お土産開発手法3 too much 理論

静岡市の産学交流センターでお土産開発のプロジェクトを長年受け持っていました。日常品を製造するメーカーがお土産市場に打って出るときに、かならずぶち当たる壁が「お土産」と「日常品」との差別化です。

そこで何度も何度もお伝えしたのは

  「too much 理論」です。

お母さんのつくるお料理は家族の健康やもろもろの事情のため、味に関しての完成度は低めの設定です。毎日フレンチのコースを食べたいという人はまずいません。塩味をぎりぎりまで決めたお料理を毎日食べていれば健康に悪いです。

書籍やレシピをおこすときに、少々や適量はあいまい回避のために避けるようにいわれますが、小さじ1/10杯ってわかりますか?測れるか~~~い!と突っ込みたくなりますが、あいまい回避のために求められたりします。一つまみも親指の大きさによって違うからNGなんだそうです(笑)

さてあいまい理論はさておき、味は五味「塩味」「甘味」「苦味」「酸味」「うま味」から形成されています。「辛味は?」と時々聞かれますが、辛味は残念ながら「味覚」ではなく「痛点」です。つまり辛いのが好きな人は味覚云々ではなくて痛いのが好きな人というわけです。ただ味覚も刺激のひとつではあります。脳への信号の部類としては似ているので、同じ感覚なのだと思います。

日常のお料理というのは、この五味のバランスを五角形の中に収めると食べやすく、飽きが来ないということになります。

ではお土産は?というと、ここで出てくるのが前述の「too much理論」です。お土産というのは非日常です。つまり刺激やインパクト、衝撃、いただいてなんらかのアドレナリンが出るものである必要があります。そのため「味」に限らず何かが余計に突き抜けたバランスが悪いものの方がインパクトに残るのです。

例えば、一時期流行したジンギスカンキャラメル。これはお土産のラインナップのなかでも最も私が認めたくない部類ではありますが、いわゆる出オチ、ネタ系のお土産です。おいしくはない。キャラメルにする必要もない。でも手軽にネタとして笑ってもらえる。ただ、キャラメルと考えると花畑牧場を高いお金を出して買っていき、うん、ありがとう、うれしいよ!と言われるぐらしなら、チープだし、えぇ~~~~~~~~~~~~と言われながらみんなで「まず~~~~い」と騒いだ方が楽しいという人は一定数います。もちろん気の置けない仲間たちに対してだと思います。

この理論にあてはめると、過度に〇〇である商品というのは「お土産力」が高いものということになります。

なので、メーカー向けに調味アドバイスもしていますが、お土産の味を決めるときに、アンバランスにすることをお勧めしています。お土産はよくも悪くも、印象に残らなければ、もらった感がありません。わたしは静岡出身なので、ど定番はうなぎパイです。これは賛否両論を巻き起こさない置きに行くお土産。そして多くの人にあ~~これこれと喜ばれる。セレクトによるセンス全否定の危機を回避し、心の平安を買うお土産です。

ですが、そのうなぎパイですらこの理論に当てはまっています。味はふつうのパイなのですが、パッケージが赤マムシに寄せていて、コピーが「夜のお菓子」。これからの家族団らんは核家族が進むから夜だと分析しつけたコピーでしたが、浜松の歓楽街でお姉さんがお客様にピーナツの代わりに出したのが、うなぎパイでした。そこに目をつけた三代目が赤マムシにパッケージを寄せた結果大うけしたというのが、ヒットポイントでした。お菓子にうなぎを入れたこと、そしてビジュアルがtoo muchでした。

 ただ、この理論、今までは「お土産力」という説明をさせていただきましたが、この消費動向の変化で、どうやら日常品にもネットで買う理由という部分につながるため「お土産力」という言葉の範囲を超えるようになってきました。ネットでは味はわからず、説明やストーリーそしてインパクトが必要になります。「映え」や「萎え」が話題になっていますが、「買う理由」が強くないと人はうっかりものを衝動買いしなくなってしまった。

ということで、お土産のために考えた理論でしたが、これは少しこれからも活用できそうな理論かなと思っています。

とはいえ、売れるのはあくまで「あぁ~~~~~そういうこと!」という共感を得られるインパクトです。いわゆるありそうでなかったというもの。

ダイオオグソクムシせんべいというのが数年前に発売されました。みんながあのダンゴムシの絵のインパクトに足を止めました。でも売れるのはダイオオグソクムシせんべいではなく、その隣にあるものだったりします。棚映えと実売は違う。ここがわかると、ぐっと売れる商品の発想手法が明確に絞れるようになってきます。




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