アラサードリーミン

小さい頃、漫画家になりたかった。
絵を描くことが好きだった。

中学に入り、他の小学校出身の子たちと一緒になった。
そこには教科書に作品が載るような子がいた。

「わたしは一番にはなれないんだな」

幼いながらにそれを悟って、いつからか何も描かなくなった。
「描けなくなった」という方が近いかもしれない。

また、わたしが小さい頃は漫画やアニメが好きな所謂「オタク」というものはあまり人権が無かったように感じる。
「アニメが好き」と言えば「あいつはオタクだからな」と冷ややかな目で見られていたし
実際母親からもあまりいい目では見られていなかったように思う。


去年、実家に帰った時。
母親と二人、車の中で甥の習い事が終わるのを待っていた。

その時不意に「あ、そういえばさ」と母親が話し始めた。

「保育園の頃、先生がクリスマスの時期にサンタクロースを描きましょうって言ったんだって。きょろきょろあたりを見回す子たちを尻目に、わたしちゃんだけ画用紙を縦にして脇目も振らずに描き始めたんですよ。お母さん、あれは才能だから。絶対伸ばしてあげてくださいね。って言われたんだよね。」

その話を聞いた時、隠れて少しだけ泣いてしまった。

筆を折らなければよかったという後悔と、少しでも周りの理解が得られていたらというモヤモヤとした気持ちが悪い怒りのようなもの。

好きなものを「好き」と言えることの尊さと、
それを楽しめること、誰にも否定されてはいけないこと。

それがすごく大切なことなのだと思う。


どうしてかなって思うほど
うまくはいかなくて
どうしてかなでわかるほど
簡単じゃなくて
どうしてかなって思うほど
うまくはいかなくて
どうかしてるって思うと
なんかちょっと楽になる

アラサードリーミン / Charisma.com

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