ロシアにとっては「切り札」というよりは「勝負手」

■プーチンは本当に“核兵器”を使うのか 筑波大学名誉教授が解説「可能性は51%」「撃つ場所は“放射能汚染の被害が及ぶ”風向きをみる」
(週刊女性PRIME - 10月18日 06:10)
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巷間では「プーチン氏の核攻撃示唆」を「切り札をちらつかせている」と表現しているが、私からすれば「勝負手」のほうがしっくりくる。

切り札=トランプなどのカードゲーム、主にトリックテイキングゲーむにおいて、最も強い札のことである。

勝負手=形勢の悪い側が、相手に間違えてもらうことで形勢を良くしようとする手。
ほとんどの場合、最善手ではないため、正確に応じられてしまうと負けを早めてしまうが、逆転するための勝負術の1つとなっている。

核攻撃はたしかに「最も強い札」かもしれないが、ロシアの「形勢の悪さ」を踏まえていない。また「その後の展開の味の悪さ」まで含めると「勝負手」のほうがしっくりくる。米国やNATOにとってならば「切り札」と言えるだろう。

国際的な約束事を破り侵略行為を行うプーチン氏が合理的判断のみならず、非合理的判断をする可能性は考慮する必要があるし、無視することはできない。なにせ「ジリ貧で不利な側」は一発逆転の勝負手に頼りたくなるのはよくわかる。一方で「認識している範囲で考慮した上で、一番メリットを増やせる、あるいはデメリットを減らせる選択肢をとる合理性というのは賢者のみならず愚者や動物でも共通している。

ウクライナがロシア本土(クリミア侵略前)を攻撃しない意味がここにある。お互いに最大限に強い対応を用いたが最後、ブラフ合戦が効かなくなり、体力勝負の消耗戦、泥仕合になることは確定だ。たとえば「拷問した上での死刑」より上の刑罰がなければそれ以上は抑止力にならないのだ。

そして、そうなるとロシアに勝ち目はない。じゃあウクライナやそれに味方する側がなぜそれを選ばないかと言えば「勝ち負け」ではなく「損害の最小化」に拘泥しているからに過ぎない。

プーチン氏が勝負手を実らせるためには「相手に応手を間違えてもらう必要」がある。
相手に間違えてもらうためには、相手の選択肢を増やすのが原則である。

将棋で言えば、駒取りを複数の箇所で発生させたり、受けるべき局面で思い切って攻めたりすると、相手は正解手順以外を読む必要に駆られる。そして、肝心の正解手順を読む時間が無くなり、焦ったり迷ったりしてくれれば、間違えてくれることが期待できる。このあたりは「不利な時は局面御複雑化を図り、戦線を拡大する」という格言にも通じるところだ。

プーチン氏がどの程度まで考慮するかは不明だが、核を用いるのではなく、ちらつかせる効果で最大限に引っ張り、相手側がミスをしやすいタイミングを見計らって用いようとしているのだろう。

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。