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映画「インターステラー」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第29回

愛は観察可能な力だ、何か意味がある。
2014年公開映画「インターステラー(Interstellar)」
文・みねこ美根(2019年9月16日連載公開)

好きな映画の系統はバラバラだ。でも特に心揺さぶられるものは、信じることや、愛すること、人間らしさ、とか、論理的に説明しづらい気持ちを肯定してくれる作品だな、と最近気が付く。「結局のところ人間なんてそんなもの」という諦めや失望じゃなくて、「ささやかで小さなこの気持ちは信じていいものなんだ」と思いたい。人生は続くし、突然終わるし、ハッピーエンドだけじゃないことなんてわかっている。大人になった今、数値化できない概念や感情の裏付けが欲しいのだ。

 「インターステラー」はクリストファー・ノーラン監督の作品。「インセプション」が好きで、その流れで知った。食糧難、荒廃する地球、迫る人類滅亡の危機。元パイロット・エンジニアのクーパーは、義父と息子のトム、娘のマーフと農場を営み、生活をしていた。マーフの部屋の本棚から勝手に本が落下する現象、ドローンやコンバインの磁気の乱れによる不思議な動きから、重力を用いた何かからのメッセージだと考えたクーパーとマーフは砂ぼこりが示した場所に向かう。そこでNASAの人類移住のための惑星を探すミッションを知り、クーパーは計画に加わり宇宙へ向かうことになる。いつ帰ってくるか分からないミッションへの参加に反対するマーフと和解ができないまま…。

 相対性理論とか重力波とか、難しげな話も出てくる。ある映画批評には「科学的な解説、宇宙についての見解をうまく魅せる演出ができていない」とあったが、私は、そういう演出をわざとしていないのだと思う。愛と人間の話だからだ。そして、宇宙の仕組み等の解説もストーリーとなんら矛盾はないし、理論を理解しきれなくても大きな問題はない。というか、詳しく説明・図解された日にゃ「はぁ?なんの映画?」ってなるね、きっと。あと「親子愛」「必ず帰ってくる」という謳い文句も物語をうまくカバーできてないのよね(この謳い文句だったので映画館に行かなかった…失敗。)。宇宙物?SF?ウーン、いうなればエモーショナルSF? …ぜひとも、あなたの目で確かめて欲しい映画だ。

 「時間」。「インセプション」では現実で1秒が夢では1時間だったりして、その設定が要だったが、「インターステラー」では、重力により、ある惑星の1時間が地球の7年に相当するなど、時間との勝負、というポイントも物語において重要になってくる。その間に子どもがどんどん成長しちゃうのよ。地球から送られてくるビデオメッセージを見るあのシーンはショッキングで胸が苦しい。ミッションに挑む隊員たちの宇宙という静寂の中での孤独も、実に人間らしい。私は、来るかもわからない人を知らない惑星で一人待つことなんてできないな。

愛は人間が測定できないだけで意味があるものだと、隊員のアメリアが言うセリフに対して、クーパーは、愛は生殖のためだと言い、アメリアはそれでは故人への愛を説明できない、と反論する。私はクーパー派だった。愛という言葉の響きを信じながらも、生殖と繁栄を美しく説明しただけのものだと思っていた。でも、この映画が“私情”“個人的な感情”として片付けられてしまう「愛」という概念を科学的に裏付けてくれた。人間には愛を完全に解明・数値化できないけれど、感じることはできる。感じるということは存在するのだ。あなたと誰かを確実に繋ぐ“力”なのだ。

ちなみにクーパーを演じるのはマシュー・マコノヒー。「コンタクト(1997年)」という映画にも出演しており、両作品とも知っていると共通点も見えて、「君も17年後宇宙へ行くことになるぞぉ」、という楽しみ方もできるよ。マーフの幼少期はマッケンジー・フォイ、トムはティモシー・シャラメ、アメリアはアン・ハサウェイ。

 宇宙の静寂と緊張感、というのもまた……、アア、話が終わりそうもないなぁ、もう字数もオーバー気味なので、今回はここまで。動画も楽しんで。ぴゅ。

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モチーフ:マーフの部屋の本棚、落ちた本、家に続くトウモロコシ畑と道、ドローンを追いかける車、インド空軍のドローン、TARS、マーフのノート、クーパーが渡した腕時計、宇宙服の人物
音楽:「S.T.A.Y」Hans Zimmer オルゴールver. Cover

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