見出し画像

介護の人材紹介の仕事から実際に特養で3年働いてみて

はあ、と物憂げにため息をついているところに通りかかる。思わず、「どうされました?」と声をかける。「一世紀も生きると疲れます。」との返事。一世紀生きた疲労とはどれほどのものなんだろう、と想像してわからなくなる。

白い天井を指差しながら「ご覧なさい。あそこに自分で手と足を縛った人間が吊るされています。」と教えてくれる。私には見えなかったけど気になったから「なんでですかね?」と聞いてみる。「人間の愚かさのあらわれです。」とその人は答える。

「天寿とは 昼寝のような 御姿」という俳句を教えてくれた人が、いつものようにおやすみなさい、と寝たまま目を覚ますことがなかった。気持ちよく寝たまま死ねたら1番いい、と言っていたが、そうであったらいいな、と思う。

私が働いていた特別養護老人ホームの一コマです。切り取りたい、大好きな場面がたくさんある。

介護の仕事をはじめて、3年ちょっと経ちました。新卒で入った医療介護の人材紹介の仕事を「自分の経験と言葉で介護の魅力を伝えられる人になりたいんです、だから介護の仕事をさせてください!!」とある日突然辞めまして。

その選択を正解にしたくて、がむしゃらに働いてきたわけですが、自分の選択は正しかったなあ、と心の底から思います。辞めちゃったけと、新卒で営業の仕事を選んだことも含めて。

そして特養を去る今、改めて考えるわけです。
介護の魅力とはなんなのか?

介護の魅力について3つにまとめました!みたいな記事を書こうと思ってもうだいぶ経つんだけど、全然書けない。

ので、働いてみたリアルな感想をダラダラ書かせていただきます。


①わたしの仕事の楽しさ
想像通り、介護の仕事は肉体労働でもあります。体力は必要だし、体の使い方だって大切。ウルトラスーパー運動音痴なので、最初は移乗とか苦労しましたが、まあなんとかなったと思っています。ただ体を使うだけじゃなくて、一緒に頭も使うから面白い、というか。

日々のケアや観察を積み重ねていく中で、この人はただ怒ってるだけじゃなくて、トイレに行きたくてソワソワしていたんだなあ、とわかったり。研修で学んだことを活かして排便を促せたり。体位交換、口腔ケアを積み重ねて綺麗な身体で最期を見届けられたり。

ほんとに些細なことだけど、小さな思考の積み重ねで、暮らしを少しよくできる感じが楽しい。

ちなみに仕事に慣れてきたなあ、と感じる時はちょうどいい羽織を着せてあげれたり、スミルスチックを一発で求めてた場所に塗れた時とか、かなあ。歯痒いところに手が届いた時は嬉しい。

②わたしの職場
いろんな人がいる職場だと思う。万年人手不足な業界なので、採用ハードルはそこまで高くないからこそ、いろんな人が入ってきやすい、と思っている。外国籍の方もたくさんいる。インドネシア、ベトナム、フィリピン、ロシア、タイ、中国、など。
いろんな人がいるからこそ、いろんな視点が生まれて、面白いと思う。
いろんな人がいるからこそ、大変だと思うこともたくさんある。

入居者の24時間365日の暮らしをつくっている。もちろん、1人では不可能だ。だから交代で繋いでいく。誰かから仕事を引き継いで、そして自分も引き継ぐ。思ったよりも他人の仕事が自分の仕事に影響を及ぼす。逆も然りなので、プレッシャーでもある。良いパスをせねば。

GWもお盆も年末年始も関係ない。寝たり起きたり食べたり排泄したりするのは休みとかないからね。誰かが必ずケアをしている。

誰かの仕事が終わらなかったら、誰かがその仕事を拾う。誰かが休めば、誰かが埋める。フォローし合ってます⭐︎と言っちゃえばシンプルだけど、実際そんなシンプルでもない。なんで私がいつも、みたいな不満や不平等感に繋がりやすい。

繰り返すけど、いろんな人がいる職場だと思う。人材不足が叫ばれる中で、多くの人を必要としている職場でもあると思う。多くの人を必要とするとき、みんながみんな仕事はすぐに完璧で夜勤もできて体調も絶対崩さず日本語がペラペラ、というのは中々難しい。人がいないとケアは提供できない。リモートでオムツ交換できたらな、と思ったことは何度もある。

お子さんの都合で突発的に休まないといけないことがある人、仕事を覚えるまでに時間がかかる人、日本語を理解するのに時間がかかる人。急な欠勤に対応できる人員体制、手厚い研修とフォローできる環境、優しい日本語と伝わってるかの確認もこめた丁寧なコミュニケーション。人も欲しいし、人を育てる余裕もいる。悩ましい。

前職で「うちにはそんな余裕がないから即戦力だけ欲しい」という事業所とたくさん出会ったけど、今ならもっと共感できる。けど、今でも思う。そんな人は、中々いない。

もちろん全員に適性があるわけだとは思えないし、どうしても無理な人はいる。その中でできるだけ多くの人と一緒に働けるようになるにはどうしたらいいんだろう?を特にリーダーになってからずっと考えてたし、上手くいかなかったなあと思うけど、諦めたくないなあと思っている。

介護そのものについてより、働く人についての話が多くなってしまいました、、、。すみません。
介護の魅力をわかってもらうことと同じかそれ以上に、魅力だと思い続けることは難しいのかもしれないなあ、というのがリアルな今の感想なのかもしれません。

誤って歯を飲み込んでしまった人の歯が、排便と一緒に出てきた時、みんなで感動したり、その記録をみたご家族が「おかえりなさい」というコメントをしてくださったり。この現場に来なければ、こういう面白さとは出会えなかっただろうなあ。


「あなたは上に行きたいと上を向きでもなく、だからといって下を向くわけではなく、いつでもひたむきだった。私にはそれがよくわかりました。次は自分の身体を大事にしなさい。自分の代わりは誰もいないのだから。」

出会った入居者に言われた、おまじないのような言葉です。

3年ちょっとのぺーぺーがいろいろ書いてきましたが、ちゃんと魅力が伝えられるようにひたむきに精進していこうと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?