映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第76回
今日という日を忘れるな!
2003年公開映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(Pirates of the Caribbean:The Curse of the Black Pearl)」
文:〝美根〟(2023年8月25日連載公開)
ディズニーランドに行きたい! 学生の頃は一年に一回は行っていたのに、2018年の冬以来行けてないのです。ああ、色々たくさん回った後で、ちょっと休む気持ちでカリブの海賊に乗りたい、そして最初のふわぁっと落ちるところでぎゃーってなって、バルボッサの「コックローチーズ!」が聞きたいです。
そのアトラクションが元になって制作された映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の一作目は、公開当時は全然子供でチェックすらしてなかったんだけど、バレエ教室の友達が「面白いよ、骸骨は出てくるけど子供でも見れるよ!」と励ましてくれて(ちなみにその友達は私より一歳年下だった。強い。)、それをきっかけに海賊の世界に足を踏み入れたのでした。3作目のワールドエンドは映画館に家族で観に行ったなぁ。その時もまだ小学生か・・・。でも鮮明に覚えてる。そんな子供の頃にガッツリハマった思い出深い映画を紹介します。
運命が動き出す!
カリブ海、父スワン総督とその部下たちと共に航海をしていた少女エリザベスは、漂流していた少年ウィル・ターナーの介抱をしている際に、ウィルの胸元に髑髏が描かれたメダルのペンダントがあることに気がつく。海賊の証か?と思ったエリザベスは咄嗟にウィルが疑いをかけられぬようメダルを奪い隠した。月日は過ぎ、大人になったエリザベスは父の部下であるノリントン提督の昇進パーティーに参加することに。
ノリントンから婚約の話が出るが、エリザベスは鍛冶屋として働き屋敷を出入りするウィルに好意を抱いており、ウィルもまたエリザベスを思っていた。そんな中、港にキャプテン・ジャック・スパロウと名乗る男が現れ、船を盗もうとしているところを見つかり騒ぎに。投獄されたその夜、呪われた伝説の海賊船ブラックパール号が現れる。街を燃やし暴れ尽くす海賊たちは、エリザベスの持つメダルを取り返しにやってきたのだった。メダルと共に連れ去られたエリザベスを追うため、ウィルは海賊であるジャックを脱獄させ、二人は海へ出るが、後ろには海軍、そして先には呪われた海賊とメダルの秘密が待っていた…と始まるお話。
魅力的なキャラクターたち
大人になって改めて見ると、エンタメ性にかなり富んでいて、何も考えずに子供も大人も楽しめる世界だったことに再び気がつく! もう全部覚えてるくらい何度も見まくったのだが、アクションも、海賊たちの騙し合いも、意表をつく設定も、楽しい。何よりもキャラが良い。ジャック・スパロウの飄々とした立ち振る舞い、惑わせ自分の利益を考えるしたたかさと独特な仕草やチャーミングさ、かと思えば敵の何枚も上手をいくかっこよさ! それに対となってウィルの誠実さ、勇敢でまっすぐな好青年さが際立つ。
エリザベスの勝気で聡明かつ勇気のある性格、男前な美しさ。そして敵となる呪われた船の船長バルボッサ。バルボッサの紳士的な振る舞いに、交渉を得意とする狡猾な話術、海賊的な野蛮さが見え隠れするところ、只者じゃないぞ感が醸し出される悪役キャラは、ダイ・ハードのアラン・リックマンが演じた悪役を思い出す!
脇役のコミカルな海賊たちも重要な役割を担っていて、物語の緩急を手伝い、そんなコメディ要素が、ドキドキするようなアクションシーンを効果的に際立たせていて、とにかくずっと楽しい! 子供の頃は、ジャック・スパロウに憧れたなぁ。全部器用に裏をかいて立ち回る人間になりたくて、そんな自分をたくさん妄想してました。
大海原を感じる音楽
そしてなんと言っても見るたびに毎回感動させてくる音楽! テーマソングがとにかく最高。最初のリズミカルなバイオリンから、もう冒険を待つ大海が見えてくる。それぞれの大義をもった海賊たち、運命を狂わされた人々のドラマがこんなにも音楽に乗ることってないし、戦いのシーンに流れるとこなんて大興奮。剣がぶつかり合う音も聞こえてくるよ。
耳に残るテーマソングを作るってすごく大変だよなっていつも思う。歌詞なしで、映画の雰囲気を壊さずさらに盛り上げて、メロもつけて、世の中に出尽くされたテーマソングに負けないものを作らないといけないのだから。それなのにやってくれたぜハンス・ジマー! ダークナイトシリーズの作曲家で、自分の感動琴線の位置を改めて確認したよ。2作目あたりからオルガンが多用されるのも好きなんだよねぇ。
生き残れ!
みんなそれぞれに目的や大義を胸に海に出ているわけだが、そのためには裏切りも厭わない!主人公がこんなに裏切りまくって手のひら返しまくるのって面白い。だけど、みんな一貫して目的を達成しようと、ある意味一途だからこれが憎めない。海賊の恐ろしさと、得体が知れないからこそワクワク興味を惹かれる設定が、まさにエンタメ。
また、呪いをかけられた海賊たちが海を移動する方法がこれまた面白い。細かい設定が噛み合わさって終盤へ向かっていくのも見応えがある。エリザベスと共に「海賊なんて!」と思いながらも、その危険で怪しげな魅力に虜になること間違いなし。
ここぞという瞬間を待て
今回は海賊の旗をイメージして、アステカの呪いの金貨の山の上に、骸骨とジャック・スパロウの帽子と拳銃と剣そしてコンパスを指輪に乗せました。汚れた生々しさ、渋い色合いがお気に入りです。
「ここぞという瞬間を待て」というジャックのセリフがある。場を見極めて、一番効果的な利のある瞬間で確実に手に得るのだ。不器用な私は、飄々と立ち回る人間にはなれなかったし、海賊になっても役立たずで放り出されるかも知れないけど、生きるか死ぬか、どんな時もここぞという瞬間を見逃さない人間になりたい。
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モチーフ:骸骨、アステカの金貨、ジャック・スパロウの帽子、コンパス、剣、銃
音楽:cover「Yo Ho! A Pirate’s Life For Me」
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