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老夫婦、警察官を逆捜索する

両親は帰省した私を駅まで迎えに来てくれた。 
自宅までは車で20分ほどかかる。 
その道すがら聞いた話…。

今年の梅雨頃。
買い物が終わった母は父に駅まで迎えに来て欲しい。
と連絡した。

駅のロータリーに着いた父は、そこで母と落ち合う前に救急車に抜かされる。

この救急車こそ、母の為にやって来たことなどその時の父は知るよしも無かった。

母は駅に着きロータリーへ降りる歩道橋の最後の1段を踏み外し、顔から倒れた。

たまたまそばを警ら中だったお巡りさんがそんな母を見つけ飛んで来て介抱してくれた。

幸い手足は怪我も無く動かせる為、母はすっくと立ち上がり
「もうすぐ夫が迎えに来るので大丈夫です」
とお巡りさんに伝えた。

ただ、本人には見えていないが頬からの流血がかなり激しく、そのお巡りさんは自分のハンカチで母の頬を押さえると
「救急車を呼んだ方がいい」
と動き出したのだった。

母はお巡りさんのハンカチが自分の血でどんどん真っ赤になるのを見て、ことの大きさに驚く。

そうこうしているうちに、サイレン音が近づいて来たのだった。

夫が迎えに来る
と、母から聞いていたお巡りさんは、ロータリーに止まった車から父を探し出すと母が今から救急車に乗るところだ。
と告げた。

父は最初母が交通事故にでもあったのか?
そう思ったらしい。

救急車には、父の車が後ろからついていくから、搬送病院を教えて欲しい。
とそのお巡りさんが間に立って奔走してくれた。

搬送病院は駅からすぐそばの市民病院。

母は父の車が後ろから来ることを知らされ、1人救急車に乗り込んだ。

お巡りさんはその場に残り、母の乗る救急車とあとに続く父の車がロータリーを出て行くのを見送った。

病院についた母は、外科の診察を受け、傷については縫うほどではないということではあったが、念のため脳の検査を受けた。
その後異常なしのお墨付きを貰い、父と一緒に帰宅した。


その日以降、両親によるお巡りさんの捜索が始まった。

2人はまず駅前の交番を訪れる。

母は分厚いガーゼを頬に貼り付けた格好で…。

交番での調べによると、その人はここの勤務でなく、銀行専門の警ら担当で市の警察官であろう。
と教えてくれた。

交番での情報をもとに、両親は次に市の警察署へ向かった。 
母のアクシデントの日時から調べると1人のお巡りさんに目星がついた。
ただ、残念ながらその日は非番のため不在という。

市民を調べる側のお巡りさんが、小柄な老夫婦によって身元を調べられてる…
ちょっと面白い話しやなぁ。

母の怪我が大したことがないとわかった安心感から、私は少し不謹慎なことを思っていた。


お巡りさんが出勤する日を待ち、改めて両親は警察署に向かった。

再会したお巡りさんは間違いなくあの日助けてくれた人だった。

その方のお母さんの歳格好が母と似ていたらしく
余計に気になりました。 
と飛んできてくれた理由も話してくれた。

署内で帽子を抜いでいたお巡りさんについて
当日見た時より老けて見えたなぁ。
頭はワシよりも薄かったで。
とハンドルを握る父は
どうでもいい情報まで教えてくれた。


母の怪我は切り傷だけで、骨折や脳波には異常が無かったこと。
両親は病院での検査の結果を告げると、お巡りさんも安心してくれた。

母はお巡りさんのハンカチを汚したことを詫びると共に、介抱してくれたお礼に
と箱に入ったハンカチセットを手渡した。

その両親の姿に、その場にいた皆がとても驚いていたらしい。

お巡りさん本人もとても恐縮して
警察官として
当たり前のことをしただけです。
そう答えた。


警察署へ行った両親だったが、それだけでは気がすまなかったようで…

後日、両親は揃って消防署に向かった。

母が搬送された時、担当した救急隊員さんの名前を父がその場で聞いていた。
隊員さんは怪訝な反応をしたがあとでお礼を言いたいので。
と父はそこまで話していた。

そして両親はなんとその隊員さんまで探し出していたのだった。

またまた母は、分厚いガーゼを頬に貼り付けた格好で消防署に向かい、検査結果とお礼を伝えた。

消防署でもやはり両親の訪問を驚かれ
救急隊員として
当たり前のことをしただけです。


そして、警察署と消防署
どちらからも

こうして実際に市民の方から直接お礼を言われると
今後私たちも仕事の励みになります。

と言われたらしい。

「こっちがお礼に行った方やのに逆にお礼を言って貰ったわ〜」

と両親はとても満足そうだった。

そんな両親の行動が
娘として少し誇らしく思えた。



そやけどさぁ?
お母さん。

もうこれ以上救急車のお世話になるのは勘弁してよね。

今回は大した怪我やなくて 
ほんまに安心したわ。
お巡りさんも救急隊員の方もありがとうございます。



さて、あの信号を曲がると
そろそろ2年ぶりの実家だ。 



読んでくれてありがとう。
出会えたご縁に感謝します。

最後まで読んで下さってありがとうございました🍀私の思いを私なりの言葉で綴りました。あなたにこの思いが届いたなら、とても嬉しいです😊あなたからのサポートは、愛あるnoteの世界に循環させていただきます💕