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創作小説 「体と夢」 #1

サラニコは、まぶたに当たる光で目が醒めた。
少し体が痛い、背中に硬いものを感じる。

目を開けると、眩しい光と木々がぼんやりとある。
横を向くと、肌にざらっとした感触があった。
驚いて体を起こすと、イカダの上に乗っていた。

周りは、明るい陽の射す池か川、水辺には木々が生い茂り、ツタが絡まり、水面へ着いている。
花の咲く木もあり、大きな白い花や黄色い小花や、淡いピンクのつららの様に垂れる花々が、互いに甘い言葉を囁き、喜び合う様にそこに咲いている。

ここは、知らない場所だけれど、とても好き、
少なくとも怖い場所ではなさそう。

イカダの流れに身を任せるしかなく、サラニコはその場をただ観察した。

人の気配はなく、手つかずの自然の崇高な美しさが、ずっと続いている様だった。

ここは女神の庭か、妖精の住む森なんだわ。
私、どうしてここにいるのかしら、
確か、パパの車に乗っていたと思うのだけれど、、
リュックも無い、水に落としたのかしら、、
いやいや、きっと夢なのね、だったら暫くは醒めないでほしいわ。

水を触ると指先から落ちる雫が輝いた。木から垂れるツタが頬に触れる感触を楽しんだり、花を撫でたりしながら、流れるイカダに身を任せ、変わる景色を楽しんだ。

そうだ、もう少し寝ましょ、そして目が醒めたら、またパパの車にいるはず。横になって目をつぶり、暖かな日差しとイカダの揺れを体に感じていると自然と眠りに落ちた。

眠りに落ちる瞬間、鼻へ抜ける様な声が出ることがある。
この時も眠りそうな耳でその声を聞いた。

いつもはその声を聞くと、次の瞬間には寝ていて記憶が無いけれど、今日は、箱の中に自分がポトンと入る感覚があった。
学校の体育館くらいの、大きな箱で、入ったと同時に蓋が閉められた様な感覚。

サラニコはすぐ立ち上がった。
よく見ると周りには、工事現場の帽子をかぶっている中年男性が数人いた。
その一人が声を掛けてきた。
「さあ、どうするかね?」
サラニコに図面のファイルを渡し、指示をあおいできた。
気づくと足場が組まれている。

この人達は、私の希望を聞いている、そしてそれを作る気なんだわ、と状況を理解したサラニコは、
「フカフカの大きなソファと、クッキーとコーヒーを置く小さなテーブル、まだ読んでいない、将来私が好きになる本がびっしり入った本棚」
をお願いした。

サラニコは希望がどんどん出てきた。
「それを、小さな洞窟の様な薄暗い空間に作って。所々に天窓も作って、そこから光を取り込むの。洞窟の中には泳げる水たまりも欲しいわ。」

「洞窟には大きな窓があって、そこから、今の私の家の前に流れるセンダル川と緑の広場が見たいわ。川と広場も散歩できるようにしてね。以上よ。」

「じゃあ、よろしくね。」と言うと、目にも止まらぬ早さでそれを作ってしまった。

夢の中の出来事なんだわと思いつつも、サラニコは出来栄えに満足して、早速ソファーに腰を下し、クッキーを食べながら本を読んだ。

暫くすると、前に人が立っていた。びっくりして本から目をあげると、そこには女性が立っていた。
一目見て、ただ者では無いと分かった。
女性の肌を覆うドレスはとびきり柔らかく軽い素材で、止まっていてもオーロラのように揺れていた。
頭には言葉にならないほど美しい飾りが付いていた。
そして、いたずらな笑顔をしていた。

サラニコは「こ、こんにちは。」と言うのがやっとだった。
女性は「こんにちは、初めまして、私はあなた。」と言った。
その声は、脳に直接届くような、耳ではなくて、心で聴くことのできる声だった。

サラニコはとても素直な性格、ではないけれど、女性の言葉を素直に納得した。


続く。。


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