シモキタシマイになるまで。(コロナ禍でオープンしたカフェも1年経ったので振り返りその3)

その2では、カフェをやろう!ということまで長々と書いちゃいましたが、その3ではシモキタシマイになるまでをこれまた超超長々と書きたいと思います。今回小テーマごとに。

❶屋号
めちゃくちゃ悩みました。
まず何語を使おうかというところからですが、語感の響きとかで所縁もない外国語(フランス語とかさ、まあ洋菓子のルーツではあるけれど)を使いたくない、というのがありました。

語弊がありそうなので言っておくと、語感の響きが可愛い店名が嫌なわけでも批判するわけでも全くなくて。むしろ好きなお店だってある。ただ自分たちのお店を作るとなった時、隅々まで説明が出来る内容で詰めたい、と言うのがあった。

もちろん全て説明できることが良い、とも思っていない。少し話が変わるけど、大学の研究室に入っていた時、日当たりや風通しや視線の交錯などなど人が快適に過ごせる条件を全て数値化してAIに落とし込んだら皆んなが良いと思える空間が出来上がるのでは?という議論があったのだけど、そうはならないんだよね不思議なことに。やっぱり数値化したり言語化しきれない、もっと五感や感情が揺さぶられる気持ちよさというのがあるわけで。何もかも言葉で説明できるなんてそんなつまらない世界、ないよね。

ただ初めての試みだし私たちの武器の一つとして言語化していく、というのは確かだった気がしていたので、自分たちの言葉で説明が出来るような選択をして決定していきたいという気持ちはあった。(その選択と決定の集合体や化学反応は言葉で説明しきれない価値を生み出していると思う。)

ということで日本語にしよう、となった。検索もしやすいし、読み方も間違えようがないし、私たち日本人だし。しかし日本語といっても平仮名、カタカナ、漢字と3種類あるわけでひたすら案を出す日々でした。

カフェのコンセプト決めには私の会社員時代の上司でコピーライターをしている方にお手伝いしてもらいながら進めていったのですが、辿り着いたヒントが「事実をそのまま言葉にしてみよう」ということで。それでもヒントをもとに案を出しまくっては首を傾げる日々でした。

ですがついにその時が。とある日、表参道のカフェにて下北沢に住む姉妹のお菓子屋さんとカフェ、「シモキタシマイ」が爆誕しました!こんな単純な言葉なのに時間がかかりました。姉と2人でめっっっちゃよくない???とチョコレート頬張りながら喜びました。やっぱり嬉しい時には甘いものが傍に。

分かりやすい、誰でも読める、カタカナが下北沢感ある、町に根差してる感もある、下北愛も感じられる、いいじゃん!となりました☺️下北沢に住む姉妹だからシモキタシマイ。もうそのまんま。

実はサンチャシマイとも悩んだのですが、文字の見た目的な可愛さもだし、姉も私も下北沢に青春を刻んでいたのでスピリッツは下北沢だろう、と。
三茶からは徒歩12分、下北からは徒歩15分と若干三茶寄りではあるものの、堂々と「シモキタシマイ」を名乗ることに決めました。祝!
決まった後に既にシモキタシマイを名乗る姉妹が実在していないか調べましたが出てきませんでした。よかった、ここが阿佐ヶ谷じゃなくて。阿佐ヶ谷姉妹くらい有名になりたいものです。


❷コンセプト
前述した私の会社員時代の上司にお手伝いしてもらいながら決めました。姉と私がワーワー要望を言って、その言葉にある意図を丁寧に解いて簡潔な言葉にしていく、という作業でした。
で決まったのが「いつものとなり」でした。

住宅街の中にある(しかも一軒家を改装した)カフェなので、凄く日常に近い存在でありたいなと思いました。
ただ一方で、例えるならジブリのトトロの存在のような、或いは千と千尋のトンネルのような、或いは耳をすませばのバロンのような。日常の延長線上にありながらも少し異世界に入ったようなワクワク感が欲しいなと思っていました。といってもジブリは例えが大袈裟だね。

ついつい誰かと話し込みたくなってしまうような、はたまた自分の世界に没頭したくなるような、ちょっと日常からはみ出して現実逃避することでほっとできるような、そんな仕掛けを散らばした空間にしたかったのです。

とはいえ、異世界感満載なイリュージョン的な意味合いではなく、あくまで日常に溶け込んだ存在でありたいのが大前提だったので「いつものとなり」は日常感と温かさとちょっと不思議さ(いつものすぐそばにパラレルワールドがあるような)が混ざり合っている言葉でとてもしっくりくるのでした。

こちらをもとに我らがポップしなないでのかわむらさんにボディーコピーを書いていただきました。

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いつものとなり

少し笑いたくなったとき。
少し泣きたくなったとき。

おうちの中じゃ、
恥ずかしいでしょう?
いつものとなりで
お待ちしています。

「シモキタシマイ」
下北沢の、すぐとなり。
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可愛くて温かくて、下北沢にそんな場所あったっけ?っていう不思議さもありつつ、何かあったらいつもの隣にシモキタシマイがいるよって寄り添うような優しく素敵な言葉なのでした。天才って一言に言うには大変失礼だから神とでも言っておこうかな。1文字になっちゃったよ。神。。
ちなみにもう2案あってそれはまたエッジが尖っていて心に刺さりまくり、めちゃくちゃ素敵な言葉だから今後どこかで使いたい☺️


❸スイーツとお料理
▼スイーツ
肝心なスイーツとお料理について。まずはスイーツ。
母は大学生の頃から森山サチコ先生というその当時洋菓子界のパイオニア的存在だった方の弟子に入り主にドイツ菓子の研鑽を積んでいました。なのでベースはドイツ菓子。と言いたいところ、修行でフランスへ、はたまた父の転勤先だったアメリカでも学んでいるので、ドイツ菓子・フランス菓子・アメリカ菓子...と独自開発のレシピは多岐に渡っていました。時には国を超え、いいとこ取りしてミックスされたレシピも沢山。

ただ、中でもアメリカ菓子との出会いは衝撃的だったようで、病みつきになるジャンキーな味わいだったり、食事とみなされるスイーツの存在だったり。
品よく、スイーツというカテゴリーに属する伝統的なドイツ菓子や洗練されたフランス菓子とは違い、日常の中に当たり前のように存在しているというくったくのないアメリカ菓子(存在もだけど作り方も)に、母は強く惹かれたようでした。

そもそも教室を開いたりと、日常の食空間を豊かにしていくことを広めていた母にとって、家庭料理のようなアメリカ菓子の存在は理想だったのかも。
ちなみにシモキタシマイの看板商品、アップルパイもアメリアで出会ったアップルパイから着想を得て独自開発したレシピです。美味しいよね本当に🍎

私もNYでちょこっと生活していた時期がありますが(留学とはとても言えず、レジデンスを借りてNYに1ヶ月住むというただただ楽しい時間を過ごした、ホームシックにはみじんもならなかった)、単調で単純すぎる味にとてもじゃないけど完食できないスイーツも沢山あるのがアメリカで(こんなこと言ったら怒られちゃうね、もちろん美味しいものも沢山あった!)、やっぱりドイツ菓子やフランス菓子の製法・比率を応用しつつ、いでたちはアメリカ菓子っぽく、という母の開発するレシピは凄いのだなと思いました。そして凄く美味しいんだよなぁ。

あとはなんといってもデコレーション!母が専門にしていた時期も長い分野で私たちもかなり心惹かれていたので、絶対に取り入れたい要素の一つでした。
ホールケーキのデザインをフルオーダーにするという文化はあまり根付いていないような気がしますが、ホールケーキが必要な場面って多くはハッピーな出来事があった時だから、既製の型にハマったデザインではちょっと味気なくないか?と。その日のその人だけのとっておきのケーキを作れるお店でありたいな、と思い。この規模だからこそお受けできるものだったりもするしね。

世には写真をチョコレートに印刷したり、ケーキに転写したりするホールケーキもあって、それも忠実な再現度と最新の技術が成せる技で凄いなぁと思っているのですが、手書きだからこその柔らかさだったり可愛さはどうしてもあるよなぁと思っていて。シモキタシマイのイラストはなんとなく皆んな優しい表情だったり雰囲気をまとっている気がするんです。可愛いよね、オーダーケーキ☺️いまは敏腕パティシエさんを中心に日々色々なオーダーを忠実に(時には無理難題も)ケーキに落とし込んで行ってくれています。有り難いよね、支えられてます。あとなオーダーしてくださる方の、喜んで欲しい!っていう温かい気合いが入った気持ちもね、尊いよね。

▼お料理
旅行好きだったり何かと海外と縁があるので、色々な国の家庭料理をアレンジしていたりします。母のお料理教室も多岐にわたる各国のお料理を教えていたので大本のレシピはそれを元に。製菓の材料や技術もエッセンスとして加わっていたりもします。

例えば人気メニューのひとつ、フィリピンの家庭料理アドボ(豚バラ肉とじゃがいもの酢醤油煮)は、日本で言う肉じゃが的ポジションで、国は違えど似た味わいや具材の組み合わせのお料理って結構沢山あって、お袋の味的なものに、国境を超えて共通項があるのかも?なんてロマンを感じたりもします。

そして今はパティシエとして大活躍のスタッフさんが元フレンチの調理場で研鑽を積んだ経験もあるということで、誰もが好きな家庭料理の味わいに少しだけお菓子屋さんならではのアクセントを加えた、その名も「パティシエのまかないごはん」の開発に携わっていただいています。若くて(そして可愛い)腕と舌の良いスタッフさんに支えられて、スイーツと並ぶくらいの存在感を放ちつつあります。

❹設計と内装
▼設計
設計は私の大学時代の友人、伊藤健吾くんと彼女さんの湯浅友絵さん(そして今となっては妻!ハッピー!)に依頼しました。
下北沢が最寄りではありますが、割と穏やかな住宅街ということもあり、優しく町に開いて溶け込むような設計をしてくださいました。

ふらっと立ち寄ってひと休みしたり、談笑したり。かつての平家にあった縁側を彷彿とさせるスペースがあったり。靴を脱いでくつろいでいただける、気心知れたお友達のお家に遊びに行ったような居心地のスペースがあったり。つい誰かと話し込みたくなったりひとりで読書に没頭したくなるようなスペースがあったり。

誰かと一緒に来ても、ひとりで来ても、"いらっしゃい!"と包み込んでくれるような構成に設計していただけて本当に嬉しい。そしてその意図を感じとってくださるお客様が多いのも嬉しい。
設計してくださったお二人とものほほんと柔らかい空気をまとっていて毎回穏やかな笑いが生まれる楽しい打ち合わせだったなぁ〜☺️

ちなみに工房はかつて私たちの子供部屋だったところに大移設。完成したのは母の命日でした、少し運命感じちゃって見守ってくれてるのかなぁと。

大きくなったなぁ。前の工房で1人きりで朝から深夜まで作業し続けた日々がちょっと夢の中の話みたい。不思議。いまはここでスタッフさんたちが一生懸命作業してくれていて、嬉しいし感謝だなぁ。。

でも多分死ぬまではっきり覚えてると思う。忙しすぎた日々は夢の中みたいに、本当にそんな日々あったっけ?って感じだけれど、かつてのこじんまりとした赤とピンクの工房も忘れられないなぁ。めちゃくちゃ良いイメチェンしたと思います☺️


▼内装
内装はなんと私の結婚式で司会をしてくださった方からのご縁でjulias roseのなつさんとdodo tokyoさんに携わっていただきました。結婚式の司会者さん(永吉美紀さん)とこんなに仲良くなるなんて、本当人の巡り合わせだよなぁと。一目見て話して、ピン!ときたり相性や波長や空気ががぴたっと合う人って不思議といるんだよなぁ。

シモキタシマイの近くに大きな緑道があったり、近隣にも植栽のある住居が多く、周りの緑豊かな雰囲気を店内にも引き込んで繋がりを持たせたいな〜という思いを元にスタート。

グリーンの内装のテーマは「シモキタパーク」
ヘーゼルナッツの木に豊かな葉っぱを絡ませて、下北沢感溢れる少しカオスで不思議な仕掛けのアクセントとして、実際に使っていた製菓器具やお菓子の型をガスバーナーで燻して吊り下げています。店内にいながらも木漏れ日の温もりが感じられるような空間。雨の日も素敵なんだよなぁ🥺


ホワイトの内装のテーマは「シュガーフォレスト」
白の世界。シモキタシマイ1周年に際して追加装飾していただきました。
白にも色んな種類があることを知ることになるのですが、植物の種類によって白い塗装をしても浮かび上がる色が全然違い、また光の入り具合によってもファンシーさがあったりダークさがあったり。色んな表情が所々に散らばっていて物凄く見入っちゃう。植物に潜む動物たちは私たちが一目惚れしたヤーンナカーンさんのオブジェ。
甘い香りに誘われて集まってきた、というなんとも可愛らしいストーリーが裏設定に。お砂糖も白いしね、シュガーフォレスト。ネーミングも可愛い。

なつさんは熱心に耳を傾けてくださって妄想がむくむく膨らむような夢見る時間を、dodoさんたちとはサウナ状態になるくらい笑いまくってハッピーオーラびしばし!!な打ち合わせでこれまた楽しい☺️作業中のガッと集中モードに入ってもくもくと作業してくださる背中、かっこよかったなぁ。朝から取り掛かって完成したのはAM3時。細部までこだわってくださってモノはもちろん熱意も嬉しい。

大好きなひとたちばかりで出来上がったシモキタシマイ、いい空間でしかない。
でも身内ノリで盛り上がって終わり、じゃなくてちゃんとシモキタシマイのお料理やお菓子、空間に共感してくださる人を沢山巻き込めていることが嬉しい。Instagramも数字じゃないけどさ、沢山共感者がいるようでやっぱり増えていくことは嬉しい。

❺店内BGM
これはJASR◯C的にドグレーなのであれですが、私たちの好きな曲、といってもジャンルは多岐にわたっちゃうのでいわゆるカフェで流れていて馴染むもの。でありながらも異世界感があったりちょっと中二病心や甘酸っぱい青春心をくすぐられるような歌詞、旋律のものを流しています。ってこんな陳腐な言葉ではとても表しきれないので純粋に私たちが好きな曲、なのですが☺️

そして!なんといっても!シモキタシマイのテーマソング!ポップしなないで様に提供していただいた!『Hello,My sister』!!シモキタシマイの店内で30分に1回は流れる、あの曲です。

私たちがワーワー好きな音楽の要素を伝えてたらポンっと最強な1曲が送られてきたのです。もはやドラえもんワールド。

デモもすっごく可愛くて今でも時々聞くのですが、なんか古き良きカフェにあるインテリアとして置かれて何年も弾かれていないようなピアノをたまたま開いて弾いたら、みたいな懐かしさがあるピアノの旋律とふわっと柔らかいかめがいさんの声に軽やかなドラムで凄くいいんです。少しだけ歌詞とメロディーが違ったり歌い回しが違うところがあってデモ版も凄くいいの。

そうそうデモ曲は丁度お墓参りに行く前日に届いて、すぐ聞きたくて仕方がなかったんだけれどお墓参りまで我慢しようってなって(謎)、超晴天の中お墓の前で爆音で聞いたんだよな〜あれは感動したし全部何もかも頑張ろうって思えたし気持ち的にスーパーサイア人!キラカード!無敵モード!ってなった。最強になれる曲だよね。

で、これがデモって一体これ以上どうなっちゃうの???と超疑問だったのですが完成版もすっっごく良くて。

ミツビシさんの編曲が入って、メロディアス(って合ってる?)なギターの旋律が加わったり、かめがいさんの歌も自分に語りかけるようなふわっと優しいものから、聞いてる人を巻き込むようなのびのびと表情豊かなものに変わって(どちらも良いのはいわずもがな)、とにかく凄!!!!!と感激しました。
しかも僭越ながら、ハローマイシスター♪のところはコーラスに参加させてくださって、感激だよね。わがままをどこまでも聞いていただき。

とめさんに監督撮影をしていただき、MVまで作らせていただきました。とめさん私も同い年くらいだった気がするんだけど凄いよなぁ本当に。出来上がるまで、どういう構成なのか全く私たちには理解が及ばなかったんだけど、というか理解する必要がないよね、相手プロなんだからおまかせで。カチッと緊張する場面は一瞬もなく、和やかにゆるっと楽しく時間を過ごしていたらとんでもないMVが出来上がっていました。

ホームビデオ感ある優しい空気が終始漂っていて、一軒家を改装したカフェの雰囲気が取り込まれた世界に、かわむらさんとかめがいさんも住んでるかのように出演していただき、最高に可愛いMVを作っていただきました🥺この頃ひろちゃん5ヶ月くらいだったと思うんだけどひろちゃんが映ってるというのも成長記録っぽくて母的には涙誘われてしまう。
個人的にかわむらさんがヤンキーみたいにぐるぐるしてるところがちょっと頑張ってる感があって都会ヤンキーのひ弱な感じがでていて可愛いのと、下北沢駅前でキョロキョロするかめがいさんが可愛いし背景もアイアムアヒーロー感があってツボです。


わーめちゃくちゃ書いちゃった。7000文字越え。でもいいんだ、記憶が曖昧になってしまう前に分かりやすい形で留めて起きたかったから。
こうやっていっぱい書きたくなっちゃうくらい思い入れの強いお店が出来たって。出来たってことだけでも嬉しくて、これに共感してくださる方が沢山増えていって。私たちの人生は最高だな☺️

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