クリスマス

仕事柄ありがたいことに、クリスマスにワインを頂戴することが多い。

今年もカタルーニャの若手醸造家からクリスマスプレゼントを頂いた。
「プレゼントありがとう!もう、サンタみたいだね!」とお礼のメッセージを送ったところ、「いや、カガティオだから。サンタはアメリカンやし」と返事があった。

カガティオは、カタルーニャ州独特の文化で、サンタのようにプレゼントを持ってきてくれる丸太である。カタルーニャの伝統的なバッレット(赤い帽子)を被り、顔もついている。
普段は山に生息し、クリスマスの時期になると山から降りてきて家のドアを叩く。
それぞれの家庭では、丸太を招き入れ、暖かいように毛布に包んでクリスマスツリーの下あたりにティイオの住処を作る。毎日ご飯の残りや、食べ終わったみかんの皮などをあげてどんどん太ってもらう。
クリスマスイブ、または当日(家族の文化背景によって異なる)に、子供たちは歌を歌いながら、杖でカガティオを叩く。
歌が終わって毛布を捲ると、家族にたくさんのプレゼントをカガールしてくれる、ありがたい丸太なのだ。

カガールは 「ウンチをする」 という意味の動詞で、カガ・ティオは直訳すれば 「ウンチおじさん」 となる。
カタルーニャに住む外国人は大抵これにびっくりする。
クリスマスの会話にも 「ティオはいつカガールするの?」 「うちは24日」、「なにカガールしてくれた?」 「色鉛筆セット!」、「いいなー」という会話が交わされる。
カガティオは妖精でも、聖人でもない。
カタルーニャ地方だけに伝わるクリスマスの風習。
なぜカガールなのかというと、堆肥を意味するようだ。畑に堆肥をまく=たくさんの収穫。かつて農業が生活に密着していた頃の名残りだろう。

私の同世代の友達に聞くと、小さい頃パパ・ノエル(サンタ)はいなかったそうだ。
なぜなら、スペインでは、1月5日の夜に 「ロスレイエスマゴス」 がプレゼントを持ってきてくれるから。
レイエスマゴスは、聖書に登場する人物(3人)で、キリストの生誕を知らせる天使ガブリエルの光に導かれ、贈り物を持ってラクダにまたがりオリエント(中東)からベツレヘムに駆けつけた3人の(占星)博士。
Melchor メルキオール, Gaspar ガスパール、 Baltasar バルタサルの3人は、いずれもヨーロッパ、アジア、アフリカ大陸の人種を代表している。

スペインの子供たちは、サンタに手紙は書かず、レイエスに手紙を書いてプレゼントを持ってきてもらう。
各市町村では、5日の夜に「カバルガタデレイエス」と呼ばれる、レイエスのパレードが行われる。
煌びやかな衣装に身を包んだレイエス3人が、寒空の中イルミネーション輝く乗り物に乗ってパレードする。

私たちの住む村では、農家や庭師の人たちがボランティアでトラクターを運転し、その上にそれぞれの博士が乗る。事前に手続きをしておくと、博士の助手である妖精の衣装を纏った青年グループが、指定の場所で待つ子供達にプレゼントを直接渡してくれる。握手したり、直接話すといった博士たちとの触れ合いタイムもある。

クリスマス(サンタ)よりも、レイエスの日を大切にしてきた人たちと迎える5日の夜は、自分自身も聖書の中に入ったように感じられる幻想的、感動的な夜になる。

レイエスの日である6日(祝日)のランチには、「ロスコンレイエス」を食べる。
砂糖漬けになった果物が飾られた甘いパンとケーキの中間のようなもので、中に王様の人形と空豆が隠されている。王様が入ったポーションを食べた人は、その日一日王様になれ(人に命令したり好きなことができる)、空豆が当たった人はケーキ代を持つのが決まりだそうだ。

最近のスペインは、映画や本、移民の影響でサンタがくる家庭も増えてきた。
つまり、カガティオ、家族からのクリスマスプレゼント、サンタ、レイエスからプレゼントがもらえるのだ。
金額の大・小は各家庭のさじ加減だが、冬休みの前半にプレゼントを渡しておくと子供が静かだ、という事実もサンタ普及の一因と聞いている。


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