3人の母が抱えるそれぞれの悩み~明日の食卓
編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」。
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。
「石橋ユウ」という同じ名前の10歳の少年を育てる3人の母親を軸に描いた映画「明日の食卓」(瀬々敬久監督/椰月美智子原作/124分)を見ました。
鑑賞映画館は「イオンシネマ広島西風新都」。フードとドリンクも充実です。
神奈川に住むフリーライター・石橋留美子(菅野美穂)は、2人の息子を育てながら忙しい日々を送っていました。カメラマンの夫は子どもたちの面倒は一切見ないけれど、子どもに甘い顔をする「いいとこどり育児」の毎日。そんな夫の無理解と兄弟げんかの絶えない生活に、疲労困ぱいする留美子の怒りの矛先は自然と長男である悠宇に向かっていきます。
シングルマザーの石橋加奈(高畑充希)は借金を抱えながら、コンビニや工場の仕事を掛け持ちして生計を立てていました。一番の楽しみは一人息子の勇と過ごす、わずかな時間。働き続ける母の大変さを理解する勇は甘えることもできず、良い子でいることしかできません。ある日、勇が一人で留守番中に加奈の弟が訪ねてきて通帳と印鑑を持っていってしまいます。帰宅した加奈に問い詰められた勇は、今までたまっていた思いをぶつけます。その言葉を聞いた加奈は思わず…。
専業主婦の石橋あすみ(尾野真千子)は、夫の実家の隣に建てたおしゃれな一軒家に住み、一人息子の優は皆の言うことをよく聞く優秀な子ども。全てがうまくいっていると思っていたあすみのもとに、突然一本の電話がかかります。息子の友達の母親が、優に自分の子どもが暴力をふるわれたと言うのです。これをきっかけに、幸せな家庭だったはずの石橋家の歯車が少しずつかみ合わなくなります。
年齢も住む場所も家庭環境も全く違う女性3人を主人公に据えることで、それぞれの悩みや喜びの違いが浮き彫りになります。その違いの対比をうまく利用した構成が、クライマックスに向けて徐々に効いてきます。演技派俳優の3人が演じる石橋さんは一生懸命子育てをする母親に血を通わせ、誰にでも起こりうることだという説得力のある作品に仕上がっています。そしてラストシーン。一回りも二回りも成長した彼女たちが見た景色は、どんなものだったのでしょうか。
【映画館の醍醐味】
外の世界と切り離された暗い空間に入ることで集中力が増します。また上質な映画ほど、鑑賞者の息遣いや感情を受け止めることができ、一つのものを共有ししている一体感があります。
(編集部・エイミー)
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