創作怪談 『何処かで聞いたような話』

  何処かで聞いたことのあるような、ありきたりな話でつまらないのだが、私が唯一経験したことのある心霊体験だと思われる出来事の話をしようと思う。正直に言うと、あれが本当に心霊体験かは分からない。怪談話で似た話聞いたことがある気がするので、勝手にそうだと思っている。

 本当によくある話の導入なのだが、私はその日会社で残業をしていた。終業間際、急に明日の朝までに終わらせろと、言われてムカつきながらも作業をこなしていた。定時も過ぎて、私以外は誰もいなくなってしまった。1時間、2時間と時間は過ぎて、気がつけばもうすぐ日付が変わってしまうという時間帯になってしまった。

急に、複合機の動く音が聞こえてきた。複合機がある部屋は今いる部屋の隣だ。誰か他に人が残っていたのだろうか?

疑問に思いつつ、すぐ終わるだろうと音を無視して作業を進めていた。しかし、いくら経っても音が止む気配がない。
周りが静かだからか音が響く。
随分と長く音が続く、流石に気になってくるし、なんだか音がだんだん大きくなってきている気までしてきた。

印刷しないといけない資料もあるし、集中力も切れたので、流石に様子を見に行くことにして、椅子から立ち上がる。

扉に付いている小窓のすりガラス越しに、誰かの影が見える何となくだが、女性のように見えた。
お疲れ様でーすと声をかけつつ、扉を開けた。

そこには誰にもいない。
ただ、複合機が紙を吐き出し続けているだけだった。

見間違いだっただろうか?
機械を止めようと、近づき操作パネルを弄ると、特に何事もなく止まる。
吐き出された紙を見てみると白紙だった。
壊れているのか?と、適当にコピーをしたり、
印刷したりしてみたのだが、特に異常はなさそうだった。

明日報告すればいいかと部屋を出る。
部屋の電気つけっぱなしなの誰だよ……
そう思いながら電気を消して部屋を出た。

なんだかんだ、その後20分ぐらいで作業が終わり、買っていたお茶を飲みながら伸びをしていた。
すると、また複合機の動く音が鳴り始めた。

少しだけ、身震いした。
荷物をまとめ、作業していた部屋の電気を消し、複合機の置いてある部屋の方へと向かう。

小窓越しに電気がついているのがわかった。
さらに先程も見た人影もある。

嫌な予感がするが、思い切って部屋を開けるが先程同様、誰もいない。

そして、機械は白い紙を吐き出し続けている。

多少ビビりながらも、近づき機械を止めて、部屋の電気を消して、逃げるように部屋を出て家路を急いだ。

翌日そういえば、帰り際に吐き出された紙をそのままにしていたなと思い至り、毎日一番に会社に来ているという先輩に複合機と紙について尋ねてみるが、何も無かったと言われた。
これが、私の体験した唯一の何処かで聞いたことのあるような、ありきたりな話でつまらない
心霊体験だと思われる出来事の話。


 



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