見出し画像

不適切行動

うちの子は知的障害を伴う自閉症という障害があるので、問題行動も多かった。いまでも拘りが残っていて、そこに触れると大騒ぎ。本人曰く「プチパニックです」ということになる。


こういう問題行動が起こってから、その場でやめさせようとしても遅い。

言い聞かせたり、叱ったり、抑え込もうとしたり、モノで釣ろうとしたり。静かにさせようとか、適切な行動に戻そうと、親は必死で頑張るのだが、なにか働きかければ働きかけるほど問題行動は強さを増していき、それが原因となって次の問題行動が起こるようになる。

その場での対応が難しいので、普段から不適切な行動をとらないように心がけておく必要がある。「バスに乗るときには歌を歌いません。」ではなく、「バスに乗るときは窓から車の数を数えましょう」など。否定でなく肯定で習慣づけておくと、問題行動は起こりにくい。

これが『「不適切な行動」の代わりとなる「適切な行動」の成功体験を重ね、スキルの獲得を目指していく』と言われることだ。

けれども生活していると、「え?こんなとこで不適切行動?なんで?どうして?」と思うような場面は多々あって、親も困る。

不適切行動を繰り返すとき、相談に行くと、「感覚刺激絡みでなければ、何らかのパターンにハマっているだけかもしれないので、視点を切り替えてパターンを崩そう」とかいろいろ言われる。

そんなに簡単にパターンが崩れるなら、そもそも困ったりしないよね。などとアドバイス?をもらうたびに心の中でぼやいていた記憶がある。

 

たぶん、不適切行動によって一番困っているのは子ども本人だ。特別な刺激を受けてつい出してしまった「奇声」はもう止まらない。繰り返してしまう。がっかりした顔をする大人達。でも止まらない。心の中で「誰か止めて!」と思ってるから「プチパニックです」なんて言葉が出るのだ。

そんなときはどうするのか。うちではシャワーを浴びさせている。まさに「頭を冷やせ」状態なのだが、これがわりと効く。別に必要以上長くシャワーを浴びて感覚を楽しんでいるわけでもなく、普通に髪や体を洗って出てくる。出てきたときにはすっかり落ち着いているので、「何が原因でプチパニックになったのか」 という話ができるようになっている。


昨日はアイルトンセナの最後のクラッシュシーンを見て、プチパニックになっていた。シャワーの後で「セナのクラッシュは見ません。どうしても見たいときは家で見ます」といういつもの結論になった。
セナのクラッシュシーンは、なぜかよく見る。今日はプチパニック来るな、と思っているとだいたい「ウキャー」からはじまる。でも、家の外でセナ関係の動画でパニックが起こったことは、私が知る限り一度もない。

一見すると親と約束しているように見えるが、実はこれは約束ではなく本人が言い出したこと。どうしても見たい時という設定は本人が希望したものだ。

見るとパニックになる可能性のある番組を、やめさせるのは案外簡単なこと。YouTubeが見られないように、タブレットのWi-Fiを外してしまえばいい。

でも、どんな情報でも本人がそれに興味がある以上、どこかで見る可能性がある。その時にプチパニックになって、どうしたらいいのかわからないのは、あまりにも不憫だ。なので、家で視聴するものには、時間以外の制限をかけないようにしている。「家で見たらいいでしょ?」が可能になる。

さて、問題は外でのプチパニックだ。実は療育などで「させられ嫌い」を発揮したとき以来、彼は外でパニックを起こすことが極端に少ない。この「パニック」の定義をどうとらえるかでずいぶん違うとは思う。

中学部で全裸になって訴えたことは、パニックではないと私は思っている。あれは「主張」だ。見る人が違えばパニックかもしれない。


彼の問題行動は、時間にかかわることだったり、勝負に関することだったりと原因がはっきりしている。

サッカーの試合で負けた時に、奇声をあげてしまって止まらず、周囲はあたふたしていた。本人は「プチパニックです」と涙目で訴える。

「怒ってもいいよ。叫んでもいいよ。負けたら悔しいよね」と車に連れて行って、気が済むまで奇声を上げさせてみた。ほんの数分で終了した。

「お弁当食べる?」と声を掛けると「はい」と言って出てきて、自分から「大きな声、ごめんなさい」とチームメンバーと引率の先生に謝った。

まぁ、親も謝ったが。

問題行動が起きるのは何かの負担があったり、不安が大きくなりすぎてることが多いので、それに取り組むときは大人の立場とか、社会的なこととかをちょっと横に置いて、なるべく本人の側からのアプローチをしていく方が、解決しやすくなると思う。


ちなみに、うちの子は重度の知的障害があるので、日本語はちゃんと話せない(2語文が限界)。なので、何で困ったとか刺激になったとかは親が推察していくしかない。普段の観察とちょっとした単語からイメージを膨らませていくと、案外当たってることも多い。まったく違うこともあるので何度も確認する。

冷静にならないと何にも聞けない、話せないというのは私も同じだ。ふつうは深呼吸したりして自分で冷静になる努力をするが、彼にはそういうことができないだけのことなんだろう。どうしたら冷静になれるのかを見つけられてよかったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?