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A Rolling Stone

『ことばと文化』(鈴木孝夫、岩波新書)を読んでる。言葉に興味を持った人のための入門書らしい。

本の中で、ある英語の諺が引用されている。

“A rolling stone gathers no moss.”
日本語訳で「転石苔を生ぜず」。

この諺はイギリスとアメリカでは異なる解釈がされていて、
鈴木先生は、「外国のことばや表現を、無意識のうちに自分の文化のコンテクストにおいて解釈してしまう傾向が、いかに強いものか」をこれを用いて示している。

Concise Oxford Dictionaryによれば《one who constantly changes his place or employment will not grow rich》と説明されている。「石の上にも3年」の反対をいましめたものだろう。

ところが、この諺をアメリカでは正反対の意味にとる人がいることが分かっている。(中略)これは、《If you keep on moving, you will not get rusty》の意味だと説明してくれた。
(本文より抜粋)

同言語の諺でも、その言語が使われる国の風土、文化により異なった解釈が生まれている。

イギリスと言えば「組織」、もしくは「組織化」が浮かぶ。

産業革命期の会社、海軍組織など、歴史的に見ても堅固な組織や秩序を作りあげ、その能力に長けているイギリスでは、A rolling stone with no mossが否定的な意味を持つのは納得する。

一方で、アメリカではそれが肯定的に捉えられていることは、私たちが一般に考えるアメリカをイメージすれば、その理由はわりと容易に見えてくると思う。自由、転職。

私見だけど、長い歴史を積み重ねてきた結果としての国とは言いがたい、アメリカという固有の国の在り方にも起因してるのかも。

ことばが、いかにその国、地域固有の文化の「かくれた構造」によって捉えられているかがわかる。

A rolling stoneと聞くと、ボブ・ディランの“Like A Rolling Stone”を思い出さずにはいられない。

裕福だった女性の転落人生。
歌詞だけを見るとけっこう暗い印象を受ける。

それなのに、軽快な音楽、韻の踏み方によって歌全体から楽観的な雰囲気が伝わってくる。

もしかしたら

富裕層を批判しつつも、ボブ・ディランの中にあるアメリカ的なものが、歌の中に少しの希望を潜ませたのかもしれない。

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