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読書日記㉗男と点と線/山崎ナオコーラ

こんにちは。

最近は春を通り過ぎて夏がやってきたような暑さですね。私はいつも16時にラニングに行くのですが、太陽が元気で暑すぎる。陽が伸びたこともあるし、17時開始に遅らせました。

ほんの2カ月前までは、真っ暗だったのに。

男と点と線/新潮社/山崎ナオコーラ

東京、パリ、上海、ニューヨーク、クアラルンプールを舞台に男女が織りなす出会いを綴る。老夫婦、サークルの友達、幼馴染、若いカップル。男女の間にあるのは、恋愛だけではない。6篇の短編集。

私の大好きな作家さん、山崎ナオコーラさんの著書です。山崎先生の作品は、映像がすっと頭の中に浮かぶものが多い気がします。日常の先にあるちょっと変化した世界観の邦画、というイメージです。

6編の内、お気に入りは「スカートのすそをふんで歩く女」かなぁ。大学のサークルで仲良しの男3女1のグループが、パリに卒業旅行に行く話。主人公はグループ内唯一の女性なのですが、女友達よりも男友達の方が楽だ、と言います。その理由が

異種でいることは楽だ。「とりあえず、他人と比べられなければそれで良い」と思っている。

なるほど、異種でいる方が比べられないのか。異種でいるから比べられるんだと思ってた・・。ということは、似てるから小さな差が気になって比べちゃうんだな。私はあの子より全然できてない・・と劣等感を持ってしまうけど、比べる時点ですでに似てるってことか。これは初めての視点でした。

あと好きなのは1つ目の「慧眼」かな。離婚資金といって貯金をする奥様。でも結局それを夫婦の開業資金や夫を助けるために使う。自立しながらも深い愛を感じる奥様の行動がお洒落&キュン。上海を舞台にした「邂逅」は、いきなり空飛ぶラクダが出てきたり、設定についていくのにちょっと難解でした。

私は、世界中の本の中で、山崎先生の「美しい距離」が一番好きです。癌におかされた妻と支える夫の様子が描かれた作品です。まずは言葉が美しい。

地球が動いている。惑星の軌道は歪む。

この書き出しから心を掴まれました。宇宙から地球を見下ろして、ぐーっと一人の人間に近づいていく。そして最後にまたぐーっと引いて宇宙に戻っていく。「美しい距離」の意味も最後にはきっと分かるはずです。そして、ドラマチックな演出はなく、死に近づいていく様を悲観も楽観もせず淡々と綴っています。”死”があくまに自然に表現されている。だけれども、死を受け入れつつも生に対して前向きな気持ちを諦めない夫。こんなに、何回読んでも泣ける本は初めてでした。私に読書の素晴らしさを教えてくれた本です。・・・この本について語ると止まらないので、また別の機会に。

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