りが蘇ってくると、タイムトラベルの気分を少し味わえます。
今度ゆっくりと、江戸城を味わいに登城いたしたいと思っています。

この記事が参加している募集

読書感想文

歴史小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?