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境遇異なる2人の女性の成長物語~あのこは貴族

編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。

広島のまちなか映画館「八丁座」で、日本映画「あのこは貴族」を鑑賞しました。

八丁座

主役は東京生まれ東京育ちのお嬢様、榛原華子(門脇麦)。ある程度年齢を重ねたら「結婚するのが当たり前」と、何の疑いもなく生きていました。そして義兄の紹介で出会ったイケメンで家柄の良い弁護士、青木幸一郎(高良健吾)に一目惚れして結婚します。
もう一人の主役は、地方出身者の時岡美紀(水原希子)。猛勉強の末に一流大学に入りましたが、学費が払えずやむなく中退。東京であくせく働いています。
そんな別世界に住んでいる2人が、幸一郎を介して出会います。
接点のない2人が出会ったことで、微妙な心境の変化が起こり、思ってもいない人生へと、少しずつ少しずつ引き寄せられていきます。

格差社会が叫ばれている昨今、目には見えない階級差の分厚いベールは確実に存在します。
「なんだか居心地が悪い」「同じ言語を話しているのにうまく通じない」など感じたことのある人も多いのでは。
それは、さまざまな生活環境や親の考え方など多くの要素によりできた人物像の違いが大きく影響しているのでしょう。
でも「よく分からないけど、なんか違う気がする」と感じる心と向き合い、想像力を発揮することで、全く違う人生を歩むことができるかもしれません。
華子は、ある日、楽しそうに自転車で2人乗りする若者の姿が目にとまります。
日常のいくらでも転がっている風景を、今までは見ていなかった。いや、見えていなかった-。
彼女の階級のベールが溶けていく瞬間です。
目の前にあるものでも「見たい」と思わなければ「目に入らない」という無意識の行為。
岨手由貴子監督は、華子の心の変化に寄り添いながら、丁寧に物語を紡いでいきます。
固定概念を持って色眼鏡をかけて見る東京は、見る人によって全く違う顔を見せます。
余韻の残るラストシーンを見て、マスクの下の口角がキュッと上がるのを感じました。

【映画館豆知識】
大きなスクリーンで見られるのは、映画館ならではの醍醐味ですよね。
そのスクリーンには無数の小さな穴が開いているのをご存じですか。
実は、スピーカーはスクリーンの裏にもあるので、音が密閉されないよう小さな穴がたくさん開いているそうです。
なるほど、だから役者さんのセリフがまるで口から出ているかのように聞こえるのですね。

(編集部・エイミー)


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