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映画「マジック」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第63回
どんな私も一人の私
1978年公開映画『マジック(Magic)』
文・〝美根〟(2022年7月18日連載公開)
来てくれた皆さん、来れなかったけど応援してくれた皆さん、スタッフの皆さん、そしてメンバー。関わってくれた全ての皆さん、ありがとうございます。
次のワンマン、11月17日に、そしてその先の未来に方角を定めてまたここから進もう。
今回は、私が超気になっていてやっとみれた映画を。若きアンソニー・ホプキンスが主演のサスペンス・ホラーです。
【一人の男、一体の腹話術人形】
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売れないマジシャンのコーキー(アンソニー・ホプキンス)は、ファッツという人形を使い腹話術とマジックを掛け合わせたステージで一躍人気者となる。大物エージェントのベンがマネージャーとなり、スターダムを駆け上がらんとしていたが、テレビショー出演の条件である健康診断を頑なに拒否し、故郷に帰ってしまう。戻った先で再会した高校の同級生ペグが経営するコテージに泊まり込むコーキー。学生の頃の片思いが再燃、ペグへの思いが再び強くなるが、コーキーには誰にも言えない秘密があった。
【喋り出す腹話術人形】
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コーキーは、まだファッツがいなかったマジシャンとしての初舞台で、自分に無関心なお客にブチギレてしまったり、大事な仕事ではなく、自分を知られる恐怖をとって逃げ出してしまったり、ペグに披露するマジックで失敗するとパニック状態になり怒り出したり、幼少期の回想で内気な子供時代を送っていた描写があったりと、自意識過剰、見栄っ張り、責任転嫁しがち、でも自信がなく消極的、そんな人物として描かれている…。あれ、これ私に似てない?書いてて思い当たる節ありまくりなんだけど…。いや、お客さんにブチギレたことはない!けどなんかちょっと前の自分に似てるな。。
そんなコーキーが一人の時、会話の相手がファッツなのだ。自分自身との対話のように最初は描かれるが、だんだんファッツの存在が大きくなっていく。ファッツは皮肉屋で下品で、きついジョークを飛ばし、はっきり物申す性格。そんなファッツ(コーキー自身)がコーキーを鼓舞する構図が次第に崩れ変化していく様が凄まじい。そしてそれを全部演じているアンソニー・ホプキンスの怪演にずぶずぶ引き込まれる。若い頃からすごいんだなぁ、レクター博士。中盤の「Me! Me! Me! Me! Me! 」と捲し立てるシーンが鳥肌。こええ!BGMもほぼないのに、コーキーとファッツの掛け合いの追い討ちをかけるテンポ感がすごい。
【絶妙!が人形に息を吹き込む】
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本当に、絶妙なのさ。何がってね、腹話術人形は人が背中に手を入れないと動かないわけじゃん。でも、あなたは途中で変な感覚に襲われるはず、あれ?ファッツ今一人で動かなかった?って。そこが本当にすごい。カメラワーク、演出が巧みで、もうファッツの存在が自然すぎて、コーキーが操作してんだかしてないんだか何がなんだかわからなくなる。境目を失う恐怖が、良い!勝手に動き出すんじゃないかとハラハラしながら、目が話せない。
そして、私が一目惚れしたこの映画のジャケットにドバンと大迫力の人形ファッツの顔!とにかく顔がどぎつい。正直可愛くない!怖い!このインパクト大のファッツの顔がまた絶妙。光の加減や瞳の位置、カメラの角度でどんな表情にもなる。これ作った人偉大です。とにかく生き生きとしているファッツに目を奪われること間違いなし。今回の指輪は、そんなファッツを作りました。似過ぎて怖いです。助けて。
【なぜ?ではなく、起こったことが全て】
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この映画で、コーキーの背景描写や人物像の掘り下げはほとんど無い。なぜ、ファッツと会話するようになったのか、は描かれない。ファッツ自体が意志をもつようになったのでは、とか、あるいは呪われている人形なんだという見解もあるようだが、私は終盤でファッツがコーキーの言い放つセリフが全てだと思っている。思い出してもひゃァ…だよ。ところで、私の指輪のファッツとずっと目が合うんだけど……。
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モチーフ:腹話術人形ファッツ、椅子、コーキーのハートの彫刻
音楽:Joaquín Turina 「Danza Ritual」
Jerry Goldsmith「”Magic” Theme」
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