【#5】7人との出会い③「ある女性役員」
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今の自分が本当にしたいことは何か。を知るために私はいろんな勉強会やイベントに出かけて行った。お金は節約したかったので、無料で参加できるものを中心に・・・。いろんなイベントを検索していて「お。」と目を引くものがあった。
「女性×働く」をテーマにこれからの生き方を考える。
この壮大なテーマを、様々な切り口からパネルディスカッションとワークショップを通じて登壇者も参加者も一緒になって考えます。とイベントの告知に書いてあった。今の私にぴったりだ。でも、こういうイベントは初めてじゃない。人事の時も参加したことがある。その時決まって思うのは
・あなたみたいなキラキラ女性にはなれません!という自分とは遠い世界の人たちのパネルディスカッションだったらやだな。
・どこかの会社の事例とかだと、夫婦が同じ会社で~とか、女性ばかりが身を削っているのを「良い事例」として提示していたりとか、なんか現実感ないんだよなぁ。
そんな風にちょっとナナメから見ていた。登壇者は女性も男性もいて、著名な方もいれば、「海女さん」という異色のキャリアをもった人もいた。
私は連日「自分は何者で、何がしたくて、何をしていけばいいのか」をぐるぐると考えて、思い詰めていた。自分ではもうアイデアが出そうになかった。気づけばパネルディスカッションの話に夢中で登壇者の一言一句をノートにメモしていた。
たったひとりで、自分を抱きしめること。そして、静かに自分の名を呼ぶこと。
パネリストへの質問「私は私がわかりません。」
とても勉強になった。半分くらい本質的な意味が分からなかったけれど、おそらくとても大切な話を聴いているということだけ感じていた。胸が熱くなっていて、夢中でメモをした。そして、参加者からの質問に答えてもらうタイミングがあった。私はとっさに手をあげ、質問者用のマイクをもらった。
「私は、会社を辞めてしまって・・・。自分の中で大事にしたいこと、核となるものはどうやって見つければいいか・・・私は私がわかりません。」
質問する声が震えて、気づけば大粒の涙が流れていた。自分の中にある答えが見つからない。苦しい。でもそんなネガティブな感情は出しちゃいけない。と思っていたので、思いを口に出したら、せきを切ったように感情があふれてしまっていた。急に私が号泣したもんだから、パネリストも周りの人も慌てていた。近くにいた人が次々にティッシュをくれて、私は急に恥ずかしくなって、マイクを戻しながら椅子に腰を下ろした。「大丈夫、だいじょうぶよ。」周りの参加者のお姉さまたちが、声をかけてくれていた。
そしてもらった回答は、どれもとても素晴らしかった。
その後も他の参加者からの質問は続き、会は終わりを迎えた。そしてついさっき質問に答えてくれた女性役員のSさんが、私の方に向かって近づいてくるのが見えた。
「あなた、会社辞めたのよね?良かったら今度面談に来ない?秘書を探してるの」
突然のお誘いに一瞬呼吸が止まった。Sさんは私の憧れのアパレルブランドで役員をしていた。今までとは違う世界、仕事に心臓がどきどきした。
「えっ、私なんかで・・・いいんですか?」
「私がいいって言えばいいのよ。そんなメソメソしないでちょうだい。名刺を渡すから人事と連絡を取って今度きてね。」
Sさんはとても男前に言っていたけれど、私を見て何か世話を焼いてくれようとしてくれたのがわかった。その優しさがありがたかった。
後日の面談に向けて履歴書と職務経歴書を送り、Sさんの会社情報のことを自分なりに調べて向かった。その日は12月だけれど日差しがあたたかかく、無職の自分を受け入れてくれるところがあるのがうれしかった。
面談はSさんのエネルギーがすごくて、とにかく圧倒された。
Sさんはこんな話を私にくれた。
「私は秘書としてあなたを厳しく育て上げるけれど、とても成長するよ。考えたら返事してね。でも、長くは待たないから。」
とてもたくましくて、頼りになる方だと思った。自分の興味のある業界で、役員秘書としてのキャリアは、とてもいい感じがした。
でも、心がざわざわした。
魅力的なオファーのはずなのに、窮屈な感じがした。おかしいな・・・。すぐに飛びつかず、じっくり考えることにした。
「私はどうして会社を辞めたんだっけ。」
「その会社で私は「女性が生き生きと働くこと」を創り出すチャレンジができるんだっけ?」
「そもそも、誰かの下で働きたいと思っている?」
「自分が心からやりたいと思ってる?誰かが期待してるのを理由に、流されようとしていない?」
「ライフイベントはしばらくお預けになりそうだけれど、それでいいの?」
はじめての「NO」
ふと、私は「独立して自分の想いを仕事にするのかどうか。」を天に試されているんだと思った。これまでのパターンと同じで、目先のおいしそうなニンジンを直感的に選ぶのか、覚悟を決めて行き先がわからないけれど自分の道を歩くのか。それを決めなさい。と言われている気がした。
よくよく考えて、秘書のお話はお断りすることにした。はじめて自分の意志で「NO」が言えた気がした。Sさんには機会をいただけたお礼を伝え、「うまくいくかわからないけれど、自分の思うことを、思うようにやってみたい。そういうチャレンジをしてみたい。」と伝えた。
「いいと思う。がんばって。今度うちの展示会があるから、見においで。Invitation送るから。」と短い返事がきた。
Sさんの優しい気遣いに感動したし、Sさんに失礼のないようにと、私は私の道を歩くと決めた。
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