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メンタル病んだので最長片道きっぷの旅に出ました 〜準備編1(経路検討編)〜

実行を決めた最長片道きっぷの旅だが、具体的にどのような準備が必要となるのか。順番に検討していこう。

前回記事はこちら↓

※本稿執筆時点では2024年4月1日の根室本線 富良野〜新得間の廃止に伴いルートが変化しているが、本稿ではそれ以前、筆者の旅行時点でのルートをベースとして述べていく。
 また本稿は、あくまでも筆者が聞きかじった情報をまとめているだけにすぎないので、実際に挑戦される際は複数の情報源を元に十分検討した上で行っていただきたい。
 本稿の内容によって生じたいかなる損害についても、筆者はその責を負わないものとする。

経路は?

 予算や日数など気掛かりなことは多いが、まず私が検討したのはその経路(ルート)である。これが判らななければ旅全体の計画立案どころか、きっぷの購入手続きにも進めない。

 そもそも一口に「一枚の乗車券として発券できる最長経路」と言っても、定義によって様々である。JR線に限るか他社線を含めるか、営業キロか運賃計算キロか、はたまた実際に乗車できる距離が最長となる経路かなどいろいろある。

理屈的な部分については、以下の鵺氏のウェブサイト「総合雑学 鵺帝国」にてバリエーションごとに詳解されていたので、参考にさせていただいた。

 新ルート達成第一号の伊藤桃氏をはじめ、その他ネット検索で見つかった限りの実際に発券された方の例を拝見すると、他社線(今回の場合、IGRいわて銀河鉄道の盛岡駅~好摩こうま駅間)を含めた鉄道のみ(気仙沼けせんぬま線・大船渡おおふなと線BRTを含まない)の経路が多かった。私もこれらの例を参考にさせてもらうことにした。
(正直な話、前例があるならそれに倣うのが最も確実かつ面倒がないから……という理由もあるのだが……)

 だが、何故にIGRいわて銀河鉄道以外の他社線や、気仙沼線・大船渡線BRTを含まないのだろうか。単純に考えれば、これらを含めればもっと長くなりそうである。気になったので調査してみた。

 ここで出てくるのが「(通過)連絡運輸」というものである。

 「連絡運輸」とは、日本民営鉄道協会の鉄道用語辞典によると「あらかじめ関係事業者同士で締結した契約に基づき、異なる鉄道会社の路線を直通して人や貨物を運送すること」とある。
 例えば他社線と直通運転をしている路線を利用する際に、両社のきっぷが一枚になった乗換きっぷを購入したことがある方もいるだろう。この乗換きっぷの発売も、関係各社間による連絡運輸の取り決めや契約があって可能になるものだ(単にこの乗換きっぷそのものを連絡運輸と呼ぶ人もいるが)。
 つまり、複数社の路線に跨る乗車券を購入するには、その会社同士・区間において、この連絡運輸の取り決めがあることが必要条件となる。条件を満たせば最長片道きっぷにも適用できる。
 そして特に今回のようにJR線→IGR線→JR線と、他社線を挟む連絡運輸を「通過連絡運輸」と呼ぶ。最長片道きっぷに組み込む際はこちらを適用できるかどうかを重視することになる。

 この(通過)連絡運輸は、適用できる会社や区間が細かく定められている。特にJR旅客6社との通過連絡運輸が認められている会社となると数が限られる。詳しい理由は省くがこの場合、通過連絡運輸を適用できるJR以外の会社はせいぜい1社までとなる。
 よってこの条件を満たし、かつ組み込んだ際に距離が最長となるIGRいわて銀河鉄道の盛岡~好摩間を採用している、ということのようだ。

 では、気仙沼線や大船渡線のBRT区間はどうなのだろうか。
 同区間は2011年の東日本大震災で被災し、線路敷を専用道化したバス路線(バス高速輸送システム:BRT)へと転換された区間である。先述の例ではいずれもこの区間が含まれていなかった。
 調べてみるとこれらのBRT区間も連絡運輸の扱いになるらしく、IGR線との共存ができないらしい……ということだった。
 このBRT区間は現在でも「青春18きっぷ」などで乗車可能なこともあり、鉄道時代と乗車券上のルールは大きく変わらないように錯覚していたが、そんな単純な話ではないということだ。
 よってこちらも、IGR線利用の場合とを比較して、より距離が長くなるIGR線を採った、というのが結論である。

 ところで先程「できないらしい」と曖昧な表現をしたが、実は両者を含む経路で発券できたという報告もあったり、はたまたそれは誤発券だという話もあったりと、判然としない部分もあったのでこのような表現をした。
(本当は根拠となる規則や規定を引用して説明したかったのだが、非公開だったり単純に説明するのがややこしかったりするので割愛する。)

 釈然としない部分はあるが、ひとまずここは先人に倣ってIGRいわて銀河鉄道を利用し、気仙沼線・大船渡線BRTは利用しない経路を採用しよう。


 しかし、もう一点検討すべきことがある。私の旅行時点ではルートがまた変化していたからである。
 その変化というのが、2023年8月28日のJR九州 日田彦山ひたひこさん添田そえだ駅〜夜明よあけ駅間の廃止だ。この区間は2017年の九州北部豪雨で被災し、昨年の同日に鉄道としては廃止され、先述の気仙沼線・大船渡線と同様にBRTで復旧された区間である。この日以前であれば同区間経由で乗車券を発券し代行バスに乗ればよかったが、こちらも乗車券の扱いが異なってくるならば検討する必要がある。

 調べたところ、この区間の連絡運輸は「JR九州の鉄道各線」とに限られ、しかも通過連絡運輸が認められていないとのことだった。
(こちらについては根拠となる運輸規則が見つかったのでリンクを張っておく:JR九州 公告第6号 バス高速輸送システム旅客連絡運輸規則の制定について

 つまりこの区間はどう足掻いても最長片道きっぷの経路に含めることができない、ということが判った。よってここを含まないルートを調査する必要があった。
(実はこの添田〜夜明間のBRT化後のルートについても、実際に発券した報告がネット上にないかと思って調べたが、少なくとも当時は全くヒットしなかった。私の検索方法が悪かっただけかもしれないが……)

 だがこれも調査すると、このルート変更によって通過することになる九州北部の扱いがかなりややこしかった。
Wikipediaの最長片道きっぷのページ内「新下関駅 - 博多駅間の特例」などでも述べられているが、新下関駅~博多駅間において、平行する山陽新幹線と鹿児島本線を別路線とみなすか同一路線とみなすかでルートが変わってくるのである。ここでは詳しい解説は省くが、基本的に新幹線と平行在来線は同一路線として扱うルールがあるものの、この区間ではJRの旅客営業規則の定めが複雑で解釈の余地があるということのようだ。

 以下が新幹線と在来線(鹿児島本線)を別路線とした場合の経路である。まず山陽新幹線で博多へ行き、太字にした吉塚よしづか駅~折尾おりお駅間でその平行在来線である鹿児島本線を「逆走」するような形だ。

(本州方面)-門司-[鹿児島線]-小倉-[山陽新幹線]-博多-[鹿児島線]-原田-[筑豊線]-桂川-[篠栗線]-吉塚-[鹿児島線]-折尾-[筑豊線]-新飯塚-[後藤寺線]-田川後藤寺-[日田彦山線]-城野-[日豊線]-都城-[吉都線]-吉松-[肥薩線]-隼人-[日豊本線]-鹿児島-[鹿児島線]-川内-[九州新幹線]-新八代-[鹿児島線]-鳥栖-[長崎線]-諫早-[大村線]-早岐-[佐世保線]-武雄温泉-[西九州新幹線]-新大村

そしてこちらが、同一路線とした場合の経路である。九州内で山陽新幹線は利用しない。

(本州方面)-門司-[鹿児島線]-吉塚-[篠栗線]-桂川-[筑豊線]-新飯塚-[後藤寺線]-田川後藤寺-[日田彦山線]-城野-[日豊線]-都城-[吉都線]-吉松-[肥薩線]-隼人-[日豊本線]-鹿児島-[鹿児島線]-川内-[九州新幹線]-新八代-[鹿児島線]-博多-[九州新幹線]-新鳥栖-[長崎線]-諫早-[大村線]-早岐-[佐世保線]-武雄温泉-[西九州新幹線]-新大村

 ちなみに前者の方が距離は長くなるので、最長性にこだわるならできればこちらで乗車券を作ってもらいたい。だがこのきっぷの発券には数週間を要する。期間も限られている中、前者の経路で窓口で発券を申し込んだ後で「やっぱり駄目でした」となって、後者で再申し込みに行くという二度手間は避けたい。
 よって前者をA案、後者をB案とし、A案で発券できなければB案で……という形で申し込むことにした。
 最終的にどちらで発券できたかの結果と全体的な経路については、準備編の最終回にて述べる。

準備編2に続く。


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