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カスタマーサクセス業務のプロセスの言語化と改善(その1:現状の言語化編)

カスタマーサクセスの鉄板御作法。
顧客LTVを最大化させていく上で接点を取る際はどんな状況であっても
「Time to value」を意識する。
顧客との行動計画をロードマップ化し、つまづくポイントを予見し、
とにかく1ミリも迷わせない。常に顧客の行動や感情を先読みしてリードする視点で顧客接点を推進する。

カスタマーサクセスという仕事の中でも、私自身のこだわりとして、
この概念をベースに、オンボーディングフェーズの状況ではどんな顧客でも一定の期間内で100%完了させる仕組みを作ってきました。

今の仕事の中で、新しい領域にチャレンジをするタイミングになったので、
このタイミングで、属人化からの脱却ヒントを言語化しておきたいと思います。

今のカスタマーサクセスプロセスについて属人化からの脱却プロセスを
作りたい方はもちろん、カスタマーサクセスを始めたばかりの方も、
これから紹介する流れで現状把握を進めると、顧客理解の解像度を上げることができるかなと思います。

カスタマーサクセスの「属人化」脱却3つのヒント

これまでの経験を踏まえると大きく分けて以下3つのプロセスに分けらます。これから3回に分けて、それぞれの観点で、私自身の経験から得られた様々なポイントをシェアしてみようと思います。

▼As is(現状)を言語化する
▼To Be(あるべき姿)を考える
▼ギャップを元に現状の課題を特定し、優先度を決めて着手する

この記事では、最初のプロセスとして、
As is(現状)の言語化プロセスについてまとめてみます。

1.まずは思い込みゼロで、「どっぷり」顧客との対話に
浸かってみる

「どっぷり」というのが曖昧なので、定義しておくと、
いわゆる顧客との対話の時間に最大限のリソースを使い、
全ての顧客との会話の内容をログ化しておく。
できれば、以下の5つの視点でこの時に言語化しておきたい。

<5つの視点>
・顧客の課題と背景(どんな問題が起きているのかが特に重要)
・プロダクトで解決できること/運用提案で解決できること
・課題に応じたカスタマーサクセスの提案や解説
・顧客の行動とつまづくポイント(ポジ・ネガ両方)
・顧客からの要望

注意点としては3つ。
1.ここでの気づきはいきなり抽象化しないこと。
具体的なキーワードは後の過程で拾っていけるようにすることが重要。
2.数としては最低でも20-30社程度の顧客と対話を必要とする。
3.対話のサンプルは、以下3つのセグメントを重視する。規模感や業界、リテラシーによって顧客の置かれている状況や行動が異なるケースがあるため。

<3つのセグメント>
・対象法人の規模感(大手・中小等)
・対象法人の業界(製造業・サービス業)
・先方のモチベーションとリテラシー

2.「匂い立つ」レベルで顧客の感情や行動を言語化

属人化を脱却させる上で重要なのが、
設計者が「顧客の行動や感情の変化」を匂い立つレベルでイメージできているということ。ここの肌感が曖昧だと、成果に対する背景が想像できない。
例えば、導入後、顧客が最初に抱く感情や、カスタマーサクセスからの支援をベースにネクストアクションをどのように意思決定するのか、自走するまでのつまづく要素やその要因、顧客側でコントロールできる問題なのか。
「顧客の行動:言葉」=「6:4」の割合をベースにヒントなるシーンを振り返り、言語化してみる。

自分が顧客だったらとも考えがちだが、入社して間もないのであればこの感覚は割と正常に働くが、ある程度入社の期間が経つとバイアスがかかってしまうので、おすすめはできない。あくまでも顧客の行動や言葉を重視してまずは作ってみる必要がある。

3.現場のハイパフォーマーと壁打ちしてみる

できれば同じカスタマーサクセスのハイパフォーマーと、壁打ちしておきたい。認識の相違がないかだけでなく、起きていた状況の背景について、いろいろなメンバーの方の示唆を得られるようセッションをしてみると良い。
同職種だけでなく、マーケティング、IS、セールスのメンバーの方とも壁打ちしてみると良い。導入後の顧客の言動だけでなく、前工程を含めたプロセスが見えてくるので、何人かと意見を交わしてみると、解像度がさらに深まる。

4.いきなりHOWに走らず、5つの視点で事実を整理

顧客や社内のメンバーと対話を続けながら、上記の1で紹介した5つの視点で整理してみる。特に重要なのは、顧客の課題と背景。
・顧客は誰の何を「不」を解決したくて導入を決めたのか(Why+What)
・課題の背景は(Whyのwhy)
・課題によってどんな問題が起きているのか(Whyのコアなポイント)
・プロダクトやサービスに期待していることは何か
ここが全ての事実把握の中心になるので、
社内外の様々な声をベースに抽象化と具体化を行ったり来たりしながら、
自分の言葉で言語化できるまで言葉を磨いていく。

あわせて、顧客(と社内で得られた示唆)から得られた事実が、
先に挙げた3つのセグメントで変動要素があるかどうか整理できると良い。

<3つのセグメント>
・対象法人の規模感(大手・中小等)
・対象法人の業界(製造業・サービス業)
・先方のモチベーションとリテラシー

ここまでまとめた内容について、改めて社内のメンバーと
壁打ちするとさらに解像度が上がる実感が持てるようになる。
とにかくここのプロセスは一人で考察しすぎず、整理していく上で少しでも
疑問が出てきたら、社内の様々な方に意見交換できると良い。

5.考察を元に新たな顧客と向き合い、行動につながらない要因を探る

上記1-4のプロセスを磨き続けるうちに、
顧客の行動や変化を自分の言葉で言語化できるようになってきたら、
先の5つの視点をもとに、これまで得られた事実が他の顧客でも起きている
状況か、把握してみると良い。

例えば、オンボーディングプロセスの中で、顧客に何らかの機能活用に関する行動を促しても準備が進まなかった場合、その要因を探っていくと、
以下4つの理由に分類できるケースが多い。どのケースに当てはまるかを仮説立てながら検証していけると良い。

顧客が行動しない4つの理由

1.顧客に「自社にとってのベネフィット」が伝わっていない

表現の内容が顧客にとって抽象度が高い/もしくは具体的すぎる
顧客にとってのベネフィットが伝わっていない
(ユースケースの言語化が曖昧)

2.顧客が受け入れるタイミングが「今」ではない

顧客の行動の変化を考慮せずに、カスタマーサクセスが一方的に提案をしてしまっているケース。「必要だと思って提案したのに、活用が進まない」ケースではだいたいこの状況が起きている。

3.活用に向けたガイダンス不足により行動が停滞してしまった

機能を使う上での操作方法が、顧客にとって複雑かつ難解であり
挫折してしまうケース。

4.CSが顧客自身のの「必要性を感じない」バイアスと向き合いきれていない

「必要性がない」と言われてしまうと、思わず納得してしまいがちだけど、
顧客自身の課題や背景の把握が曖昧なケースでこのバイアスと出会うと、
たちまち太刀打ちできないケースに陥ってしまう。
顧客は自分自身の状況を必ずしも正確に言語化できているわけではないので、顧客の考えていることを正と捉えず、前提を疑いつつ、本当に必要かどうかを客観的な視点でも判断できるようにしたい。

次回予告

次回は課題解決の重要性優先度(インパクト)を決めるプロセスについて
まとめてみたいと思います。

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