創作怪談 『深夜のドライブ』
車の免許を取ってから、時間があればドライブをするようになった。
車も買った。
そんなにいい車種という訳では無いが、結構気に入っている。
目的地を決めて、友人は恋人を乗せる時もあれば、1人で気ままに走らせる事も多い。
その日も1人で車を走らせていた。
休みの前日、結構遅い時間だったが、急に思い至り深夜のドライブを決行する事にした。
窓を開け、風を感じながら運転をしていた。
空気が気持ちいい。
時間は12時位に家を出て、今は2時だ。
他には走る車もいない、時々大型トラックとすれ違う位。
流石にいい時間だ、帰るかと思い家への車を走らせる。
なんだかんだ眠くなってきたなぁと、欠伸をしつつ、行きがけに買ったコーヒーを1口飲む。
家の近所の橋に差し掛かった。
街灯が古く、ちょっと薄暗い印象だ。
橋は結構長い、ちょうど半分ぐらいに来た時だった。
急にピーピーと音が鳴る。
シートベルトを着用していない時になる警告音だ。
色々確認すると、どうやら助手席が何故か反応しているらしい。
チラッと横目で確認する。
重さで反応する事があるらしいが、助手席には朝ご飯用にコンビニで買ったサンドイッチやおにぎりしかない。
身体がズンと重くなった感覚がする。
次の瞬間、急に手を掴まれる感覚がする。
掴まれている感覚はあるが、何も見えない。
手が動かない。
見えない手に、ハンドルの操作ができないように抑えられている。
どうにか動かそうと必死になるが、やはり動かない。
「ふっざけんな!!!離せ!!!」
恐怖よりも怒りが勝った、せっかくの楽しいドライブを邪魔された、そんな気持ちになってしまい、大声で怒鳴る。
そうすると、身体は軽くなり、手もパッと離される感覚がある。
急に身体と手が動くようになり、思いっきりハンドルを切ってしまった。
危ないとブレーキをかける。
対向車線に入ってしまったが、特に危なげもなく、停止することができた。
夜中で他に車通りがなかったのが幸いした。
「あっぶな……」
そう呟く。
危機は去ったのだが、未だにピーピーと警告音が鳴っている助手席を見る。
「おい!出てけよ!」
そう言うと、警告音は消える。
「……嫌に素直だな?」
私は窓を閉めて、車を動かす。
その後は全くもって何も起きず、無事に家にたどり着くことが出来た。
正直、あまり怖い話というのは得意では無い。
あの時よく怒鳴りつけることができたなと我ながら思う。
あんな経験はもう嫌なので、深夜にはドライブしないことに決めた。
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