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感動なき再会に感動したの巻

3週間ぶりに家族に会った。うつすのが嫌で、すぐ近くに住んでいる母と弟には会わないようにしていた。

今日、弟から「今晩春巻き作るんだけど、お姉ちゃん、来る?」と言われて、いくことにした。3週間近く自己隔離して、感染させるリスクは相当程度に低いと思われたから。

自主的に自己隔離して2週間余、ずっとひとりで部屋にこもっていた。直接話すのは、おしゃべりな八百屋のおばちゃんくらい。それも2こと3ことくらいで、その他はオンラインで話すけれども、何かが……足りないのだった。

私が行っても、弟は「よ」と言うだけ。母は「ビールが冷蔵庫に入らなくて!」「春巻きがめくれちゃって!」といつもの通りぶつくさ言っている。いつもの通りの席次で、みんなでマツコ・デラックスの番組を見ながらごはんを食べて、弟のバカ話にゲラゲラ笑って、お風呂に入って帰ってきた。

「感動の再会」的なシーンは、ひとかけらも、ない。でも、私の中では、もう泣きそうなくらい心地よくて、有難くて、家に帰った今でも、まだぼうっとしている。そんなことは、家族には一言も言っていないし、これからも言わないけれども。

群れるのは嫌い。だから一人で仕事を始めた。平時はそれでよかった。一人でも平気だったし楽しかった……なのに、こういうことになって気が弱くなったのか、もともとそうだったのか、人が好きで、何も言わなくてもいいから、その息づかいとか、存在感とか、近くにいてほしいんだなわたしは、ということに気付いてしまった。こんなにしっとりと情やぬくもりにはりつく自分に引いたり驚いたりしているのだった。それはそれで、有難いものを見せられている今なのかもしれない。

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