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滑稽な選択

ある日、父が働いている職場に、煮ても焼いても食えない様な変な上司がやって来ました。

皆、この上司の取り扱いに苦慮。

職場のトップだから、事態は深刻。

責任を取りたくなくて、書類にハンコを押さず、重要な仕事が滞っていました…。

こんな時、呼ばれるのは父。

「あの人、何とかしてください…」

父の取った作戦。

この上司に対して、徹底的に本音で喋るというもの。

皆、このトップを恐れて、やたらと媚びるか近寄らないかのどちらかでした。

とぼけた顔が幸いしてか(笑)、父が辛辣な事を言っても、あまり険悪なムードにはなりません。

無謀にも、父は彼に言い放ちました。

「私、あなたの事、キライですから🎵」

かわいい(?)顔をして、想像もできない様な事を言う父に新鮮さでも感じたのでしょうか?

以後、このトップとの滑稽な関係が始まります。

気が付けば、溜まっていた書類は、いつの間にか無くなっていました。

職員達は、大喜び。

トップが、父に尋ねます。

「おまえ、アレ(書類)、どうしたんだ?」

すると…。

「○○さん、それね、ひ・み・つ!」

なんとも、人を食った様な感じの父。

これに対して、トップはニャっと笑ながら言いました。

「ウソつき!」

父は、覚悟していました。

クビになっても仕方ないと。

トップはその後、父の行動を黙って容認。

また、ある日のこと。

「○○さん、忘年会の挨拶をお願いします!」

父が、トップにそう、言ったところ。

「おまえがやれ!」と言われ…。

「は~い、○○さん!」と回答。

ところが…。

いざ、忘年会が始まってみると。

マイクを握った父が、言いました。

「○○さん、挨拶をお願いします!」

意外にも、抵抗せずに挨拶を始めたトップ。

しかし、何故か嫌われない父。

しばらく、トップの前に現れないと…。

「おまえ、何で3日もオレの部屋にやって来なかったんだ?」

そう、尋ねられる始末。

「○○さん、用も無いのに、来たりしませんよ!」

こんな調子の父。

「変な人間に対しては、それなりの対応があると!」

「皆、まともに接して上手く行かんかったんやろ~?」

まあ、それもそうなのですが…。

様々な人生経験が、選択肢の幅を広げるのでした(笑)。


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