映画「アナスタシア」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第19回
「実はディズニーじゃないプリンセス」
1997年公開映画「アナスタシア(Anastasia)」
文・みねこ美根(2018年12月1日連載公開)
12月。今年も終わる。年の瀬、私を苦しめるもの…。卒論。本当に助けて欲しい。一文字も書いてない。論文はいくつか読んだし、インタビューもしに行ったので、なんとなく材料はそろってはいるが、一向に書く気が起こらない。長かった「生徒」としての人生。それがやっと終わるというころに現れた、不真面目さに自分自身で笑ってしまう。成績を落としてはいけないという強迫観念から勉強しまくってた中学生の頃の自分には申し訳ない。でも、自分で自分にかしているストッパーをすべて外したら、私は凄まじく瞬間的な快楽に走ってしまう人間なんじゃないかと思い、それが本来の自分なんだと言い訳しながら、卒論もなんとかなるのではないかと思っている。この連載が更新されるときには、書き終えていたい。果たして卒業できるのだろうか。そういえば卒業式の袴も何も準備していない。大丈夫なのだろうか。大丈夫じゃないな。
「アナスタシア」は、ロシアロマノフ王朝の17歳で殺害されたアナスタシア皇女が、実はどこかで生きているかもしれない、という実際にあった伝説をもとに描かれたアニメ作品。
アニメーションがとにかく美しく、人間の動きも非常になめらかで人間らしい。映像の構図や、歌唱シーンの映像の展開は、我々観客がいる“正面”を意識している感じがして、まさにミュージカル舞台を見ている感じ。
そして何より音楽が最高。どの曲もミュージカル作品として素晴らしい楽曲ばかりだし、「Once Upon a December」という曲が流れるシーンは毎回泣きじゃくってしまう。
あらすじ
アナスタシアは幼いころに、ロシア革命でロマノフ王朝は崩壊、祖母である皇太后と逃げる際に汽車から転落し、生き別れてしまう。小さいころの記憶を失い、孤児院で育ったアナスタシアは手がかりを追って家族を探しにパリへ向かう…。
廃墟となった城でおぼろげな記憶の亡霊たちと踊るシーンで、「Once Upon a December」を歌うのだが、あの色鮮やかさ、幻想的な悲しさは、アニメーションでしか描けないだろう。記憶喪失、というのもありがち…と思われるかもしれないが、孤児である自分がまさかロマノフ家のお姫様だとは覚えていたとしても信じられないだろう。アナスタシア自身何か特別な力や才能があるわけではないのだが、それがまた良い。自分は何者なのか知ろうと道を切り開く聡明さは、応援したくなる。悪役が怪僧ラスプーチン、というのもなかなかすごい。
途中バレエを観劇するシーンがあって、さりげないシーンなのにアニメーションも丁寧に作り込まれているのだが、上演しているのが「シンデレラ」。バレエ作品の中でも好きな作品なので嬉しい。
ところでお腹がすいてどうしようもない。12月は美味しいものがたくさん登場する。特に洋酒につけたフルーツを練り込んだシュトーレンっていうパンが好き。瞬間的な快楽に走り過ぎて太らないようにしなくては。……………食べたい。
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モチーフ:パリの薔薇、祖母からのオルゴール、オルゴールを開けるペンダント、皇女の冠、ラスプーチンの呪いのランタン、骸骨たち
音楽:「Once Upon a December」David Newman, Stephen Flaherty(オルゴールver. cover)
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