見出し画像

雲に溶けたラムネ

もうすぐ3歳になる友人の子どもから、ゲームセンターでとった「ヨーグルトラムネ」を貰った。
すごく懐かしい駄菓子のラムネ。嬉しくて文章に残しておきたくなった。


白くてツヤツヤした丸いラムネ。
こうやって写真に撮るとちょっと怪しいものに見えてしまうから面白い。

まるで真珠みたいな質感。こんなにツルツルしたものだっただろうか。ラムネのお菓子は種類が多いし、もしかするとこれは初めましてのラムネかもしれない。
口に入れると、カチャカチャと軽い音がする。この軽さが駄菓子らしくて可愛いし、不思議と少しホッとする。
そしてかたい。舐めてもあまり味がしないから嚙み砕きたいのに、すごくかたくてなかなか出来ない。石のようだ。川の下流にこんな丸い石がたまに転がってるよな、なんてふと思った。これを子どもが食べるとは、子どもって意外に噛む力が強い。

噛む力だけでなく、子どもは意外と力が強い。
手を繋ぐ力も強いし、歩く速さも思った以上に速い。こっちの手をむんずと掴んでぐんぐん進む。
エネルギーとパワーがあり余っている存在だ。見くびってはいけないなと思う。

大人になり、子どもは守るべき宝物のような存在だと実感する瞬間が何度もあった。その瞬間を積み重ねることで、自然と子どもを弱い存在というくくりにまとめてしまっている自分に気がついた。
確かに小さいし、目を離すと危険なことをして怪我をしたり溺れたり、命の危機がすぐ傍にある存在だ。けれど弱くはない。弱いけど、弱くない。小さい体のなかに宇宙みたいなエネルギーを秘めている。

ヨーグルトラムネをくれた子どもの母親である友人とは、かれこれ17年の付き合いだ。
草原に咲くシロツメクサみたいな楚々とした姿だが内にシロオニタケを隠し持っている、みたいな面白い人だ。(シロオニタケはトゲトゲがついた猛毒性の白いキノコである)

ここ最近は、母親になり、社会人としてもひとりの人間としても大きくなり、幾分かシロオニタケが磨かれて丸くなってきたように感じる。
そう、ちょうど今食べた真っ白でツヤツヤのヨーグルトラムネみたいに。噛み砕こうとしてもなかなできない。丸くはなったけど、核の部分は強い人なのだ。

白い雲ばかりの明るい空にラムネをかざすと、光を浴びより一層白く発光して、雲に溶けたように見えた。
その向こうに友人と彼女の子どもを思い浮かべる。
互いに環境が変わっても、出会った10代の頃のように、まっさらな気持ちで話せることがありがたい。彼女の子どもも加わって、最近は少し賑やかになったことも。
今目の前に広がる白い雲みたいに明るいところを、これからも皆で歩いていけたらいいと願ったりした。

この記事が参加している募集

#休日のすごし方

54,478件

#今日やったこと

30,962件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?