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ばあちゃんのこだわり

ある日、母方のばあちゃんが、当時小学生の私に尋ねました。

「お母さんは、お父さんの頭のことをちゃんと考えとるんか?」

とても、真剣な顔をしていました。

「頭って、何のこと?」と尋ねる私。

「カツラのことやないか!」とばあちゃん。

早速、母に確認してみる私(笑)。

「なんやて!あの人、そんなくだらんこと言うとるんか?」

「自分の夫や息子がハゲたから、そんなこと言うとるんやろ!」

「世間体ばっかり気にしくさって!」

「大体、そんなもん被らせるなんて可哀想やないか!」

「蒸れたら、どうすんねん!」と母。

早速、ばあちゃんに「お母さんは、お父さんのカツラのことは考えてないらしいで!」と報告したところ、何故か怒り出すばあちゃん。

「なんと、のんきなことか!お父さん、いつハゲるかわからんやろう!」

「今から準備しとかんでどうするんや!」

そこで、私が言います。「でも、じいちゃんはカツラ被ってないでー!」

「だから、ばあちゃんは、恥ずかしいんよ!」

「お父さんがカツラを被らんと、あんたら(母と私)も恥ずかしいやろ?」とばあちゃん。

「・・・」ばあちゃんの気迫に押され、返す言葉もありません。

夫のカツラを用意するのは、妻の仕事なのでしょうか?

幼心に、「奥さんって大変なのね!」と思った私(笑)。

それからしばらく、父の頭を観察するのですが、どうやらばあちゃんの心配は、杞憂に終わりそうなのでした。

「お父さん、ハゲへんな~」ばあちゃんの観察も続きます(笑)。

「別に、どっちでもええやないか!ハゲようが(カツラなしで)堂々と生きて行ったらええんじゃい!」と母。

皆の心配(?)をよそに、まるで他人事のような父。相変わらず、飄々としています。

「お父さんは、なんか(髪が無くなること)、期待されとるんか?」と父。

どうやら、周りの怪しい動きには気が付いているようなのでした(笑)。


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