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物語と占いと占い師と

今回は、前回に引き続き
物語をテーマに書いていきます。

(前の記事をまだ読まれていない方は
先に前回の記事を見てもらえると嬉しいです。)

私は占いを使って活動しているので
物語を語る以上
物語と占いとの関係は切っても切れないもの
だと感じています。

でも、言葉にするのは案外難しいなぁ
と思いながら・・
今回もぼちぼち書いていきます。


占い師は物語を紡ぐひと

私が占いに携わるようになってから
気づけばもう20年以上経ちましたが

占いを深めていけばいくほど
占い師って物語を紡ぐひとだなぁと
じわじわ感じるようになったんですね。

私がすごく影響を受けた書籍の一つ
小説家 小川洋子先生の
『物語の役割』という著書があるのですが

小川先生の本のなかで、
物語はこんな風に表現されています。

物語とはまさに、普通の意味では存在し得ないもの、人と人、人と物、場所と場所、時間と時間等々の間に隠れて、普段はあいまいに見過ごされているものを表出させる器ではないでしょうか。
(中略)
あいまいであることを許し、むしろ尊び、そこにこそ真実を見出そうとする。
それが物語です。

ちくまプリマ―新書『物語の役割』小川洋子著 P118 より

そう、世の中には
あいまいで言葉にならないけれど
大切なことがすごくたくさんあります。

たとえば
人の感情とか感覚もそうですし
「生きる」というテーマについても
そうだと思います。

普段はあいまいに見過ごされているもの
それを分析して明確するのではなく

あいまいさを許し、尊び、
そこから真実を見出そうとする。

小川先生の言葉では
「物語の役割」として
書かれていますが

私からみると、
それは同時に占いがしていることと
すごく似ているようにも思えるんですね。

占いって
マーケティングの見せ方のせいか
「当てもの」とか「深淵なるもの」
といった印象を持たれている方も
多いかもしれません。

でも、実は
あいまいで見過ごされていたり
言葉になっていないもの

そういったものを
すくい上げて意味をもたせてあげる
奥深い世界なんですよね。

たとえば
人生の転機で
就職がうまくいかない学生が

何十社受けても受からない
もうダメなんじゃないかと自暴自棄になって
ふっと占いにくる。

学生さんは
・いつ採用がもらえるのか?
・どこの会社と縁があるのか?
・このまま自分はどこに向かうのか?とか
そういったことを知りたいわけだけれど

正直、そんなの誰にも分からないわけですよ。

仮にね、もし神様が
ほんの少しの未来を見せてくれたとしても

それは、現時点の可能性であって
今この時点の意識の持ちようによって
いくらでも変化する可能性がある。

だから、そのときに
「あなたはこうなります」と言ったところで
それは一つの可能性を示しているに過ぎない。

じゃあ、そのとき
学生さんが曖昧な未来への
可能性を探求していくために

占い師ができるのは
占いというツールを通して

・可能性や選択肢の広さを見せてあげること
・その人自身の意味を思い出させてあげること
・未来をちゃんと自分で創っていく力を取り戻すこと

そして
その先の物語を一緒に紡ぐこと
だと思うのですね。

もし相談者が
もっと年齢を重ねた人だったら
歩んできた過去に光を当ててから
その先の物語を一緒に紡ぐことになるかもしれません。

どちらにしても
占いがしているのは
その人の物語を一緒に紡いで
生きる力や前を向く力を取り戻してもらうこと

しかも
占いの”場”というのは
一般の社会から少し外れたところで
普通の在り方では存在していなからこそ

自分のもろさや欲を
素直にさらけ出せるところでもあり
自分の弱さを受け入れられる場所でもある
と思うんですね。

本来の人間らしさを
隠さずにいられるというか‥

自分の物語をありのままに紡げる場所

だから
占いは未だになくなることなく
存在できているのではないか
そんな風にも思っています。

物語のチカラと占い その1

占い師が物語を紡ぐにとしても
その前提にはやっぱり
そもそもの物語のパワフルなチカラが
存在しているからこそ、だと思うんですね。

じゃあ、占いが恩恵を受けている
その「物語のチカラ」とは何なのか?

ここからは
物語が人に影響をあたえる
「物語のチカラ」について
一つずつ掘り下げて書いてみようと思います。

「物語のチカラ」1つ目

それは、私たちは物語を通して
「自分ごとにできる」ということ。

前の記事でも触れましたが
「生きる」というテーマ
ひとつをとっても

いきなり
頭で理解しようとしたり
考えようとしても
なかなか難しいことが多い。

でも、物語を通すと
案外すんなりとイメージできたり
受け取ることができたりします。

たとえば
すごく偉い宗教で悟った人が

「生きることには何の意味もないんですよ
 これが世の中の真実です。
 だけど、その中で生きるのが人生なんです」

と言ったとします。

もちろん、頭では理解できると思うんです。
そうなんだ、意味はないんだな、と。

一方で
余命幾ばくかの病気を抱えながら
一生懸命に生きてる人を
目の当たりにしたり
そんな物語に直で触れると

人は、何かしら自分なりの
「生きるってこういうことなのかな」
ということを感じて、考えることができる。

この方が
パワフルに人生に影響を与えてくれることが
多々あるんです。

それは、
物語を通して「自分ごととして」
体験することができるから。

心理学的に言うと「投影」になるんですが
人って「投影」をしないと
自分ごとにならないことが多いんですね。

だから、人は物語を通して
色んな人生なり、様々な感情の体験をしながら

自分の中の真実を炙り出していくんだと思うんです。

物語のチカラと占い その2

物語のチカラの2つ目

それは、物語には
「続きがあること」

もちろん
それぞれの物語のなかでの
エンドというものはあるけれど

でも、その先も想像できる。
これがすごく重要だなと思うんですよね。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが
千夜一夜物語(アラビアンナイト)という話があります。

簡単に内容を要約すると

その昔、インドと中国を治めていた王がいました(物語上の架空人物)
ある時、王は妻の不貞を知り、激昂して妻と相手の奴隷たちの首をはねて殺す。
女性不信となった王は、これを機に、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝にはその首をはねることを繰り返していました。
こうして街から次々と若い女性がいなくなっていきます。
王の側近の大臣は困り果てましたが、その大臣の娘シェヘラザードが名乗り出て、これを止めるため、王の元に嫁ぎ妻となります。
明日をも知れぬ中、シェヘラザードは命がけで、毎夜、王に興味深い物語を語りました。
話が佳境に入った所で「続きは、また明日」そして「明日はもっと面白い」と話を打ち切る。
王は話の続きが聞きたくてシェヘラザードを生かし続けて1000日。ついにシェヘラザードは王の悪習を止めさせることとなります。

この物語では、話の続きを知りたいから
シェラザードを生かしておくことにしたのですが

先を知りたいという気持ちは
私たちに生きる気力
それ以上の何かをもたらしてくれる

そんな風に感じるのです。

以前、私が現場で占いをしていたときに
深夜に電話がかかってくるんです。

「もう死にたい」と。

でも、そのときにね
占いを通して伝えるんです。

「大丈夫よ!
 あなたはこうなってこうなってこうなる
 今の状況は必ず変わっていく」と。

そうすると
人って不思議と
生きる気力を取り戻すんですよ。

明日の続きを見てみたいから
物語で言うと
次のページをめくってみたいから

「もう一日生きてみようかな」と。

それで人が生きることができるなら
私は十分だと思うんです。

「物語の続きを知りたい」

ただ、その気持ちだけで
人は生きることができる。

当たり前ですが
私たちは生まれたときから死に向かって
ずっと変化し続ける生き物

だから、今どんな状況にいても
いずれ状況は必ず変わっていくんですね。

だけど、「死にたい」と
電話をかけてくれた子には
物語の続きがあるとイメージができない。

そのときに、占い師が
「第1章では死にたいみたいやけど
 第2章ではそうじゃないかもしれないよ」
と言ってあげることで

「あ、そうか
 変わっていくかもしれない
 続きがあるかもしれない」

「点」でしか捉えられなかったものが
その先に繋がっていく
「線」として捉えられるようになる。

物語にはそれを伝えられる力があるんです。

だから、
私たちは変化し続ける生き物なんだ
というのがもっと当たり前になっていたら
もっと楽に生きられる人は
沢山いると思うのですよね。

物語のチカラと占い その3

物語のチカラ3つ目

人は物語を通して
「喪失を癒すことができる」

これは、私がグリーフケアを学んで確信したことです。

グリーフケアというのは
死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみや痛みに寄り添い、立ち直り、自立できるようケア・サポートすること。

私は幼いころに、身近な従姉妹を失うという
喪失体験をしたのですね。

それが原点となって
「死」と「命日」を結びつけるという
『命日占い』を執筆したのですが

その執筆の際にも、
様々な人たちの喪失体験に触れてきたわけです。

そして、もっと深い部分
人が喪失を乗り越えるために必要なものを学ぶため
自分自身のためにもグリーフケアを深めてきました。

でね、
グリーフケアでは

・結局どこが終わりなのか
・どうやったら癒されたと呼べるのか

というのが問題になるのですね。

だって、
亡くなった人って帰ってこないし
寂しいのはずっと寂しい
悲しいのも悲しい

じゃあ、グリーフケアが
ちゃんと進んでいますというのを
どこで判断するかと言うと

その遺族が
「自分なりの着地点を見つけること」
らしいんです。

それを私なりの捉え方・言葉でいうと
「自分なりの物語を描くこと」だなと
思ったんですね。

たとえば
奥さんを亡くされた方がいたとして
もちろん全然乗り越えられないんです。

なんで先に亡くなってしまったのかとか
自分に何かできなかったのかとか
色んな思いが消化できていないわけです。

でも、昔のこと語ってる時は
ふっと顔が緩むんですね。
奥さんとこんな旅行行ったとか
あそこにいった時楽しかったとか

それも物語なんですよね、その人の中の。

そういう思い出を僕の中に残してくれた
だから僕はこの思い出と共に生きていくんだっていう
物語の中にいらっしゃるんです。

それが物語がもたらしてくれる癒し。

その先で

「それでも私は生きていく」とか
「この痛みを抱えて生きていく」とか
「ここに使命を見出す」とか

自分なりの物語を紡ぐことができれば
人はとりあえずは前を向いて
生きていくことができるらしいんですよね。

そこまでがもちろん大変なわけで
その状況になるまでが
すごくすごく大変なんですがね。

「喪失を癒すことができる」
これも物語の力なんだろうと思います。


だけど、そうはいっても
喪失体験をしたときとか
絶望して人生に悩んでる時って
もう考える気力すらない状態

そんなときに
自分で物語を描こうなんて
正直いって無理な話なので・・

だから、そこに
ふっと占いがあったらいいな
と私は思うわけです。

悲しさ、寂しさ、絶望、後悔とか
全部ありのままの自分を出しながら

占い師は
その人の気力を補いながら
目の前の人の歩みに光を当てていく
そして、一緒に物語を紡いでいく。

こんな占い師でありたいし
そんなスタンスで
占いに携わる人が増えてくれたらいいな
そんな風に思っています。

この想いがベースにあるから
私が創ってきた講座や書籍にはすべて
物語のエッセンスがたくさん散りばめられています。

まとめ

今回の内容をまとめると

・物語と占いはすごく似ている
・占い師は物語を紡ぐひととも言える
・占い師が物語を紡げるのは、そもそも物語のパワフルさがあるからこそ
<物語のチカラ1>
物語は自分ごとにできるから、自分の中の真実をあぶりだすことできる
<物語のチカラ2>
物語には続きがあることで、続きをみたいワクワク感や気力が生まれる
<物語のチカラ3>
物語によって、人は喪失体験を癒すことができる
・占い師には物語を扱える人であってほしいという想いから
まゆちんの講座には物語のエッセンスが沢山散りばめられています。

****

いま、物語を語る必要性があると思うのは
多くのひとの生きづらさを
以前より、すごく感じるようになったから。

きっとね
人は、あるときから
目に見えるものや便利なもの
快適なものを追い求めすぎたのだろうと思うのです。

もちろん
それは素晴らしいことだし
生活にも社会にも改革がおきて
ある部分では生きやすくなった事実はあります。

でも、一方で
それが、逆に自分たちの生きづらさを
生み出してしまっているかも
と感じることが多々あるんです。

たとえば、
「死」という概念ひとつにしても
以前はなかった選択肢が増えてきて
様々な問いが生まれます。

どこからが死なのか
どこから生なのか
それを決めるのは誰なのか

という風にね。

こういった
目に見えない、曖昧なものって
わたしたち一人ひとりに
考える余白が残されているともいえる。

だからこそ、今わたしたちには
もっともっと物語が必要なんだと思います。

たくさんの物語に触れて
たくさんの生き方や価値観に出会う
そして、自分なりの物語を更新しつづけること。

その先で
曖昧なもの、その隙間や余白に
それぞれの物語を通して
お互いが意味を与え合おうとする。

そんな世の中になったら
もっと世界は豊かになると私は思っています。

今回もお読みいただきありがとうございました!

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