見出し画像

映画「アダムス・ファミリー2」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第23回

「It’s an Addams!!」
1993年公開映画「アダムス・ファミリー2(Addams Family Values)」
文・みねこ美根(2019年3月18日連載公開)

大学の卒業式をひかえている。長かった学生生活も終わる。高校のときの卒業式は寝てしまった。でも最後にクラス全員で遊んだのは楽しかったな、あと、部活最後の定期演奏会・三送会も良かったなぁ。あの独特な切なさは今でも大切な気持ちだ。中学の卒業式は、寂しい気持ちが盛り上がってきたときに、物凄く号泣してる人を見てしまい、気持ちが、すん…となってしまった記憶。合唱曲の伴奏と門出の言葉を言う大役があったため、実際泣くどころではなかった。

 小学校の卒業式では……、一人一人将来の夢を大声で言わなくちゃいけなかったのだけれど、私はそのとき叫んだ夢を、今、着々と叶えつつある。負けるなよ。今がその未来で、そしてまだまだ途中だぜ。

でも、気持ちが弱るときもあるだろう、そんなときはブラックジョークで、わはは!と、してみようか。1991年公開「アダムス・ファミリー2」はオープニングからテンポ感が素晴らしい。冒頭からテーマ曲までの歯切れが良すぎる。前作に増して、セリフもジョークも大人向け、かつ、パンチが効いており、今作の方が私は好き。「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるのよ」と言う子どもに、同じく幼いウェンズデーがある一言で一蹴するところとか好き。

 怪しげな豪邸に住むアダムス・ファミリーは、不幸なことや恐ろしいこと、不謹慎で、スリリングなことが大好きな、どこか浮世離れした不思議な家族。主人のゴメズ、妻のモーティシア、ゴメズの兄・伯父のフェスタ―(またもクリストファー・ロイド!)、祖母のグラニー、長女のウェンズデー(まだ幼いクリスティナ・リッチが可愛いすぎる!)、弟のパグズリー、執事のラーチ、蜘蛛のように動く手・ハンド。

 この家族を中心に繰り広げられるホラー&コメディ。原作は漫画で、アニメ、ドラマが先行して存在するらしい。映画1作目では行方不明となっていたフェスタ―とファミリーの話で、本作は、第3子ピューバートの誕生から描かれ、一家のもとへ怪しげなベビーシッターのデビーがやってきたことで物語が動き出す。デビーの怪演、フェスタ―とのやりとりや、ピューバートを殺そうとするウェンズデーとパグズリーも面白いのだけれど、一番好きなシーンは、サマーキャンプのところ!

優等生や裕福な子どもが集まるサマーキャンプで、自慢話を持ち掛けてくる家族に、ゴメズが「うちの子は保護観察中です!」と得意げに言い返すのが最高。実際本当に誇りに思っているのだから面白い。感謝祭の場面も、何度見てもスカッとする!

 この2作目が秀逸なのは、この“変わった”ファミリーと、外の世界との対比だ。“普通”の世界として描かれるキャンプで良い子どもとされるのは、大人の顔色を窺い、自分らを“普通、又はそれ以上”と信じて疑わない子どもたちだ。また、人種差別や身体的な差別も横行し、大人からの指示にうまく答えられない子どもも問題児扱いされてしまう。

 “普通”の世界の異常さも同時に描く面白さと痛快な皮肉。この物語では“変わっている”家族として描かれるアダムス・ファミリーが、私たちの個性や得意不得意を肯定してくれる。

 世間の“良いこと・常識”を極端に覆す、何でもありのアダムス・ファミリー。

 本当に自分がやりたいこと、好きなことって? …どぎついジョークとともに、生きづらい・居心地の悪い場所からあなたを救ってくれるだろう。

*****************
モチーフ:ギロチンにかけられるピューバート、
インディアンの髪飾り、ウォッカ入りの哺乳瓶、
反省ビデオ、ハンド、デビーのスコップ、
デビーからのプレゼント、フェスタ―が咥えた電球
音楽:「The Addams Family」Vic Mizzy(オルゴールver. cover)

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?