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保険日誌 第9回 3.11 & 4.14

​​​​​​3.11
4.14

皆様には、この3桁の数字はただの数字に見えますでしょうか??

この3桁の数字は、損害保険会社に勤める者にとっては特別な意味を持ちます。

2011年(平成23年)3月11日 東北地方太平洋沖地震による災害が発生しました。また、これに伴い福島第一原子力発電所事故による災害も発生しました。
2016年(平成28年)4月14日 熊本県・大分県で相次いだ地震が発生しました。震度7が記録されています。政令指定都市で震度6弱をより大きな地震は、東日本大震災以来5年ぶりでした。


3.11(サンイチイチ)での直接的な被害額は、16兆円から25兆円と日本政府は資産しています。
この額は、被害が大きかった岩手。宮城・福島の3件の県内総生産の合計に匹敵するそうです。
直接的な被害だけでこれだけの損害が発生しています。風評被害、キャンセル被害、労働力人口の流出など間接損害まで含めると、、、被害の甚大さが改めて実感できます。

3.11の死者数は、2018年9月9日時点で、15,895人、行方不明者は2,539人であると警察庁が発表しています。

4.14の被害総額は4.6兆円、死者数は、2018年2月14日時点で、258人、行方不明者は0人とされています。

私は、上記2つの震災後間もなく、被災地へ業務として赴いています。

地震保険の査定を迅速に進め、被災したお客様にいち早く保険金をお支払いするために、大規模自然災害が発生した場合には、全国から損保社員&鑑定人が被災地入りをして、一軒一軒家をまわり、被災状況を確認しています。

本日は、熊本自身発生の1週間後に現地入りして、被災地の現状を目の当たりにして、個人的に感じたことを本日は書きたいと思います。(北海道胆振東部地震のブラックアウトも体験しており、それはまたの機会に書かせていただきます。思い出すだけでも怖かった、不便だった。。)

最初に申し上げておくと、SFが現実になったかのような最新技術があるんでしょ?とハードルが上がってしまっている人はたいくつさせてしまうかもしれません。

損害保険会社各社が今後のリスクにどう備えるかとか、システムをどう構築するか、査定にドローンを使うとかの大きな話ではなくて、もう少しスケールの小さい話(所感)をお伝えしたいなと思います。


本日のテーマ
1.大規模地震発生、損害保険会社社員はどうする?
2.熊本へ向かうも、公共機関がマヒ。現地入りするまでが大変
3.損保社員(被災地派遣時)の一日
4.地震保険の査定とはどんなもの?
5.熊本地震、最大の被災地、益城地区での家屋査定は大変だった
6.地震保険の普及に向けた取り組み


1.大規模地震発生、損害保険会社社員はどうする?

大地震が発生(おそらく次は南海トラフ?)!損害保険会社はすぐに、震災対策室(被災地+本社)を立ち上げます。被災地の最新の情報収集に努め、支援者=現地派遣者の宿泊施設の確保、被災地を回るためのタクシー、レンタカーの確保に奔走します。

その他、スマホ、ヘルメット、軍手、非常食の確保に着手します。平行して、一級建築士などを配する鑑定会社各社へ、自社の損害査定の業務委託依頼をする=鑑定人を確保する。等々 必要な手配が山のようにあり、かつ他社に先をこされないようにスピード最優先で、震災発生の当日には完了させなければいけません。

スピード勝負と言うのは、他の保険会社はもちろんとして電気、ガスなどのインフラ会社も同様に被災地入りをするために同じ手配をするので、出遅れると現地派遣の態勢が整えられず、被災地支援業務がストップしてしまいますので、コスト度外視でヒト・モノをおさえていくことになります。

被災地へ社員&鑑定人を送り込める最低限の環境が揃ったら、全国各地のブロックから数名ずつ若手(男性)社員が被災地へ向かいます。熊本地震の時は、北は北海道から、南は沖縄から社員が集まっていました。


2.熊本へ向かうも、公共機関がマヒ。現地入りするまでが大変

熊本空港が、地震発生後に閉鎖されていたニュースが記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。私が、震災発生後、1週間ほどで熊本空港が営業再開するや否や、わたしは熊本入りしました。

その時の熊本空港は、壁は亀裂が走り、ガラス片も床に落ちていて立ち入りを禁止する黄色いテープが至る所に貼られている状況で、今また大きな余震が来たら、大丈夫なのかな?と心配になったのを覚えています。

空港から熊本市街まではバスが運行しており、1時間以上かけて、おそらく震災前より遠回りをして、目的地に着きました。熊本は初めて訪れましたが、傾いた家、倒壊した家、ガラスの割れた家、陥没した道路、傾いた道路標識、お店は全店舗が閉店(ガスがつかないので)といった状況でした。

現地に到着した時に感じたのは、東日本の時と同じでした。怖さもあるのですが、大変な思いをしている被災地の方々のために、一日も早い復興のために、支援を頑張ろうとの気持ちで満たされます。


3.損保社員(被災地派遣時)の一日

概ね、8~10日連続勤務となります。週5日勤務の会社なので、支援終了したら、翌月までに休日出勤分は振替休暇を取得することになります。

1日の流れは震災対策室に8時ごろ出社し18時までに勤務終了となります。日中は、タクシー運転手またはレンタカー会社の従業員に車を運転してもらい、3~5軒の家屋・家財の損害を査定してまわります。自分で運転しないのか?と思われるかもしれませんが、土地勘がない不慣れな土地で、しかも陥没箇所多数で障害物多数の道路で運転して、事故を起こすリスク回避が優先されます。また、車両で移動中に査定した家屋のレポート作成をしたり、次の現場で使う資料の用意をして(車酔いしながら作っている)ので結構しんどいです。

1日の業務が終わったら、当初はガスが止まっていたこともあり、飲食店がやっていないので、コンビニのおにぎりを朝昼晩食べていました。野菜がとれず、身体が野菜を欲するサインをだしたりし始めます。

支援後半には、ガスが開通し、飲食店が次第に営業再開しだして、おやじさんが散らかった室内を掃除しながら作ってくれた熊本ラーメンがおいしかったなというのが良い思い出です。

通勤、宿泊についても結構大変です。(布団で寝られるだけありがたいですが)宿泊先は、被災地対策室から、電車とバスを乗り継いで2時間半かかる福岡の宿泊施設でした。そこしか、確保できなかったようです。スピード勝負と冒頭申し上げましたが先を越されたのかもしれません。

そこでは、20人ほどのメンバーが雑魚寝(ざこね)で、帰ったら即寝る、朝5時起床の日々が続き、私は10日間の支援で、2kg痩せました。

※ダイエット効果は個人の感想です

4.地震保険の査定とはどんなもの?

2つだけ知っていればOKかと思います。


①全損・大半損・小半損・一部損の4種類に分類される。

それぞれ、100%。60%・30%・5%のお支払がされます。


②基礎、外壁、屋根、柱の4項目を主に、保険会社は査定します。(ツーバイフォー工法、鉄筋除く)
✔基礎に、ひび割れ(クラック)が何か所にあるか?
✔外壁にひび割れがどのくらいの面積あるか?
✔屋根が落ちているのはどの範囲か?
✔柱が傾いていたり、ひび割れしているか?

基本的に、何か所ひび割れがあるか、損害範囲は何㎡かという査定をしていく仕組みなので、一級建築士のような資格を持っていない損保社員&鑑定人でも査定ができる仕組みです。査定方法については、これ以上書くと混乱させてしまうと思うので、概要のみを書き記します。つまりは実損額の査定をしているのではなく、損害発生個所(数、面積、程度)を確認しているのです。


5.熊本地震、最大の被災地、益城地区での家屋査定は大変だった

連日、マスコミ報道されていた益城地区(ましきちく)をまわる際は大変でした。地元のレンタカー会社のお兄さんに車両を運転して貰い、家をみてまわりましたが、陥没だらけで、徐行程度の速度しか出せず、なかなか次の目的地にたどり着けませんでした。時間がとてもかかりました。

益城地区には、マスコミ関係者も行政関係者も自衛隊の方も、インフラの水道、ガス、電気会社の人も、我々損保会社の人もヘルメットをかぶって、必死に図面を書いたり、寸法を測ったり、電卓をたたいたり、業務をしていて、すれ違う時にお疲れ様ですと声をかけあったのが印象的でした。みんな、被災地のためにも一日でも早く、自分のできることをしようとしていました。


6.地震保険の普及に向けた取り組み

2007年には、45%ほどであった地震保険の付帯率は、2016年には60%を超えているようです。2つの大震災が加入を後押ししたことは明白かと思います。

出典:保険毎日新聞 2018年3月9日 6面


地震大国日本、南海トラフが30年内に来るのがわかっている日本で…。
地震保険で備える。悪い選択ではないように思えます。
地震保険は思った以上に早く受け取れます(復興の足掛かりのための保険ですので当然ですが)

未加入の方は検討してみてはいかがでしょうか。

終わりに

東日本大震災も熊本自身も、その後の大阪地震も自身が被災した北海道地震も、、みんなよく覚えています。

保険会社にとって事故=保険金支払対象事故は毎日発生します。

でも、大震災は特別です。

余震も砂埃も、救急車両のサイレンの音も、コンビニのおにぎりが食べられるだけでもありがたいと感じられる幸福感も、みんな五感に刻まれています。

大震災が起きて、被災した皆様の近くに保険会社の社員もいます。

自衛隊やボランティアの皆様の活動がマスコミで取り上げられることが多いですが、保険会社も電気会社もガス会社も、そしてすべての被災地の復興を願い集まっています。

被災したら孤独や不安を感じると思いますが、もう少しの辛抱、と思って頑張ってほしい(私は被災時にそう思っていました、思い込んでいました)

震災なんてこないにこしたことはないのですが、それも難しい。

温暖化による気候変動等で年々、自然災害の回数も規模も悪化していっています。保険会社としては保険料を上げるしかなくなるわけですが、他のnoteでも再三書いているように、 支払保険金=保険料 つまり、収支相等の原則が成り立たなくなったら「保険」という商品は成り立ちません。

収支相等の原則…保険集団ごとに、保険期間中の保険料の総額・運用益の合計と、保険金の支払総額・経費の合計が一致するように、保険料を算定すること。 つまりは、入ってくるお金と出ていくお金が同じ額となること

3.11を少し前に、保険について少し熱く語ってみました。

2020年は新型コロナウィルスだけで終わってほしいな。。

おわり