見出し画像

音楽家ん能小説

男はシューベルトを外し、ズボンをおろす。

そして女のなだらかな背に手を回しブラームスをゆっくりと脱がせると、

たわわに実ったモーツァルトがあらわになった。

 

モーツァルトの頂点にある黒鍵を弾いてみると甲高い音を鳴らす。

その声に反応するかのように男のカスティリオーニはクレッシェンドしていき、思い切りバッハしていた。

 

(中略)


女の秘めたるワーグナーをじっくりと焦らすようにチャイコフスキーする。

ワーグナーからは甘いメロディがとろりと溢れ出していた。

男は女の耳元で囁くようにこう言う。

「君のワーグナーはこんなにもベートーベンになってるよ」


(中略)

 

男は指揮棒を振り、女を奏でさせていた。

 「ショパン!ショパン!」というボディパーカッションの音が室内に響き渡る。

男は「ヴィバルディィィイ!!」と声あげた。

その瞬間、血管が浮き出るほどバッハしたカスティリオーニから、

白濁した音符達がドピュッシーと注がれたのであった。

   

 (中略)

  

いつの間にか2人は眠っていたが、ふとした拍子に男が目覚めた。

男は裸の女の髪を優しく撫でる。

 

女はすこし寒そうに見える。

男は、こう呟いた。

   

「パンティ葉加瀬太郎…」 

 

Fine

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?