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映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第27回

「ビニール張りの家具はぺたぺたしそう
1986年公開映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」)
文・みねこ美根(2019年7月15日連載公開)

怖い夢を見た。刻み生姜みたいな生き物に地球が侵略される夢。空から降ってきた刻み生姜に触れると、寄生され、死んでしまう。刻み生姜は子どもを産み、増え続け、子ども刻み生姜は噛みついてくる。世界はパニック状態で、明日死ぬかもしれない恐怖の中で、熱海の金色夜叉の像を見上げる夢。なんじゃそら。刻み生姜は、この間生姜を刻んだからだと思うんだけど、この“地球侵略”系の夢の原因は、絶対にこれだ。「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」。(金色夜叉はなぜ出てきたか分からない。)

先日テレビ神奈川で放送されている「青春音楽バラエティ 𠮷井さん ~オヤジの音楽狩り~」にゲスト出演させていただいた。この「映画の指輪のつくり方」の話をしたときに、𠮷井さんがおすすめしてくれた映画がこの「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」という作品。温厚で優しい微笑みの𠮷井さんが教えてくれたこの映画、かなりマッドで最高。怪しげなミュージカル映画は結構見てきたと思っていたのだけれど、全然知らなかったので、ひぇ~、何故見落としていたのか、と頭を打ち付けつつ、こうしてイカした映画を新たに知ることができて嬉しい、𠮷井さん、ありがとうございます。

 もともと1960年に公開された映画で、それをもとにミュージカルとして舞台化、ヒットを受けてミュージカルとして1986年に映画が公開された。オリジナルもミュージカルも違った面白さ、どちらも好き。

 花屋で働くシーモアは、店主のムシュニクに怒られてばかり。シーモアは同じ花屋で働くオードリーに思いを寄せているが、彼女はサドの歯医者と別れられずにいた。そんなある日、シーモアは珍しい植物を手に入れる。店先に飾ると、物珍しさに押し掛ける客で花屋は大繁盛。しかし、“オードリーII”と名付けられたこの植物、どこか元気がない。手を尽くしても育たないオードリーIIが唯一反応したのは、偶然怪我をしたシーモアの指から出る血液…。シーモアの血を飲んでどんどん育つオードリーIIが次に要求したのは人の肉だった…という話。

1960年版と1986年版は細かい設定がところどころ違うのだが、大きく異なるのは結末。結末としては1960年版が好きかな。1969年版は70分ほどと短いがテンポがよく、とても見やすい。1986年版は、なんといってもオードリーIIの凄さと音楽。オードリーII本体は手動にもかかわらず、発音とぴったり合った口の細かい動きが素晴らしくて、見入ってしまう。また、音楽は大巨匠のアラン・メンケン!どの曲も耳から離れない。アラン・メンケン恐るべし。この作品の後に「リトルマーメイド」「アラジン」などの楽曲を制作。「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」も好きだな。歌詞から考えているのかな、自然に落ちる語尾とかセリフっぽい部分や盛り上がり、民族音楽のテイストが入ったりするのも面白い。喋り口調の抑揚、自然な流れなのに鳥肌もんのメロディが本作でも楽しめる。

サドの歯医者の歌のシーンは爆笑。こんな歯医者嫌だぁ。マゾの患者をビル・マーレイが演じているのだけれど、1960年版ではジャック・ニコルソンが演じている。これが映画デビュー作品だったらしい!若いころから良い眉毛してるわ。ちなみにオードリーは、「レオン」のマチルダのお母さんです。

 ときどきディズニー的演出が入ったり、ストーリーテラーの3人組が面白い登場をしたりと、みどころ満載。怪しげだけどポップな世界を楽しめる。怖い夢を見るかもしれないけれど。

 今回は𠮷井さんにご紹介いただいた映画、とても面白かったので指輪にしました。もしみねこ美根に見せたい映画があったら、どんどんリクエストしてください。気に入ったらやります。リクエストはみねこ美根のTwitterのDMまで。

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モチーフ:オードリーII、売り物の花、月刊誌「苦痛」、○○の足、斧、抜かれた歯、シーモアの腕(指から血が…)
音楽:「Mean Green Mother From Outer Space」Alan Menken オルゴールver. cover

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