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【#5】7人との出会い③「ある女性役員」

前回の記事

 今の自分が本当にしたいことは何か。を知るために私はいろんな勉強会やイベントに出かけて行った。お金は節約したかったので、無料で参加できるものを中心に・・・。いろんなイベントを検索していて「お。」と目を引くものがあった。

「女性×働く」をテーマにこれからの生き方を考える。

 この壮大なテーマを、様々な切り口からパネルディスカッションとワークショップを通じて登壇者も参加者も一緒になって考えます。とイベントの告知に書いてあった。今の私にぴったりだ。でも、こういうイベントは初めてじゃない。人事の時も参加したことがある。その時決まって思うのは

・あなたみたいなキラキラ女性にはなれません!という自分とは遠い世界の人たちのパネルディスカッションだったらやだな。
・どこかの会社の事例とかだと、夫婦が同じ会社で~とか、女性ばかりが身を削っているのを「良い事例」として提示していたりとか、なんか現実感ないんだよなぁ。

そんな風にちょっとナナメから見ていた。登壇者は女性も男性もいて、著名な方もいれば、「海女さん」という異色のキャリアをもった人もいた。
 私は連日「自分は何者で、何がしたくて、何をしていけばいいのか」をぐるぐると考えて、思い詰めていた。自分ではもうアイデアが出そうになかった。気づけばパネルディスカッションの話に夢中で登壇者の一言一句をノートにメモしていた。
 

たったひとりで、自分を抱きしめること。そして、静かに自分の名を呼ぶこと。

ディスカッションテーマ
・会社員からフリーで働く時の心の動き
・仕事と家庭の優先順位について
こんな内容でディスパッションがすすんだ。

Q.どうしていまの働き方(郊外エリア起業、海女、役員)になったのか?それが決断できたのか?
今IT社会になってきて、どんどん左脳社会(男性的、ロジカルで効率的)な社会になっている。その中で女性が活躍しようとしたときに、どうしても左脳社会が弊害になって働きにくさを感じることがある。ただそれでも、(海女であれば)海が好きだった。とか、(子育てを大切にする起業家であれば)子供と過ごす時間をつくる。だとかとにかく好きなことや大事にしたいことをやってみようと行動しただけ。その時にはもちろん、「現状を捨てる」ということもした。(移住するとか、会社員を辞めるとか)
女性が活躍するためには、やりたいことがあった時、固定観念に縛られずまずはやってみることが大事。女性は8割くらい確信が持てないとやりたくない!と思う生き物。だから挑戦に踏み切れない。ダメならやめればいいだけ。死にはしないから。

Q.仕事や家庭など大事にするものが多いのに、どうやって両立しているのか。
頑張りすぎないために、自分のバランスを保つための軸を持つ。軸は2つ。使命となる揺るぎない仕事へのパワーと、いま持っているもの(家族、友人、子供)の優先順位をどうするか考える。
使命は、とてつもないエネルギーを持っているが、絶対に見つけなければならない!という訳ではない。大事なのは、自分で経験することを怖がらずにやり、自分の歩幅で歩くこと。外と比較しない。軸によって、自分のニュートラルなポジションを探し、そこに戻ること。

Q.ニュートラルなポジションとは何か?
自分が目指しているのはどこか。を常に考える。
あるいは、自分が戻るべきところはどこか。
人・場所・時間(一人になる、家族と過ごす時間など)などニュートラルの基準は人それぞれである。

Q.ニュートラルなポジションは、いつ見つかるのか?
物事を行うとき、0か100かで考えないこと。
女性はまじめで、頑張り屋だから、つい極端に考えてしまう。
そうではなく、今行っていることは未来への中継地点だと思い、肩の力を抜いて、その中でどうしたいかを自分に問いかけること。「今ここ」という中から自分を見つけること。

Q.落ち込んでしまったときはどうしたらいいのか?
今ここ。という言葉を考えたとき、自分の後ろにある過去は蜃気楼だと思うこと。戻れないことに心を病んでも仕方がない。
先のことは行動していく中から導き出せばよい。
もしも、行動をしていて不安になったら、一度すべての情報を遮断して、

たったひとりで、自分を抱きしめること。そして、静かに自分の名を呼ぶこと。

その時に、本当にやりたいこと。大事なことが見えてくる。

2015年12月7日のブログより

 パネリストへの質問「私は私がわかりません。」

 とても勉強になった。半分くらい本質的な意味が分からなかったけれど、おそらくとても大切な話を聴いているということだけ感じていた。胸が熱くなっていて、夢中でメモをした。そして、参加者からの質問に答えてもらうタイミングがあった。私はとっさに手をあげ、質問者用のマイクをもらった。

「私は、会社を辞めてしまって・・・。自分の中で大事にしたいこと、核となるものはどうやって見つければいいか・・・私は私がわかりません。」

 質問する声が震えて、気づけば大粒の涙が流れていた。自分の中にある答えが見つからない。苦しい。でもそんなネガティブな感情は出しちゃいけない。と思っていたので、思いを口に出したら、せきを切ったように感情があふれてしまっていた。急に私が号泣したもんだから、パネリストも周りの人も慌てていた。近くにいた人が次々にティッシュをくれて、私は急に恥ずかしくなって、マイクを戻しながら椅子に腰を下ろした。「大丈夫、だいじょうぶよ。」周りの参加者のお姉さまたちが、声をかけてくれていた。

そしてもらった回答は、どれもとても素晴らしかった。

〇女性役員Sさん
よく女性は、褒められることや、まわりの評価を意識しすぎてしまい、自分の価値にしてしまいがち。周りが決めることでもなく、誰かの役に立つことでもなく、自分が悩んでいるその存在を一つの価値感として受け入れること。受け入れた時に、目標が見えてくるはず。大事にしたいことがわからない!ともがいても苦しいだけ。見えてきたものがあるときに、そこに向かってエネルギーを注げばよい。

〇女性役員Mさん
自分らしさというか、まず外から見た正しさ、つまり反逆とか幼稚なものではなく、自分と社会に折り合いをつけたり、認められていきた時にようやく自分らしさを見つける。
それを見つけられるのは干支の4週目。37歳~48歳の間。
それまでの30代半ばまでは親だったり、上司だったり、身近な世の中の一般の常識とされるものと過ごしながら、家庭を持ったり子供を育てたりして出来上がっていくもの。
私も30代は目標は全然わからないがどうしていいかわからない葛藤があったが、ふとした時に今の会社で働くきっかけがあり、それが今に続いている。葛藤と付き合う技を身につけることが、オトナの道なのかな。

〇大手IT企業人事 Hさん
いつも周りに素晴らしい仲間がいてくれて、与えられるばかりの人生で、与える人になりたいと思っている。自分がどうやって社会に貢献できるか、役に立てるかというのは非常に難しい。私も葛藤するところ。
ただその中で、自分がどうパッションを持てるというものに出会えるか。自分の脳や手足をフルに使ってやることが見つけられたら良い。
ただ、そんな簡単には出会えないので、毎日コツコツと探し続けること。
そのコツコツとした努力が、縁をもたらしてくれるので、焦らないこと。
目標を見定めながら生きていくこと。

〇主催者 Aさん
縁は本当に大事。周りにいい縁を作っていくこと。
私の周りには素晴らしいキャリアを積んでいる方も多くて、彼女たちを見ると落ち込むこともある。でも、外から見て輝いている人も話してみると、中がぐちゃぐちゃだったり、悩みを抱えているなこともある。すべてがパーフェクトな人はいない。
人と人を比較すれば落ち込むけれど、自分だけが持っている役割は何かしらあると思うので、それを見つけてほしい。
自分が自由に使える時間を持っているなら、それを大事にしてほしい。
 

2015年12月7日のブログより

 その後も他の参加者からの質問は続き、会は終わりを迎えた。そしてついさっき質問に答えてくれた女性役員のSさんが、私の方に向かって近づいてくるのが見えた。

「あなた、会社辞めたのよね?良かったら今度面談に来ない?秘書を探してるの」

 突然のお誘いに一瞬呼吸が止まった。Sさんは私の憧れのアパレルブランドで役員をしていた。今までとは違う世界、仕事に心臓がどきどきした。
「えっ、私なんかで・・・いいんですか?」
「私がいいって言えばいいのよ。そんなメソメソしないでちょうだい。名刺を渡すから人事と連絡を取って今度きてね。」
 Sさんはとても男前に言っていたけれど、私を見て何か世話を焼いてくれようとしてくれたのがわかった。その優しさがありがたかった。

 後日の面談に向けて履歴書と職務経歴書を送り、Sさんの会社情報のことを自分なりに調べて向かった。その日は12月だけれど日差しがあたたかかく、無職の自分を受け入れてくれるところがあるのがうれしかった。
 面談はSさんのエネルギーがすごくて、とにかく圧倒された。
 Sさんはこんな話を私にくれた。

■会社で働くということについて。
1人ではじめるのもいいが、
自己満足だけで仕事をしたいのか?
目の前のお客様を大事にしたいのはわかるが。

本当に、大きなインパクトをもって社会貢献したければ、
会社(組織)という軍で戦わなければ成し遂げられないことがある。

だから会社で与えられたミッションにおいては
自分の「どうしたい。」を有言実行し、
すべての行いは会社のために行うべし。
一切を、自分の(成長の)ためにとは思うなかれ。
ただし、仕事をしていく中で、遂には自己実現できることもある。

2015年12月16日のブログより

「私は秘書としてあなたを厳しく育て上げるけれど、とても成長するよ。考えたら返事してね。でも、長くは待たないから。」

 とてもたくましくて、頼りになる方だと思った。自分の興味のある業界で、役員秘書としてのキャリアは、とてもいい感じがした。
 でも、心がざわざわした。
 魅力的なオファーのはずなのに、窮屈な感じがした。おかしいな・・・。すぐに飛びつかず、じっくり考えることにした。

「私はどうして会社を辞めたんだっけ。」
「その会社で私は「女性が生き生きと働くこと」を創り出すチャレンジができるんだっけ?」
「そもそも、誰かの下で働きたいと思っている?」
「自分が心からやりたいと思ってる?誰かが期待してるのを理由に、流されようとしていない?」
「ライフイベントはしばらくお預けになりそうだけれど、それでいいの?」


はじめての「NO」

 ふと、私は「独立して自分の想いを仕事にするのかどうか。」を天に試されているんだと思った。これまでのパターンと同じで、目先のおいしそうなニンジンを直感的に選ぶのか、覚悟を決めて行き先がわからないけれど自分の道を歩くのか。それを決めなさい。と言われている気がした。

 よくよく考えて、秘書のお話はお断りすることにした。はじめて自分の意志で「NO」が言えた気がした。Sさんには機会をいただけたお礼を伝え、「うまくいくかわからないけれど、自分の思うことを、思うようにやってみたい。そういうチャレンジをしてみたい。」と伝えた。
「いいと思う。がんばって。今度うちの展示会があるから、見においで。Invitation送るから。」と短い返事がきた。
 Sさんの優しい気遣いに感動したし、Sさんに失礼のないようにと、私は私の道を歩くと決めた。

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