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海外ドラマ「ナイン・パーフェクト・ストレンジャー」とうつ病最先端治療

今回はamazon Prime Videoでたまたま見つけた海外ドラマ、「NINE PERFECT STRANGERS」の紹介と、そのドラマの重要部分に関連するうつ病治療に関してまとめていきたいと思います。

この作品はもともとHuluオリジナル作品ですが、Amazon Prime Videoでも視聴可能です。

主演は説明不要の大女優、ニコール・キッドマンで、そのほかの主要キャストも有名俳優ばかりがラインナップされています。

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原作はリアーン・モリアーティ同名小説で、「ビッグ・リトル・ライズ」の原作者でもあります。

あらすじと感想

amazonのあらすじは以下です。

健康と“新しい自分”を求める人々が訪れる高級ウェルネスリゾート「トランクイラム」に、さまざまな事情を抱える9人の男女がやってくる。彼らを癒やしてくれるのはミステリアスな経営者マーシャ。だが10日間の滞在が進むにつれ、マーシャの型破りなプログラムは不安定な9人をますます混乱させていく。

正直いうと、話の展開のスピード感があまりなく、3話までは退屈でした。マーシャ役のニコール・キッドマンをはじめとするキャストの演技は圧巻ですが、対話のシーンが多いせいか、見ていて眠くなることもしばしばありました。

!ここからネタバレを含みます!

3話までは、9人の参加者の個々の事情が明かされるとともに、セラピストマーシャの不穏な空気を纏うヒーリングプログラムに、視聴者の私たちも参加者とともに不安な気持ちを掻き立てられます。

そして、物語は展開を迎えます。
マーシャが参加者たちにドラッグを盛っていたことが判明するのです。

このドラッグは幻覚を引き起こすマッシュルームで、この作用で参加者たちは幻覚を見ることになります。それがマーシャの目的でした。

マーシャは、幻覚を通じて亡くした最愛の娘に会うためにトランクイラムを設立し、参加者を実験台としていたのです。

このドラマの面白いところは、最終的に参加者が被害者、マーシャが加害者という構図に収まらないところです。

トランクイラムに参加した9名は、ドラッグを盛られていると知った後もマーシャの言う通りに摂取を続けました。その結果各々を苦しめていたものから解放され、見事にヒーリングを施されていました。

参加者たちもそれを自覚し、最後はマーシャへの感謝さえも感じ取れます。

ちなみに、トランクイラムのスタッフに双極性障害の女性がおり、その人もドラッグを常用していたので、双極性障害にも効果があるみたいです。

この物語の中心となる幻覚剤療法は、実際に存在するものなのです。

幻覚剤ルネサンス

イギリスの「幻覚剤協会」なる団体は、幻覚作用のあるサイロシビンを含むマジックトリュフを使った「幻覚剤週末体験会」を開催しました。

しかしこれは単に幻覚を楽しむためのサイケデリック(幻覚剤)・パーティではありません。

参加者はうつ病や不安神経症といった精神の問題を抱えていながらも、向精神薬の効果が見えない人々で、訓練されたインストラクターによって「精神を変容させる旅(トリップ)」に誘導されます。

そして参加者は、このトリップによってうつなどの症状の改善を実感したのです。

この話はまさに「ナイン・パーフェクト・ストレンジャーズ」のトランクイラムにて、セラピストマーシャが参加者に施したヒーリングの状況と同じです。

欧米では、LSDやサイロシビンなどの幻覚剤はうつ病治療に効果があるとして注目を集めており、幻覚剤の再評価が進められています。

2016年にはニューヨーク大学と、ジョンズ・ホプキンス大学が、『ジャーナル・オブ・サイコファーマコロジー』誌に共同で論文を発表しました。

その結果では、約80%のがん患者について、不安障害やうつ病の一般基準で臨床的に有意な現象を示し、その効果はサイロビシン・セッションのあと少なくとも6ヶ月は継続したということでした。

この研究は『ニューヨークタイムズ』で1面で報じられ、またFDA(食品医薬局)は、サイロビシンを使用しての治療の認可の道へと続く、研究の拡大を提案したのです。

幻覚治療とはどんなものなのか

アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学医学部に2019年9月に開設された幻覚意識研究センターで講師を務めるアルバート・ガルシア=ロメウ医師はこう話しています。

高容量のシロシビンは、ほとんどの人の場合、投与から1時間以内で明らかな精神活性や精神安定効果が表れます。そして通常、投与から6~8時間でその効果は納まります。こうした効果は主に、セロトニン2A受容体における活動によって調節されています。その他の抑制メカニズムもあると思われますが、まだ研究は始まったばかりです
丸1日かけて行われる臨床セッションでは、2人の療法士の監督のもと、被験者は20~30ミリグラムの純粋なシロシビンを投与されます。
その後患者は、内面に意識を集中させるためにアイマスクを着け、主にクラシック音楽が流れるヘッドフォンを着けます。そして、『信頼して身を任せ、自らを解放する』よう告げられます。セッション中はセラピーを行いません。セッションが終了してから患者は自分の体験を語り、翌日フォローアップのための心理セラピーセッションを行うのです
これは、通常病院にかかって処方された薬を「2錠飲んで、その効果を翌朝電話で教えてください」というようなものではないし、今後も、シロシビンが薬局で売られるようなことはないというのが医師たちの見立てだ。

実用化はいつになるのか

アメリカでもサイロビシンは指定薬物となっており、ヨーロッパでもサイロビシンが含まれた植物の摂取が合法の地区はまだ多くありません。

上記のように欧米で研究が急ピッチで進んでいることから、世界的に見れば実用化は遠くないのかもしれませんが、日本ではマリファナもまだ厳しく扱われていることから、幻覚剤使用のハードルは高いかもしれませんね。

参考文献

・幻冬社 橘玲 「スピリチュアルズ」

・VOGUE 「シロシビンでメンタルヘルス治療!? 幻覚療法の最前線。」


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