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物の管理

日常生活で人の手を借りまくっていると、自分では確認しなくなる。

先日のサッカーでは、ソックスを片方忘れて帰ってきた。

「次からは忘れ物しないように気を付けようね」と、いつもなら言うのだが、今回は趣向を変えてみた。

「じゃあ、土曜日に(スポーツ)デポにつれていってあげるよ。新しいソックスがいるでしょ?」

本人は親が買ってくれると思っているので、元気よく「はい!」と返事をしたが、予想外の次の言葉に固まってしまった。

「自分のお小遣いで買うよ」

忘れ物をするのは、彼のせいではない。親や周囲が「忘れ物はない?○○は?」などと確認する習慣があって、自分では確認しないからだ。目を離すと忘れ物をする。それにペナルティを課すのは、彼としてはやりきれないという部分があるかもしれない。

でも、自分で持ち物を確認する習慣をつけないと、あとで大変な思いをするのは彼自身だ。今月半ばには二十歳になるのだから、いい機会だととらえることにした。

「二十歳になるっていうのは、大人になるってことだから、誰も面倒を見てくれなくなるよ。自分のことは自分でやらないと、お小遣いはどんどんなくなって、損するのは自分だよ」

などと都合のいい説明ができる。

案の定、抵抗は大きかったが、「じゃあサッカーにはもう行かないかな?」と聞いてみると「行きます!」という返事。

結局、今回はお小遣いで買うことになった。当面は、毎回この抵抗と戦っていかなくてはならないが、ガマンガマン。親が音を上げるとそこで終わってしまうから、頑張りどころだ。

彼の知的障害は、二十歳にして3歳程度の理解力なので、3歳の子どもに教えることをようやく教えることができるようになった。という状態だし、冬場に向かって「冴えている期間」なのは、なにかを教え始めるにはちょうどいいという事情もある。

自分の持ち物を自分で管理するというのは、けっこう難しいことで、例えば私は自分がTシャツを何枚持っているかとか記憶していないし、本当に必要な枚数は何枚なのかなどということを把握していない。

毎日洗濯するのだから、そんなにたくさん必要ないはずだが、たぶん軽く十枚以上はある。それを、必要な枚数まで絞ることに意味を感じないので、そのまま放置している。

こういった細々としたことを「ちゃんと管理」していくのは、実はかなりめんどくさい。どうでもいいことにも思えるからやらない。

収納場所はたくさんあるから、減らす必要性を感じないし、一枚捨てたら一枚買うと決めておけば十分に思える。最低限しか持たないミニマリストでもないし、山ほどあるのにどんどん買いたすほど浪費家でもない。

だが、彼は違う。

彼が管理しなければならない所有物というものが存在するのだから、自分でできるようにならないと家を出たときに困るのは彼自身だ。

グループホームなら、彼に許される収納スペースというものが絶対に発生するし、例えば衣類なら「通年で箪笥一棹」程度が上限だろう。そのなかで必要な衣類の数を揃え、整え、傷んできたら補修あるいは新調するなどの「管理」が必要になってくる。

何かを失くしたら自分で補充するということを覚えてもらわないと。紛失したからといって、誰かが買ってくれるわけではない。勝手に補充されるわけでもない。簡単になくしていいものなどないのだ。

というわけで、忘れ物(紛失)をしたら自分で買わねばならないということを、まず理解してもらうことにした。今から冬に向かうと、手袋やマフラー、傘などの外に持ち出す小物は増える。例年なら、小物は忘れたり失くしたりすることが多い。

お金絡みだと理解が早いので「お小遣い」を使うことにしたのだが、けっこううまくいくんじゃないかと期待している。「お金(お小遣い)を貯める」というこだわりが、どんな風に効果を発揮するのか楽しみだ。

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