創作怪談 『深夜のテレビ』

  その日は疲れていたのか、ソファーで寝てしまっていた。
適当に買って食べたコンビニ弁当の空いた容器は、テーブルに放置されていて、余程ぼーっとしていたのか、ペットボトルのお茶の蓋も閉めずにそのままだったらしい。
テレビもつけっぱなしで、放送されていない時に出てくるカラフルなあれが映っていて、ピーッと音が鳴っている。
あれ?今番組やってないのか?これって今もあるんだなんて思っていると、急に真っ黒な画面になった。
え?壊れた?そんなことを思い、リモコンを手に取り、適当にポチポチとザッピングすると、特に壊れたということでは無さそうだ。
ほっとしつつ、電源ボタンを押した。
片付けをしてから寝室へと向かう。

  その時は、特に気にもしていなかったのだが、
別の日、たまたま夜中にトイレに起きた。
寝る前に喉が渇いたからとジュースを飲んだのだが、そのせいかもしれない。
少し肌寒く、トイレに行くのが少し億劫で、ゴロゴロとしていたのだが、流石に膀胱が限界を迎えそうだったので、トイレへと向かう。
  トイレへ向かうにはリビングを通る必要がある。
寝室とリビングを繋ぐ扉を開けると、何故か少し明るい、あのカラフルな画面、そしてピーッという音が鳴っている。
テレビつけっぱなしだったのか……
と、リモコンを探してテレビを消した。
用を足して、また寝室に戻るためにリビングへ入ったのだが……
テレビが点いている。
ちゃんと確認したのに……
そんなことを思いながら、サッとリモコンの電源ボタンを押し、画面が暗くなったのを確認し、急いで寝室へ向かう。
結局、何だかあまり寝れなかった。

  また別の日、またソファーで寝落ちしてしまっていた。
その日はサブスクで気になっていた海外ドラマをテレビで流して観ていた。
正直思っていたより……と言った感じで、途中で飽きてしまった。
スマホをいじりながら、ソファーに寝転んでいた。

微睡んでいるとビクッと、身体が跳ねて起きた。
体を起こすと、またテレビ画面がカラフルになって、ピーッと音も鳴っている。

流石におかしい。
故障かもしれない。
結構古いもんな、そう思いながらも何だか嫌な気分だ。
元々あの画面と、音は何だか不安を煽るものであるのは置いておいて、何だか少しだけ、ゾワゾワとした感覚がした。
テレビを消して、寝室へと急ぐ。
その日もあまり眠れなかった。

  翌日、さてどうしようか、いっその事テレビを捨ててしまおうか。
修理に出すか?高くつきそうだ、古いし買い換えるか……
そんなことを考えながら仕事をこなしていた。
   帰宅して、すぐさま行動に移す。
テレビの電源コードのプラグをコンセントから抜いた。
これで大丈夫だろう。こんな簡単なこと思いつくのになぜ丸1日もかかってしまったのか。
今度の休みにでも新しい物を買いに行こう。

   その日、寝室で寝ていたのだが、ふと目が覚めた。
前と違ってトイレに行きたいと言う訳でも無く、本当にたまたま目が覚めたのだろう。
目を閉じ、もう一度眠ろうとするのだが寝れない。
そうしていると、何だかトイレへ行きたくなった。
流石にプラグを抜いたので大丈夫だろうが、正直行きたくない。
何か嫌な予感がする。
とはいえ、行かなければなぁとベッドから立ち上がった。

   リビングへの扉を開けると、案の定というべきか、テレビが点いている。
ピーッという嫌な音と、カラフルな画面。
ありえない、そう思いながらも近づいて、テーブルの上にあるリモコンを操作してみる。
ダメだ、消えない。
テレビには近づきたくないが、プラグを確認するために近づいてみる。
プラグは外れていた。
気がつくと、ピーッという音がしなくなった。
あれ?切れたのか?
そう思い画面を見る。
画面は真っ暗になっていた。

やっぱり故障だろうか。
そう思った瞬間。

テレビ画面が急に明るくなる。
よく聞くSEや、BGM、誰かの歌声、笑い声や色んな人の話し声が同時に大きな音で流れ出した。
画面にはテレビ番組が映し出されている。
バライティやドラマ通販番組、スポーツの試合の様子など、ザッピングをするかのように切り替わる。
その番組はどれも見覚えのないもので、番組に出ている人物も知らない人達ばかりだ。
野球選手が着ているユニフォームも知らないものだった。
切り替わっていたかと思ったら、細切れに番組を切り取って、それを重ねたように、雑にコラージュされたかのように組み合わさる。

怖い。
驚きのあまり、叫びそうになるが、カラカラになった喉は何も発することができなかった。
身体は動かすことができた、画面からは目を離さず、ジリジリと後退し、寝室の扉を後ろ手に開き、急いで中に入った。

ベッドに入り、布団を頭から被る。
何も見なかった、何も……
必死に、何度も頭で繰り返していると、いつの間にか寝ていた。

翌朝、ゆっくりと寝室の扉を開けて、まずは音を聞く。
特に何も音はしない。
それからまた少しだけ扉を開いてテレビの様子を見ると、画面は真っ暗になっている。

とりあえず、テレビを持ってゴミ置き場まで運ぶ。本当はダメなんだろうが関係ない。
とにかくこれが家にあるのが嫌だった。
乱雑に放り投げるように置くと、一瞬、ほんの一瞬だけ、あのカラフルな画面が見えた気がした。











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