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あなたは配達人になりますかー。映画「長崎の郵便配達」が8月5日から公開

編集部のお蝶さんです!

これまで、たくさんの原爆にまつわる物語に触れてきました。映画だけでなくアニメや小説、漫画、新聞記事の連載、被爆者の証言や私の亡くなった祖父母の話…。戦後77年たって、その蓄積をどう生かすのかが問われているように感じます。悲惨で不条理な話を掘り起こし、「2度と繰り返さない」と口にはするけれど、それらの物語を私たちは消費して終わらせてしまってはいないか。そんなことを思いつつ、広島市の八丁座で開かれた映画「長崎の郵便配達」(川瀬美香監督)の試写会に参加しました。映画は8月5日から全国公開されます。

©️The Postman from Nagasaki Film Partners ©︎坂本肖美

この映画を見る前に、少し勉強をして予備知識を得た方がいいかもしれません。主人公ともいえるピーター・タウンゼンドさんは、第2次世界大戦中に英国空軍のパイロットとして活躍し、英雄視された人。戦後はエリザベス女王の妹であるマーガレット王女との恋愛と破局で有名になり、映画「ローマの休日」のモチーフになったといわれています。その後はジャーナリストとなり、長崎の被爆者である谷口稜嘩(すみてる)さんを取材して1984年にノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を発表しました。

©️The Postman from Nagasaki Film Partners  

もう一人の主人公である谷口さんを、私は有名な報道写真でよく知っています。真っ赤に焼けただれた背中をカメラにさらし、横たわっているあの少年です。郵便配達の仕事をしていた谷口さんは16歳で被爆。大やけどから奇跡的に生還し、生涯を核兵器廃絶運動にささげました。

 ©️The Postman from Nagasaki Film Partners   ©︎坂本肖美

今は亡き2人の交流を、タウンゼンドさんの娘イザベルさんが長崎の地でたどりました。その姿を追ったのが、この映画です。イザベルさんは父の取材テープに導かれるように、長崎で谷口さんの家族や父の通訳を務めた人を訪ねていきます。

©️The Postman from Nagasaki Film Partners  ©︎坂本肖美

上映後、川瀬監督と作品を応援している俳優の由美かおるさん能楽師の大倉正之助さんが登壇して、トークを繰り広げました。「ピーターさんと谷口さん、主要な2人が不在のドキュメンタリー映画になりましたが、どこかにいらっしゃるような気がしませんか?」と川瀬監督。長崎の撮影現場では、イザベルさんに演出しないようにし、撮影日に会う人が誰かも事前に教えないようにして、自然なリアクションや言葉を引き出したそうです。

映画の舞台となった長崎県内では、地元の高校生が中心となって映画を全国に広げる活動を展開しています。「学生上映会」を主催し、その宣伝のための映像も作っていて、本格的な出来栄えです。

さらに、若い彼らはオリジナルのメッセージカードを作り、見た人たちに感想などをつづってもらう取り組みも監督に提案しました。カードは映画のウェブサイトに掲載したり、劇場で展示したりするそうです。

試写会でも配られたメッセージカード

長崎で父と谷口さんとの間に芽生えた友情に触れ、2人の思いを引き継ぐ決意をするイザベルさん。この物語を受け取った私たちも、「配達人」として何通の手紙を書けるのでしょうか。「長崎の郵便配達」を戦争や原爆にまつわる一つのエピソードとして、終わらせないために。

ポスタービジュアル ©️The Postman from Nagasaki Film Partners

監督・撮影:川瀬美香 構成・編集:大重裕二 音楽:明星/Akeboshi
エグゼクティブ・プロデューサー:柄澤哲夫 プロデューサー:イザベル・タウンゼンド、高田明男、坂本光正 プロダクション・アシスタント:坂本肖美
企画制作:ART TRUE FILM 製作:長崎の郵便配達製作パートナーズ
出演:イザベル・タウンゼンド、谷口稜曄、ピーター・タウンゼンド 
2021年/日本/日本語・英語・仏語/97分/4K/カラー/2.0ch/日本語字幕:小川政弘 フランス語翻訳:松本卓也
配給:ロングライド  ©️The Postman from Nagasaki Film Partners

(編集部・お蝶さん)



 

 


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