【追想シリーズ】 演奏会の再開 〜ついに留学の醍醐味を〜 (2021)

2021年6月。
1年以上続いたロックダウン、演奏会の公開中止を経て、ついに演奏を聴く機会が(弾く機会も)再開した。本拠地の音を聴きたくて留学した面もある私にとって、とても大きなニュースだった。祖母の死を機に(渡航者隔離の関係で参列できなかったけれど)コロナ禍で初めて日本に飛び、(この世の終わりかというくらい泣きながらに)ドイツへ戻って、知っている道を目の前に「留学の第二弾が始まった」と感じた、ちょうどその頃。

「アルゲリッチ・フェスティバル」の公演たちが幕を開けた。当時は休憩なしの短めプログラムに、制限された客席。毎日抗原検査をして陰性証明書を提示することが条件。夢みたいで、嬉しくて嬉しくて、できる限り会場に向かった。失った音を取り戻すかのように、全身で浴びた。思えば、乾き切ったスポンジが出会ったのがこんな音楽たちだなんて、途轍もなくラッキーだったかも。

音楽を上手くなるには、良いものを聴かなければ、と、よくある話だがほんとうに思う。ドイツに来て直ぐではなかったけれども、段々と身近に一流の音を聴く機会が生まれ始めて… 聴いたことのある音が変わり、する音楽も変わった、

そしてこの時、遂に人が生の音楽の手元にいられることが嬉しかった。医療関係者の方々のご尽力など命のもと、そう感じる時間を少しでももらえるようになったことがありがたかった。その当時の感覚を、忘れないようにしなければなあと思う。



♪内容も少しずつ追記中


2021年6月24日
Akiko Suwanai, Tedi Papavrami, Lyda Chen, Alexander Kniazev, Evgeni Bozhanov によるフランクのクインテットFWV 7、 そしてArgerich の代演でサプライズ登場のMaria João Pires によるソロ、シューベルトのD935 Nr.2,3. (もうきかれないと思っていた女神さまの登場に、全てを包み放してくださる音に、それは興奮した。)

同年6月27日
Susanne Barner, Akane Sakai によるヴァインベルクのop. 29、Dong Hyek Lim のソロでショパン ノクターンop.27-2 とスケルツォop.31、Anton Gerzenberg, Daniel Gerzenberg によるバーンスタイン ウェストサイドストーリーに、ツェルニー op.227。
そしてGanriela Montero がプロコフィエフのop.17 と即興を演奏され、Martha Argerich, Lilya Zilberstein のショスタコーヴィッチop.94.  隅っこの席で演奏中はよく見られなくとも、舞台裏に吸収されていく奏者の姿に感慨深くなってみたり、あの遠くの人であったアルゲリッチがハグをして若いピアニストに拍手を送っている姿に瞬きを忘れた。
舞台裏やピアノを動かしたりする方々も格好良くて痺れ、表情豊かな調光にワクワクしたことを覚えている。


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