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イライラ文学館/頭木弘樹(編)





図書館から借りてきた頭木弘樹さん編集のアンソロジー
「イライラ文学館」を拝読しました📖´-
(2024,5,31 読了)



”不安や怒りで爆発しそうなときのための9つの物語”と副題にあるように頭木弘樹さんの編集のもと、不安やイライラを身体感覚で共感できるような物語が収録されています。

「心臓に悪い/筒井康隆」
「剃刀(かみそり)/志賀直哉」
「ねむい/アントン・チェーホフ」
「ボーモンがはじめての痛みを経験した日/ル・クレジオ」
「病褥(びょうじょく)の幻想/谷崎潤一郎」
「掻痒記(そうようき)/内田百閒」
「当面人間/ソ・ユミ」
「わけもなく楽しくて…!?の巻/土田よしこ」
「ムシムシイライラの巻/土田よしこ」



錚々たるメンバーでしょ。
しかし、自分が不安や怒りで爆発しそうなとにになぜあえて不安やイライラが描かれているものを読まねばならんのかと始めは思ったのですが、拝読するうちに頭木弘樹さんの意図がなんとなく見えてきました。



自分ではない誰かの不安やイライラを読んでいるといつの間にか自分の不安やイライラが薄れています。荒療治することで自分の身に渦巻いている不安やイライラがデトックスされていくのかなと。


体がしんどいのにわかってもらえない不安やイライラ、体がしんどかったり、どうしようもない睡魔でもう最後はどうにでもなれという投げやりな気持ち、歯痛のどうしようもない苦しみ、精神的ストレスに打ちのめされていく感じ…
どれも共感できるものばかり。
そんな日常の不安やイライラを文豪が描くとこんなに壮大なものになるのかという驚きもありました。


「心臓に悪い/筒井康隆」と「当面人間/ソ・ユミ」の二話が特に好きでした。好きというのはちょっと違うような気もしますが、ともかく特に印象に残りました。


「心臓に悪い/筒井康隆」を拝読し始めは、私が仕事中に転倒して膝を捻挫したとき、家族はそれなりに心配してくれましたが、仕事場の人たちはさほど心配もしてくれず、早く仕事復帰してという空気感。そんな職場にしがみついているしかない自分へのイライラを思い出しました。
最後、主人公のように本末転倒になるのは嫌だ、人に共感してもらって安心感を得ようなんて考えは良くないなって。自分は自分で守らねば。



「当面人間/ソ・ユミ」は、本書が初の邦訳だそうです。
精神的ストレスからガチガチにひび割れていく人とぶよぶよに溶けてしまう人。
私はきっとガチガチにひび割れていく人。
拝読しながら自身に危機感を覚えました。私もうひび割れる寸前かもしれない。そうなる前になんとか対策して心を潤してはいるものの、それはきっと一時的な処置でしかありません。
まだ人間でいられる間になんとかしないとぉ〜。




荒療治のデトックス、案外いいかもこれ。
第三者の目で人のイライラを見て気づくこともあるし、自分事として心身ともに共感することで気づくこともあります。


頭木弘樹さんの著書は今回初でしたが、実は一冊積読しているものがあるので、そちらも早く拝読したいです。
本書は私が遅読過ぎて二話拝読できないまま返却せねばでしたが、拝読できなかった二話も折を見て拝読しようと思います。








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