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妄想のカケラ【初夏に始める恋物語】

#87 初夏に始める恋物語

初夏を聴く
新緑の下
芝生に腰を下ろして
僕は耳を澄ませた

木漏れ日が地面に描く幾何学模様が風に揺れている

夏色に染まり始めたばかりのまだ淡い
未熟な空色のイマソラに白線を引きながら
遠のく飛行機を見送った

空に向かってスマホを斜めに構える彼女の
耳元のイヤリングはすっかり夏色で
はしゃぐ度にきらりと揺れて眩しくて...
そして、なんだか、ドキドキする

...

スマホカメラの正方形に飛行機がうまく収まらなくて口惜しそうにまだソラをみあげている彼女に声をかけた。

ねぇ、ここに座って、
一緒に耳を澄ましてごらん
今年一番の初夏が聴こえるよ。

肩が触れそうで触れない隣に彼女は座った

...

しばらく静かに彼女と空を見ながら
耳を傾けていると
飛行機が再びイマソラに白線を引き始めた
でも、彼女は座ったまま
目を閉じて静かに耳を澄ませている

僕は彼女との距離をそっと狭めて顔を近づけると
気を利かせた初夏が甘いラブソングを奏で始めた__

<おしまい>

今回は2つのお題に参加しています。

①シロクマ文芸部
お題「初夏を聴く」から始まる小説・詩歌
小牧さん今回も素敵な企画ありがとうございます。

前回参加した作品はこちら↓

書く習慣アプリ
お題「恋物語」

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