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感性の土壌をつくる

ここのところ、猛暑やら、台風やらで、
なかなか外出できていなかったので、
久しぶりに息子を外に連れ出しました。

うらわ美術館で開催中の
「ぼくと わたしと みんなのtupera tupera 絵本の世界展」へ。

tupera tuperaさんは、
姪っ子が遊んでいた「顔ノート」で知りました。
傑作ですね、本当に面白い!
姪っ子の作った顔に、お腹を抱えて笑ってからというもの、
いつか自分の子どもが産まれたら、
絶対一緒に遊ぼう!と心に決めていたほど。
先日、夫の仕事の関係で、ご家族で来日されたイタリアからのお客様にも、
3歳の男の子へ「顔ノート」シリーズ3巻セットをプレゼントしました。
楽しそうに遊んでいたとのこと。
(この展覧会で知ったのですが、翻訳物のたくさん出ていて、
絵本「しろくまのパンツ」はヨーロッパ圏でも翻訳されていました!)

息子にとっては、初めての美術展ということで、
満を持して、前向き抱っこに初挑戦しつつ、
電車、バスを乗り継いで向かいました。

ただいま、5ヶ月半の息子は、
最近、奇声を発するのがブーム(4ヶ月検診の際、保健師さんから「奇声を発しても驚かないでくださいね!」と念押しされていたけれど、おののきました…)。
電車でもバスでも、じっとして居れず、
外出するのが億劫になっていたのですが、前向き抱っこにしたら、
見える景色が広がって、随分静かになりました。
おかげさまで、展覧会もおとなしく一緒に鑑賞できて、ほっとひと安心。
息子の目線に合わせて、腰を落とし、
「わぁ、面白いね」「綺麗な色だね」「細かいねぇ」など声をかけつつつ。
ちゃんと見ていたかどうかは、定かではありませんが。

ここ最近、寝つきが悪かったのものの、
久しぶりのお出かけから帰ると、
お風呂から上がってすんなりと寝てくれました(すぐまた起きるけれど)。
身体の疲れだけではなく、
心の刺激にもなっていたのかな。

___

「え〜、それも覚えてないの!?がっかりしちゃう!」

母から、ここに連れてった、あそこに行ったよね、と言われ、
「ごめん…覚えてない…」というしのびない返事をして
肩を落とさせてしまうことがしばしば…

記憶力はいい方だとは思うけれど、
中学生以前の記憶、殊にお出かけの記憶が曖昧で、
写真を見て思い出したり、記憶を上書きしたり。

そんな落胆する両親を見ていたので、
いざ、自分が親になった時、
いろんなところに連れて行くのって、どうせ覚えてないし、
親の自己満足で、子どもにとっては無駄なのかしら?
と思うかといえば、全くそんなことはないのである。

もちろん、自分が子どもと一緒にお出かけできてうれしいのだけれど、
子どもにとって、全くの無駄足かといえば、
決してそんなことはないはずだと感じる。

よくわからないカラフルな作品を見る。
住んでいるところとは異なる気候の場所に行き、
いつもと違う光りを目で感じ、
いつもと違う湿度の風を頬に感じる。
食べなれない食事の香りの混じった空気の匂いを嗅ぐ。
音楽に身体をゆらしながら、高揚する大人たちの声を聴く。

記憶には残らないかもしれないけれど、
趣味嗜好などに何らかの影響を及ぼす一因、
人となりを左右する感性を培う
土壌を肥やしていることになるのではないか、
という気がする。

覚えてなくてもいいから、
いろんなところにたくさん連れて行って、
いっぱい感じてほしい。
記憶には残らなくても、感覚で、身体は覚えているかもしれないのだし。

___

絵本の原画や、習作、映像に立体作品、
館内に潜むいたずらな仕掛けまで、
訪れていた赤ちゃんからじじばばみんなが、
楽しい時間を過ごすことのできる、まさに好感しかない空間でした。
(ベビービョルンを装着して、孫を連れて歩くおじいちゃん、
現代的でカッコよかったな〜)

作品も素晴らしかったけれど、
作品に添えられたコメントから、
ご夫婦であるtupera tuperaさんの子育てに対する姿勢がかいま見え、
それがまた、すごく心を打たれました。

なかでも、
一大イベントだという節分に対する意気込みのすさまじさ。
2012年から2017年までのオニのお面が展示して合ったのですが、
その、恐ろしいこと恐ろしいこと…
年々、怖さと大きさが増し、最終的には立体にまでなっていて…
何度も引き返しては、「こわっ!」と見入ってしまいました。
(怖いのに見ちゃうって、子どもと一緒ですね。)
2014年の鬼、怖かったな〜。
息子にも「怖い?どう?」と恐る恐る近づけてみるも、
どうやらまだまだへっちゃらのよう。

これを装着して、BGMをバックに、
Tシャツにパンツ一丁の四つ這いで(と書いてありました)迫ってきたら、
トラウマになるんじゃないかしら…

と心配になるほど、本気で取り組む姿勢が素敵だなと、
お手本にしたくなる家族の姿に出会えて、得した気分です。
他にも、娘さんがお財布から楽しそうにカードを引き抜いていたところから着想を得たという、やさい畑という作品。
これも、子どものいたずらに、
「やめて〜」とか「ダメ〜」と言ってしまいがちな場面で、
もっと楽しめるようにと工夫して作ってしまうところが、
イライラと無縁で健全でいいな。

仕事に直結している職業柄というのを抜きにして、
どんな状況でも面白がる親の姿を見せることができたら、
子どものバイタリティが培われるかも。
自分で自分の機嫌が取れるような子になってくれれば、
もう無敵なんじゃないかという気がします。

少し家から遠かったけれど、
えいやっと出かけてみてよかったです。

8月31日(金)まで開催中なので、
一人でも、二人でも、お子さんと一緒に、
それから、妊婦さんも子どもとの夢を広げに、
ぜひ足を運んでみて下さい。

麻佑子

#日記 #エッセイ #子育て #育児 #アート #美術館




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